リナ、初めての演出
**20xx年6月17日(月曜日) 高校1年生**
**朝**
今週から本格的な稽古が始まる。
脚本家兼演出として参加する初めての経験。
「緊張する」
朝食を食べながら、手が震えていた。
お母さんが「大丈夫?」と心配そうに見た。
「うん。ただ、初めてだから」
「リナなら大丈夫よ」
そう言ってくれたけど、不安だった。
演出って、何をすればいいんだろう。
先輩たちに指示を出すなんて、できるのかな。
「いってきます」
重い足取りで家を出た。
**午前**
学校で咲希ちゃんに会った。
「おはよう、リナ。今日から演出だね」
「うん。何していいか分からない」
「大丈夫。リナの脚本なんだから、一番分かってるじゃない」
咲希ちゃんの励ましが嬉しかった。
授業中も、演出のことで頭がいっぱい。
「どう伝えればいいんだろう」
自分が書いたキャラクターの気持ち。
それを俳優さんに伝える方法。
考えれば考えるほど、分からなくなった。
**昼**
お昼休み、咲希ちゃんと屋上で弁当を食べた。
「リナ、また心配してる顔してる」
「そんなに分かりやすい?」
「うん。眉間にシワ寄ってる」
咲希ちゃんが笑った。
「でも、リナの脚本を一番理解してるのは、リナでしょ?」
「書いた時の気持ち、覚えてる?」
「うん」
「それを伝えればいいんだよ」
シンプルな言葉だった。
でも、心に響いた。
「そうだね。ありがとう」
少し、気持ちが軽くなった。
**午後**
放課後、演劇部。
今日から私も演出に参加する。
山口先輩が「田中さん、お疲れ様」と声をかけてくれた。
「よろしくお願いします」
緊張で声が震えた。
「最初に、台本読みをしましょう」
佐藤先輩が提案した。
みんなが座って、台本を開く。
私も座った。
「田中さん、何かあったら遠慮なく言ってね」
佐藤先輩が優しく言ってくれた。
「はい」
読み合わせが始まった。
私の書いた台詞が、声になっていく。
でも、何かが違う。
主人公の台詞に、迷いが足りない。
「あの...」
手を挙げた。
「はい」
「主人公、もう少し迷ってる感じで...」
「どういう風に?」
佐藤先輩が聞いた。
「えっと...」
言葉が出てこない。
どう説明すればいいんだろう。
「私が書いた時、主人公はすごく悩んでたんです」
「うん」
「だから、もっと...弱い感じで」
「弱い?」
「不安で、どうしていいか分からない感じ」
佐藤先輩が頷いた。
「なるほど。やってみる」
もう一度、同じ場面をやってもらった。
今度は、違った。
迷いが伝わってくる。
「そう。そんな感じです」
「分かった。ありがとう」
嬉しかった。
私の想いが伝わった。
**夕方**
稽古が終わって、山口先輩が話しかけてきた。
「田中さん、今日はどうだった?」
「緊張しました」
「でも、いい指摘だったよ」
「本当ですか?」
「うん。脚本家だからこそ分かることがある」
先輩の言葉が、自信になった。
「もっと、遠慮しなくていいからね」
「はい」
咲希ちゃんと一緒に帰った。
「リナ、すごかったよ」
「え?」
「佐藤先輩への指摘。的確だった」
「そうかな」
「うん。リナにしか分からないことだった」
嬉しかった。
でも、まだ不安もある。
「これから、もっと大変になるよね」
「大丈夫。リナなら」
咲希ちゃんが笑顔で言った。
その笑顔に、勇気をもらった。
**夜**
家に帰って、夕食の時に今日のことを話した。
「演出、どうだった?」
お父さんが聞いた。
「緊張したけど、少し分かった気がする」
「どんな感じ?」
「自分の想いを、相手に伝えること」
「いいことに気づいたね」
お父さんが頷いた。
部屋に戻って、台本を読み返した。
明日の稽古のために。
どの場面で、どんな指摘をすればいいか。
キャラクターの気持ちを思い出しながら、メモを取った。
「頑張ろう」
自分に言い聞かせた。
今日は、新しい一歩を踏み出した日だった。
演出家としての。
そして、自分の想いを伝える人としての。
## 後書き
**日記**
**20xx年6月17日(月曜日) 高校1年生 田中里奈**
今日から、演出として稽古に参加した。
最初は、すごく緊張した。
先輩たちに指摘するなんて、できるのかと思った。
でも、咲希ちゃんが「リナの脚本なんだから、一番分かってる」と言ってくれた。
その通りだった。
佐藤先輩の演技を見て、「何かが違う」と感じた。
主人公の迷いが足りない。
勇気を出して、指摘した。
先輩は、素直に聞いてくれた。
そして、演技が変わった。
私の想いが伝わった瞬間だった。
演出って、自分の想いを相手に伝えることなんだと気づいた。
脚本を書いた時の気持ちを、俳優さんに伝える。
それが、私の役目。
まだ不安はある。
でも、今日の経験で少し自信がついた。
山口先輩が「もっと遠慮しなくていい」と言ってくれた。
明日からは、もっと積極的に参加しよう。
咲希ちゃんの支えもある。
一人じゃない。
みんなで、いい舞台を作ろう。
私の脚本を、最高の形で届けたい。
どんな時でも笑顔で。
今日は、新しい挑戦の始まりだった。




