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低ポリ囚人の神グラ無双 ~特殊バグを喰らって解像度が限界突破した俺は、情報の暴力で階級社会を粉砕する~  作者: 星島新吾


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情報食い.8

姫守がブーシェ救出に命を賭けていたころ。


アーケード街の中央通りは戦火の中心にあった。

中ポリの執行者たち十五名が集まり、五十体ほどの中型バグと対峙する。一人で三人持っていくことをノルマとする過酷な任務に、中ポリの執行者たちは血を流す。


「高ポリは今回の任務に来るのか?」


「予定では二人と聞いている!」


「相変わらず貴族様は私兵を使うのが御嫌いのようだな」


中ポリ《一般執行者》たちは各々リストを確認し、自分が対応するバグにチェックマークを入れて保存する。弓を使う一般執行者の乙女、秋子(あきこ)もその一人だった。


「アタシの討伐対象、《ペイルライダー》って書いてんねんけど。どこにおるか知らん?特徴は、馬に乗ってて、鎌使う、ローブらしいんやけど」


「目撃情報を更新しろって。端の方で戦っているヤツだろ」


他の執行者が秋子(あきこ)のマップに情報を流す。バグの発生源から最も遠い場所に、一体だけポツンと残っているペイルライダー。獲物を追うように動くマーカーに、秋子(あきこ)は眉を顰めた。

「コイツ、こんなところで何してんねん。アタシにここまでこいっちゅーんか?」


「相手はバグだぞ。そう言うこともあるってもんだ」


執行者は他の中ポリの攻撃をいなし、秋子(あきこ)に合図を送る。彼女は弓を引いて矢を放つと、ピュイッ、と音を鳴らして矢はバグの脳天に命中した。


「おおっ!中型バグを一撃とは、流石だな。オータムクイーンの名は健在というわけか」


執行者の一人が口笛を吹く。彼らにとって中型バグは大型の前に存在する前座に過ぎない。口笛も鳴るというものだった。


「うるさい、うるさい。適当なオベッカいらんねん。それより、あんたの獲物私にくれん?今月ちょっと厳しいねん」


パンと手を叩いて敵の首をねだる秋子。彼女にとって中型バグは一方的な狩りの相手に過ぎなかった。

「パニッシャーは渡したじゃないか。それで満足してくれ」


金色のドクロを手にした秋子は、膨れっ面で首を横に振る。


「こんなんじゃ足りへんて。遠くにおるペイルライダー渡すからさぁ───ん?」


マップを確認する。

先ほどまで国道付近にいた、バグっていたと思われた中型バグが速いスピードでコチラに向けて走ってきていた。


「ラッキー……!あっちから来てくれるなんて、ついてるわ」


ヒヒィーン、という馬のいななきと共に、その死神はやってきた。

ローブの下には姫守と対峙した時にはなかったドクロの面が浮かびあがっている。

何かが変だ。秋子がそう気づいた瞬間には秋子の隣で執行者の首が飛んでいた。


「───ハッ……?」


首を飛ばされた執行者が宙を舞いながら、秋子と目が合う。信じられないものでも見るように彼女と目が合い、やがてその双眸に再び光が戻ることはなかった。


「コイツ……どんだけ低ポリ殺してきたん?ヤバすぎやろ」


秋子は一斉通知で、ペイルライダーの情報を執行者たちに拡散する。スピード、攻撃力、ともに中型ポリゴンの領域を逸脱した化物がそこにはいた。


「あの中型バグは何だ⁉お前の討伐対象じゃないのか!」


「私も知らん。なんか沢山食べてヴァージョンアップしとるみたいやわ。見てみ、あの額」


《ペイルライダー》のローブの中に浮かぶドクロの額には、【Ver.Ⅱ】の文字。


「ウチらが到着前に残った低ポリ食い荒しとったんやろ。ホンマ嫌になるで───これやから自分らの仕事終わらせたら、ちゃっちゃとバス乗って監獄に帰って欲しいんや」


秋子は弓を連射し、まずペイルライダーの機動力となる馬の脚を射抜いた。


「よっしゃ、今の内に囲んで叩くで」


秋子の号令で続々とペイルライダー討伐に中ポリのメンバーが集まる。彼らの表情にもはや一切の油断はない。中型バグに仲間を一人やられた、というだけで始末書モノの失敗だ。

それに前回の討伐任務では、執行者は特殊バグによって多くの犠牲者を出したばかり。汚名を濯ぐ機会にまんまと顔に泥を塗られた形となった。


「遠距離組!かかれ!」


秋子の号令で、遠距離組による弓の雨がペイルライダーを襲う。全身をハリネズミにされ、満身創痍となったペイルライダーに重厚な盾の陣形が迫る。


ペイルライダーは自慢の鎌でその防衛陣を薙ぎ払うつもりで鎌を振ったが、初めの盾を前にしてその刃は止まってしまう。


「鎌の刃は止めた!掛かれッ!」


盾の後ろから飛び出した長剣や、片手剣を持った戦士たちが一斉にペイルライダーを刻んだ。蒼白い馬は全身から煙を上げて消滅し、ペイルライダーも鎌やローブがノイズを走らせたかと思えば、ポリゴンの破片となって粉々に砕け散る。


中型バグにしては珍しい、低ポリのような死にざまに秋子は納得顔で頷いた。


「あの機動力は極限までポリゴンを削ぎ落していたからか……ふーん。紙装甲やけど、機動力と殺傷力で誤魔化すタイプか。早めに倒しといてよかったな」


周囲を見渡す。他に【Ver.Ⅱ】の報告は確認されていない。

このままいけば、後は高ポリ組に引き継ぎを任せれば自分達の任務は終了。


「ハラハラしたっすね」


他の執行者が話しかけてくるのに対して、秋子は笑顔で頷き返す。


「早く残りの中型バグ倒してバスに乗ろ?予報じゃ大型が来るんやなかったっけ?」


「眉唾の占い師が言うには、そうみたいっすね」


「大型は流石に私たちの手には余るでしょ。お邪魔になる前に、掃討急ぐぞー!」


秋子の号令に執行者たちは勝鬨を上げる。


「「おおッー‼」」


高ポリ組が来るまでにまだかなり時間がある。

掃討にそれほど時間をかける気にもなれない。バグとはいえ、悪戯に苦しめるようなことをするのは彼女の趣味ではなかった。


「さあ、行くで!」


秋子が弓を引き、狙いを定めた正にその時だ。

突如として暗雲が立ち込め、彼女たちの前にそれは現れた。


「えっ、うそッ!? なんでや。早すぎるやろ‼法則はどないなっとんねん!」


秋子は薄い唇を噛んだ。


曇天からやってきた大型の名は《プシュコポンポス》。

三対の翼を持ち、全身が業火に燃えているミノムシが上空から顕現した。

大型のあまりにも早すぎる登場に彼らは絶望した。


まだ高ポリ組のバスの音すら聞こえてこない。

彼らなしに大型と戦うということは、決死の作戦になることを意味する。

中型バグ相手に機能する盾も大型の前では紙屑同然だ。


装備があると奢れば死ぬ境界線。それが中型と大型の決定的な力量差だった。


「全員中型を大型から引き離して!大型に目をつけられないように中型を狩るよ!」


「「おおっ!!」」


中ポリ組の戦いが始まった。





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