リナ、試練の稽古
**20xx年6月24日(月曜日) 高校1年生**
**朝**
梅雨が続いている。
今日は、演劇部で初めて通し稽古をする日。
私の脚本「二つの道」を最初から最後まで。
「うまくいくかな」
不安で胸がざわついた。
朝食を食べながら、台本を確認する。
セリフの一つ一つ、シーンの流れ。
頭に入れておかないと。
「リナ、今日は大事な日ね」
お母さんが声をかけてくれた。
「うん。通し稽古」
「きっと大丈夫よ」
そう言ってもらえたけど、心配だった。
**午前**
学校で咲希ちゃんに会った。
「リナ、顔が青いよ」
「そんなに?」
「うん。でも、今日で分かるよね」
「何が?」
「リナの脚本の完成度」
その言葉に、ドキッとした。
授業中も落ち着かない。
通し稽古で問題が見つかったらどうしよう。
話の流れがおかしかったら。
キャラクターが魅力的じゃなかったら。
不安ばかりが頭を巡った。
**昼**
お昼休み、一人で屋上に行った。
咲希ちゃんと食べる気分になれなかった。
弁当を開いたけど、食欲がない。
「大丈夫かな」
空を見上げながらつぶやいた。
曇り空が、私の心と同じだった。
携帯を見ると、美香ちゃんからメッセージ。
「今日、通し稽古だよね?頑張って!」
中学時代の親友が、覚えていてくれた。
少しだけ、気持ちが軽くなった。
「ありがとう」と返信した。
**午後**
放課後、演劇部。
いつもより部室が緊張に包まれていた。
「今日は通し稽古です」
山口先輩が言った。
「最初から最後まで、止めずにやります」
みんなが頷く。
私も頷いたけど、手が震えていた。
「田中さん、何か最初に言うことある?」
「え...えっと...」
突然振られて、焦った。
「お疲れ様です。よろしくお願いします」
それしか言えなかった。
「じゃあ、始めましょう」
幕が上がった。
第一場。主人公の独白から始まる。
佐藤先輩の声が部室に響く。
「私は今、人生の分岐点に立っている」
私が書いた最初のセリフ。
でも、何かが違う。
感情が入っていない。
第二場。友人との会話。
田中先輩と山田先輩の掛け合い。
これも、なんだか平坦に聞こえる。
「あれ?」
私の脚本、こんなにつまらなかったっけ?
第三場、第四場と進んでいく。
でも、どんどん不安になった。
観客席で見ていて、退屈だった。
これじゃあ、観客は楽しめない。
**夕方**
通し稽古が終わった。
重苦しい空気が部室を包んだ。
「お疲れ様でした」
山口先輩が言ったけど、元気がない。
「どうでしたか?」
私が恐る恐る聞いた。
「そうですね...」
先輩が言葉を選んでいる。
「全体的に、もう少し盛り上がりが欲しいかな」
やっぱりだった。
「キャラクターの感情の変化が分かりにくい」
佐藤先輩が言った。
「特に、主人公の成長過程」
みんなが頷いている。
私の脚本に問題がある。
それは明らかだった。
「すみません」
頭を下げた。
「いや、田中さんが悪いわけじゃない」
山口先輩が慌てて言った。
「みんなで作り上げるものだから」
でも、脚本に問題があることは事実。
私の責任だった。
**夜**
家に帰って、すぐに部屋に閉じこもった。
「どうだった?」
お母さんが聞いたけど、答えられなかった。
「後で」
そう言って、部屋のドアを閉めた。
机に向かって、台本を広げた。
「どこがいけないんだろう」
何度も読み返した。
確かに、感情の変化が分かりにくい。
主人公の成長も、急すぎる。
「書き直さなきゃ」
でも、文化祭まで時間がない。
焦りが募った。
夕食の時、家族に謝った。
「ごめん。うまくいかなかった」
「そういうこともあるわ」
お母さんが優しく言った。
「でも、リナなら大丈夫」
「本当かな」
「うん。リナは諦めない子だから」
その言葉に、少し勇気をもらった。
でも、不安は消えなかった。
夜遅くまで、台本と向き合った。
どう直せばいいのか。
考えて、考えて、考えた。
答えは出なかった。
## 後書き
**日記**
**20xx年6月24日(月曜日) 高校1年生 田中里奈**
今日、通し稽古をした。
結果は、散々だった。
私の脚本に問題があることが分かった。
感情の変化が分かりにくい。
主人公の成長過程が不自然。
観客として見ていて、つまらなかった。
みんなは励ましてくれた。
でも、脚本家として失格だと思った。
せっかく選んでもらったのに。
期待に応えられなかった。
家に帰って、何度も台本を読み返した。
確かに、問題だらけだった。
なんで、提出前に気づかなかったんだろう。
文化祭まで、あと2ヶ月。
書き直さなければならない。
でも、どう直せばいいのか分からない。
お母さんが「リナは諦めない子」と言ってくれた。
そうだ。諦めちゃいけない。
みんなが頑張って演技してくれてる。
私も頑張らなくちゃ。
明日、もう一度脚本を見直そう。
問題点を整理して、一つずつ解決していこう。
きっと、いい脚本にできる。
どんな時でも笑顔で。
今日は笑えないけど、明日は笑いたい。
頑張ろう。




