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リナの冒険ノート2  作者: リナ


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84/93

リナ、未来のカバンを軽くする

**20xx年8月15日(土曜日) 高校1年生**

**朝**


目が覚めて、足をそっと布団の外に出す。


(うん、これは“ふつう寄りの元気デー”って感じ)


・足 → ちゃんと動くし、地面重力も標準装備。

・お腹 → 生理終わりゾーンからしばらく、安定継続中。

・頭 → ぼんやり少なめ。ノートも日記もいけそう。


ベッド横の赤い手帳を開く。

今週のページ、今日の欄にはこう書いてあった。


『8/15

 天気:晴れときどきくもり/気温:暑い/体調:元気デー寄り


 8〜10:家ブロック(読書感想文ラフ+数学ワーク)

 14〜16:家ブロック(進路メモ+机まわり整理)

 20〜22:二人の季節+英語一行+ストレッチ』


(今日は“家で未来のこと考える日”って感じだな)


洗面所で顔を洗って、化粧水→乳液→日焼け止め。

鏡の前で、三秒自分チェック。


一、二、三。


(肌のざらざら、前よりマシ。

 “鮭と蒸し料理とちゃんと寝る生活+お風呂で温まるセット”、

 地味に効いてきてるの、認めていいやつ)


前髪を整えてから、ペンで手の甲に今日のキーワードを書く。


『未来のカバン』


(将来のこと考えるとき、

 なんでもかんでも自分のカバンに詰め込みがちだから、

 今日は“何を入れるか選ぶ”ほうを意識したい)


キッチンに行くと、テーブルの上には


・雑穀ごはん

・鯖とナスとピーマンと玉ねぎの蒸し料理

・ほうれん草としめじの胡麻和え

・豆腐とわかめの味噌汁


が並んでいた。


「今日は“考える人応援セット”です」と母。


「絶対その場で考えてるでしょ、その名前」


そう言いながら鯖を一口食べると、

ナスのとろっと感と一緒に、

(これも“未来の肌貯金”に入るんだよね、多分)

って、勝手にポイント計算を始めてしまう。


テレビからは高校野球の中継が流れていた。


「みんな、将来プロ目指してる子もいるんだろうなあ」


父がぽつりと言う。


「将来なにやるかって、

 カバンに入れる候補多すぎて、

 逆にしんどいんだよなー」


(それはほんとにそれ)


味噌汁を飲みながら、

里奈は手の甲の『未来のカバン』をちらっと見た。


---


**午前(読書感想文と、“丸写し”のお願い)**


8〜10時の家ブロック。


机の右上に赤い手帳を開いて、

国語の宿題プリントと、

『海沿いの小さな研究室』、

ノートを並べる。


(とりあえず、

 “完璧な感想文”じゃなくて“ラフでいいから一回書く”を目標にしよ)


ペンを握って、ノートの一枚目にタイトルを書く。


『海沿いの小さな研究室 読書感想文ラフ』


昨日までに付箋を貼ったページをめくりながら、

印象に残ったセリフをノートに写していく。


> 「全部聞くけど、全部は抱えないから。

>  ここに置いていきたい重い荷物があったら、

>  必要な分だけ持ち帰って、あとは置いていきなよ。」


(このセリフ、

 “人の相談を聞くときの理想形”って感じするんだよな)


ノートの端に小さくメモを書く。


『・高校生の自分は、

  まだ全部聞いたら全部背負いそうになる。

 ・でも、この前「抱えこみすぎない」って決めて、

  時間枠を先に伝えて聞いたらラクだった。

 → 将来像との間に“今の自分用の橋”をかける感じ。』


そこまで書いたところで、

机の上のスマホが震えた。


画面を見ると、

同じクラスの子からメッセージ。


『ねえ、読書感想文もう書いた?

 もし書いてたら、写真で送ってほしい…

 ちょっと写して参考にしたい』


(出た、“ちょっと写して参考にしたい”)


一瞬、

ノートをぱしゃっと撮って送ろうかと思う。


(でも、それやると私のカバンにも、

 「丸写しの責任」みたいな変な荷物入るんだよな)


こないだから決めているルールを思い出す。


・お金や物の貸し借りでは助けない。

・自分が出せるのは“知識・経験・工夫”。


(ノートそのものは“物”側だから、

 そこは線引きしておきたい)


手の甲を見る。


『未来のカバン』


(将来、“ちゃんと自分の言葉で書ける人”でいたいなら、

 今ここで“丸写しに加担しない”を選ぶのも、

 そのカバンに入れる一個かもしれない)


少しだけ深呼吸して、メッセージを打つ。


『まだラフしか書いてないんだけど、

 構成とか、どこをメインに書くかなら送れるかも。

 感想文そのもの丸ごとは送らないでおくことにしてて…ごめん。

 代わりに「どうやって書いたか」なら共有する!』


数十秒後、スタンプと一緒に返事が来た。


『そっか、たしかに丸写しはやばいよねw

 構成だけでももらえたらめちゃ助かる…!』


(あ、普通に伝わった)


ノートの写真じゃなくて、

自分のラフの中から


『①印象的だったセリフを書く

 ②そのセリフと自分の経験をつなげる

 ③将来の自分にどう活かしたいかを書く』


っていう三つのポイントだけを撮って、

画像で送る。


(“5分以内でできる範囲”+“知識で助ける”。

 境界線ルール、今日もちゃんと使えた)


10時になったとき、

赤い手帳の今日の欄に小さくメモを書く。


『8〜10:読書感想文ラフ+数学 ◎(丸写しお願いを知識でシフト)』


---


**昼(机まわりと、未来メモの場所づくり)**


お昼ごはんは、


・鶏むね肉とキャベツとにんじんの蒸し料理

・きゅうりとわかめとトマトのサラダ

・白いごはん

・なめこと豆腐の味噌汁


だった。


「なんか、夏休み中のごはんって、

 “未来の体づくり期間”って感じしない?」と里奈が言うと、


「“夏の内装工事”だね」と母が言った。


(内装工事って言うと急に大掛かりな感じになるんだけど)


ごはんのあと、

14〜16時の家ブロックに入る。


まずは机まわりの整理から。


プリントの山をざっくり三つに分ける。


『・すぐやる宿題

 ・保管テスト・プリント

 ・もう見ない』


(“もう見ない”箱に入れるとき、

 ちょっとだけ罪悪感あるけど、

 未来のカバン軽くすると思えばいいや)


机が少しだけ広くなったところで、

赤い手帳と日記ノートを持ってベッドに座る。


(今月の“進路・人生メンテナンス”、

 今日はやっとこ)


ここ1か月分くらいの日記をぱらぱらめくる。


・「自分にピント」って書いた日。

・「全部受け取らないと決めた」日。

・SNSで比べすぎてしんどくなった日。

・ブロック勉強が◎三つだった日。


(なんか、“同じことで悩んで、

 同じところでちょっとずつマシになってる”の、

 パターンとして見えてくるな)


日記の横に、

進路メモ用のページを新しく一枚作る。


『今の中期目標(この1〜2か月用)』


と書いてから、二つだけ bullet を書く。


『① ブロック勉強を夏休み明けまで続ける。

  → 1日◎が1個以上あればOKにする。


 ② “自分のカバンに入れるもの”を選ぶ練習をする。

  → 相談・宿題・通知について、

    「どこまでなら自分が持つか」を先に決める。』


(目標、欲張ると自分で自分を追い込むから、

 とりあえず二つに絞るルール、

 今月も継続でいこ)


そこから、

将来メモページもめくってみる。


『・人を助けるとき、“その人の成長の領域”は残せる人

 ・比べるなら、画面の中の誰かじゃなくて“昨日の自分”と比べる人

 ・話を聞くとき、“全部聞いても全部は抱えない”って決めていられる人』


(ここに、今日は“働き方”系のやつも足してみたいな)


少しだけ目を閉じて、

未来の自分を想像してみる。


(例えば、

 相談を聞く仕事とか、

 勉強のやり方とか、

 “カバンに入れる荷物を一緒に選ぶ人”みたいな仕事、

 できたら楽しそう)


泣きそうな顔の誰かがいて、

隣でノートを開きながら、


「これとこれは、一緒に持ってこう。

 これはここに置いてっても大丈夫」


って言ってあげてる自分。


(でも、今の私はまだ、

 自分のカバンの中身ですら

 ごちゃごちゃにしがちなんだよな)


ギャップの大きさに、

ちょっとだけお腹のあたりがきゅっとする。


(だからこそ、

 “未来の仕事を決める”んじゃなくて、

 “未来のカバンの中身をちょっとずつ整える”って考え方のほうが、

 今の私には合ってるのかもしれない)


将来メモの下に、一行足す。


『・自分のカバンの中身を人にも説明できる人

  (時間・体力・できること・できないこと)』


(“私はここまでなら一緒にいられる”って、

 言葉で言える大人になりたい)


---


**午後(スマホと写真と、歩幅の確認)**


進路メモを書き終わったあと、

スマホを手に取る。


(ついでに、スマホの中の“未来のカバン”も整理したい)


写真フォルダを開くと、

友達との自撮りや、

ごはんの写真や、

空とか犬とか、

いろんな画像が混ざっている。


(なんか最近、

 “盛れたかどうか”基準で残すか決めてた気がする)


アルバムを新しく作る。


『“今の自分で好き”フォルダ』


最近撮った中から、

フィルター盛り盛りじゃないけど、

「この顔、まあまあ好きかも」ってやつを選んでいく。


前に、

さくらが言っていた「普通の顔でも、自分たちらしい写真ならいい」という言葉を思い出す。


(将来、

 誰かの写真を撮る立場になったとしても、

 “その人が自分で好きだと思える顔”を残せる人のほうがいいよな)


そこまで考えたところで、

通知バーに新しいメッセージが表示された。


『さっきの感想文の構成、神だった。

 自分の言葉でなんとか書けそう…!』


さっき構成を送った友達からだった。


(“答えそのもの”じゃなくて“考え方”を渡すやり方、

 ちゃんと役に立ってるっぽい)


(こういうのも、

 未来のカバンの中に入れておきたいスキルだな)


---


**夜(『二人の季節』と、今日の実験メモ)**


夕食は、


・鯛としめじと小松菜の蒸し料理

・かぼちゃと玉ねぎのサラダ

・雑穀ごはん

・ほうれん草と卵の味噌汁


だった。


「鯛ってちょっと特別感あるよね」と里奈が言うと、


「“未来の自分へのごちそう”です」と母。


(未来への投資とごちそう、

 両方まとめてる感あるな)


お風呂でしっかり温まってから、

20〜22時ブロックに入る。


机の上に、

赤い手帳と『二人の季節』ノート、

英語一行ノートを並べる。


まずは英語ノートに、

今日のフレーズを書く。


『I can choose what to put in my future backpack.

 (未来のカバンに何を入れるか、自分で選べる)』


声に出して読んでみる。


(文法はちょっと怪しいけど、

 “私に言いたいこと”としては正解)


『二人の季節』ノートを開く。


今日書きたいのは、

主人公の女の子が、

友達に宿題を丸写しさせてと言われる場面。


> 「ごめん、ノートそのものは渡さないでおく。

>  でもさ、どうやって考えたかなら、全部話せる。」


> 「だってさ、

>  あんたのカバンには、

>  “自分で書けた感想文”入ってたほうがよくない?」


そんな台詞を書きながら、

里奈は自分の手の甲を見る。


『未来のカバン』


(“助け方を選ぶ”って、

 相手の未来のカバンの中身にも関わるんだよな)


赤い手帳の今日の欄に、

今日の実験メモを書き込む。


『・宿題を頼まれたとき、

 → ノートそのものは渡さない。

 → 5分以内で「どう考えるか」だけ共有する。


 ・進路メモは、

 → 目標二つまで。

 → “どうなりたいか”だけじゃなくて、

   “何をカバンに入れないか”も書く。』


ブロックの達成度も書き込む。


『8〜10:読書感想文ラフ+数学 ◎

 14〜16:進路メモ+机整理 ◎

 20〜22:二人の季節+英語一行+ストレッチ ◎(ストレッチ5分)』


(◎三つの日、

 ちょっと“未来の自分に胸張れる日”って感じする)


ご褒美に、

オーブンで焼いておいたさつまいもを一本取り出す。


皮をむいて一口サイズに切って、

ボウルに入れる。


そこにプレーンヨーグルトをのせて、

上から冷凍ブルーベリーをぱらっと。

最後に、ハチミツを小さじ1だけたらす。


(焼き芋ヨーグルト+ブルーベリー、

 見た目は地味だけど、“内装工事チーム”って感じする)


一口食べると、

さつまいもの甘さと、

ヨーグルトのさっぱりした酸味、

ブルーベリーのきゅっとした感じが混ざって、

(未来のカバン、

 ちょっとだけ軽くしてあげられたかも)

って、お腹のあたりがふっとゆるむ。


画面の中の“完璧な未来像”とはぜんぜん違うけど、

今日のところは、

「自分のカバンの中身を少し整えた日」ってことでいいか、

と思いながら、

里奈はもう一口、スプーンを口に運んだ。


## 後書き


**日記**


**20xx年8月15日(土曜日) 高校1年生 田中里奈**


今日は、「未来のカバンに何を入れるかをちょっとだけ選び直した日」だった。


午前中は、『海沿いの小さな研究室』の読書感想文のラフを書いていて、

「全部聞くけど、全部は抱えないから」ってセリフをどう自分に重ねるか考えた。

そのタイミングで、クラスの子から「感想文写したいから送って」と言われて、

一瞬ノート丸ごと送ろうかなって思ったけど、

手の甲の「未来のカバン」を見て、

ノートそのものじゃなくて「どう考えたか」だけを写真で送ることにした。

前に決めた「物は貸さないで、知識と工夫で助ける」ルールが、

ちゃんと今日も守れたのが、ちょっと嬉しかった。


午後は、赤い手帳と日記を読み返しながら、

今の中期目標を二つだけ書き直した。

ひとつは「ブロック勉強を夏休み明けまで続けること」、

もうひとつは「自分のカバンに入れるものを選ぶ練習をすること」。

将来、誰かの相談を聞く仕事とか、

“荷物を一緒に整理する人”みたいなことができたらいいなって思ったけど、

その前にまず、自分のカバンの中身を説明できるようにならないといけないなと思った。

目標を増やしすぎると自分で自分を追い詰めるから、

二つにしぼるルールは、やっぱり今の私には合っている気がする。


今日の実験は、

・宿題を頼まれたときは、ノートをそのまま渡さずに、

 5分以内で「考え方」だけ共有すること。

・進路や将来のメモを書くときに、

 「何をやりたいか」だけじゃなくて「何は自分のカバンに入れないか」も書くこと。

この二つをやってみたら、

相手の役にはちゃんと立てたのに、

自分のブロック勉強もちゃんと守れた。

「全部受け取らなくてもいい」という前回の気づきが、

宿題とか進路のほうにも少しずつ応用できてきている感じがする。


おやつは、オーブンで焼いたさつまいもに、

プレーンヨーグルトと冷凍ブルーベリー、ハチミツを少しだけかけたもの。

食べながら、

(未来のこと全部一気に決めなくても、

 今日みたいにカバンの中身をちょっと整えるだけでも、

 十分“進んだ”って言っていいのかも)

って思えた。

まだ将来がはっきり見えているわけじゃないけど、

「自分のカバンに何を入れていきたいか」を考える時間は、

これからもときどきちゃんと取りたいなと思う。


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