リナ、友情の再確認
**20xx年6月10日(月曜日) 高校1年生**
**朝**
今週も雨だった。
傘を差しながら駅へ向かう。
先週から、咲希ちゃんとの関係がぎくしゃくしている。
文化祭の演目決定以来、なんとなく距離を感じる。
「今日こそ、ちゃんと話そう」
そう決めていた。
電車の中で咲希ちゃんを探したけど、見当たらない。
いつもの車両にいない。
「避けられてるのかな」
不安が胸を締め付けた。
学校に着いた。
教室で咲希ちゃんの席を見る。
まだ来ていない。
私は自分の席に座った。
**午前**
1時間目の授業が始まる直前に、咲希ちゃんが教室に入ってきた。
私と目が合った瞬間、咲希ちゃんは視線を逸らした。
「やっぱり」
胸が痛くなった。
授業中、何度か咲希ちゃんの方を見た。
でも、一度も目が合わなかった。
休み時間、声をかけようとした。
「咲希ちゃん...」
「ごめん、図書室に行くから」
そう言って、咲希ちゃんは足早に教室を出ていった。
「あ...」
追いかけようと思ったけど、できなかった。
**昼**
お昼休み。
いつもなら咲希ちゃんと食べるお弁当を、一人で食べた。
味がしない。
「田中さん、一人?」
クラスメイトの山田さんが声をかけてくれた。
「うん...」
「良かったら、一緒に食べる?」
「ありがとう」
山田さんと何人かで、お弁当を食べた。
みんな、楽しそうに話している。
でも私は、心ここにあらずだった。
「田中さん、大丈夫?」
「ごめん。ちょっと考え事してて」
「演劇部の脚本のこと? すごいじゃない」
「ありがとう」
でも、嬉しくない。
咲希ちゃんがいないと、意味がない。
**午後**
放課後、演劇部。
咲希ちゃんも来ていた。
でも、私とは話さない。
「今日から、本格的に稽古を始めます」
山口先輩が言った。
「田中さんも、演出に参加してもらいます」
「はい」
立ち上がった。
配役の発表があった。
主役は佐藤先輩。
みんな、拍手している。
咲希ちゃんも拍手していた。
でも、なんだか機械的に見えた。
稽古が始まった。
私は演出として、意見を求められる。
「この場面、どう思う?」
佐藤先輩が聞いた。
「もう少し、感情を込めて...」
私の言葉を、みんなが聞いてくれる。
でも、咲希ちゃんだけは、そっぽを向いていた。
**夕方**
部活が終わった。
咲希ちゃんが、また先に帰ろうとする。
「咲希ちゃん、待って」
勇気を出して、声をかけた。
咲希ちゃんが振り返った。
「話がある」
「...何?」
冷たい声だった。
「二人で話したい」
「別に、話すことなんてないよ」
「ある。お願い」
しばらく睨み合った。
「...分かった」
咲希ちゃんが渋々頷いた。
二人で、屋上に向かった。
雨は止んでいた。
**夜**
屋上で、向き合って立った。
「咲希ちゃん、怒ってる?」
「怒ってなんかない」
でも、明らかに怒っていた。
「嘘だよ。先週から、私を避けてる」
「避けてない」
「避けてる。話もしてくれない」
咲希ちゃんが黙った。
「私の脚本が選ばれたから?」
「違う」
「じゃあ、何?」
「...」
咲希ちゃんが俯いた。
「ごめん。私の脚本が選ばれて、嬉しくないのは当然だと思う」
「リナは...」
「何?」
「リナは、私が悲しんでるって思ってるでしょ?」
「え?」
予想外の言葉だった。
「私が、嫉妬してるって思ってるでしょ?」
「...」
図星だった。
「それが、嫌だった」
咲希ちゃんの目に、涙が浮かんだ。
「私は、リナの友達として、嬉しかった。本当に」
「咲希ちゃん...」
「でも、リナが気を遣ってるのが分かって、それが辛かった」
「ごめん」
「私のことを、そんな小さな人間だと思ってたなんて」
涙が頬を伝った。
私も、涙が出てきた。
「違う。そんなつもりじゃない」
「じゃあ、何で気を遣うの?」
「分からない。でも、咲希ちゃんに悪いなって...」
「それが嫌なの!」
咲希ちゃんが叫んだ。
「私の気持ちを勝手に決めないで」
「ごめん...ごめん」
私も泣いていた。
二人で、泣いていた。
しばらく、そうしていた。
「リナ」
「何?」
「おめでとう。脚本が選ばれて」
咲希ちゃんが笑った。
涙を流しながら。
「ありがとう」
「今度は、心から言える」
「咲希ちゃん...」
「私たち、友達でしょ?」
「うん」
「だったら、もっと信じて」
「うん」
抱き合った。
温かかった。
「一緒に、いい舞台を作ろう」
「うん。絶対に」
友達って、こういうものなんだ。
そう思った。
家に帰った。
お母さんが「どうだった?」と聞いた。
「仲直りした」
「良かったわね」
「うん。咲希ちゃんは、いい子だった」
「最初から分かってたでしょ?」
「うん。でも、改めて思った」
今日は、大切なことを学んだ日だった。
## 後書き
**日記**
**20xx年6月10日(月曜日) 高校1年生 田中里奈**
今日、咲希ちゃんと話した。
喧嘩みたいになったけど、仲直りできた。
私が勘違いしていた。
咲希ちゃんは、私の脚本が選ばれたことを喜んでくれていた。
でも、私が気を遣っているのが嫌だった。
そういうことだった。
友達の気持ちを、勝手に決めちゃいけない。
そう学んだ。
咲希ちゃんは、私が思っていた以上に強くて、優しい子だった。
「私たち、友達でしょ?」
その言葉が、胸に響いた。
本当の友情って、こういうものなんだと思う。
お互いを信じること。
気を遣いすぎないこと。
素直な気持ちを伝えること。
今日から、また一緒に頑張れる。
文化祭の舞台も、みんなで作り上げよう。
咲希ちゃんがいてくれて、本当に良かった。
友達って、素晴らしい。
今度は、心から「どんな時でも笑顔で」いられそう。
咲希ちゃん、ありがとう。




