リナ、自分の歩幅を守る
**20xx年8月18日(火曜日) 高校1年生**
**朝**
目が覚めて、足をそっと布団の外に出す。
(うん、これは“ちゃんと動ける元気デー”ってやつ)
・足 → 軽い。地面重力も標準。
・お腹 → 生理終わりゾーンからさらに何日か、安定続行中。
・頭 → ぼんやり少なめ。外にも出られそう。
ベッド横の赤い手帳を開く。
今週のページ、今日の欄にはこう書いてあった。
『8/18
天気:晴れときどきくもり/気温:暑い/体調:元気デー
8〜10:家ブロック(数学ワーク+英語一行)
13〜15:外ブロック(図書館勉強+読書少し)
20〜22:二人の季節+ストレッチ』
(今日は“外で勉強しつつ、様子を見る日”って感じだな)
洗面所で顔を洗って、化粧水→乳液→日焼け止め。
タオルでぽんぽんと水気を取ってから、鏡の前で三秒自分チェック。
一、二、三。
(ニキビの赤み、前より落ち着いてきてる気がする。
たぶん“蒸し料理とちゃんと寝るやつ”の、じわじわ効果)
前髪を整えてから、ペンで手の甲に今日のキーワードを書く。
『歩幅まもる』
(友達と一緒に何かするとき、
つい相手のペースに合わせすぎて自分がバテるから、
今日は“自分の歩幅”もちゃんと残したい)
キッチンに行くと、テーブルには
・雑穀ごはん
・鮭とブロッコリーとエリンギの蒸し料理
・小松菜とにんじんの胡麻和え
・豆腐と玉ねぎの味噌汁
が並んでいた。
「今日は“外出する人応援セット”です」と母。
「名前のバリエーション、よく尽きないよね」
鮭とエリンギを一口食べると、
きのこのじゅわっとした感じと一緒に、
(これで今日も“未来の肌貯金”ちょっと追加ってことで)
と、勝手にポイントを足してしまう。
テレビからは、
「夏休み明けに向けた勉強計画特集」みたいなニュースが流れていた。
『勉強は“自分のペース”をつかむことが大事です』
キャスターの人が真面目な顔で言う。
(それができたら苦労してないんだよな〜)
味噌汁を飲みながら、
里奈は手の甲の『歩幅まもる』をちらっと見た。
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**午前(ブロック勉強と、5分だけの相談タイム)**
8〜10時の家ブロック。
机の右上に赤い手帳を開いて、
数学ワークと英語一行ノートを並べる。
(とりあえず、英語で頭を起こしてから数学にダイブする作戦)
英語一行ノートには、
こないだから続いている“自分ペースシリーズ”の一文を書く。
『I can walk beside my friends without losing my own pace.
(友達と並んでも、自分の歩幅はなくさなくていい)』
声に出して読む。
(文法にちょっと自信ないけど、
今日の自分に言いたいこととしては100点)
英語を少し音読してから、数学ワークを開く。
二次関数のグラフの問題と格闘していると、
机の上のスマホが震えた。
画面を見ると、
クラスの友達からのメッセージが二つ。
『今日さ、図書館行かない?
一緒に勉強したい〜』
『あとでブロック勉強の決め方教えてほしい…
夏休み後半、ぐちゃってきた』
(うわ、“外出のお誘い+勉強の相談”セットだ)
最初に、
自分の手帳をちらっと見る。
『13〜15:外ブロック(図書館勉強+読書少し)』
(もともと図書館行くつもりだったし、
一緒に行くの自体は全然あり。
問題は“どこまで付き合うか”だな)
こないだから決めているルールを思い出す。
・人を助けるのは、基本「5分以内でできること」。
・それ以上かかりそうなら、範囲を先に伝える。
手の甲を見る。
『歩幅まもる』
(今日は、“相手に全部合わせないで一緒に歩く”って日)
深呼吸してから、メッセージを打つ。
『図書館行くのは賛成〜。
私も13〜15時を図書館ブロックにしてる。
ブロック勉強の決め方は、
行く前に“5分だけ”通話で話そっか?』
すぐにスタンプ付きの返事が来た。
『助かる…!
じゃあ10時ぴったりくらいに電話してもいい?』
『OK〜。
10:00〜10:05の“相談ブロック”に入れとくね』
そう返して、
スマホを机の端にひっくり返して置く。
(“ここからここまでは数学の番”って決めておくと、
途中で気が散りそうになっても、戻ってきやすい)
10時になったところで、
タイマーを5分にセットしてから、ビデオ通話をつなぐ。
画面の向こうの友達は、
髪をひとつに結んで、ちょっと眠そうな顔をしていた。
「ごめんね、いきなり。
ブロック勉強ってさ、
どうやって決めてるのか知りたくて」
「大丈夫。
“5分だけ相談枠”って決めてるから、
その範囲なら全然OK」
そう言って、
里奈は自分の赤い手帳をカメラに向ける。
「私は、
・2時間を1ブロックって決める
・1日に◎を1個以上つけられたら合格
・ブロックの中身は“欲張りすぎない”
ってルールにしてる」
「欲張りすぎない?」
「うん。
例えば“数学も英語も理科もやる!”って詰め込むと、
だいたい崩壊するから、
“メイン1つ+おまけ少し”くらいにしてる」
「なるほど…」
友達が、
自分のノートにごしごしとメモを書いているのが見える。
「あと、
スマホの通知はブロック中は“最低限だけオン”にしてる。
家族と、緊急そうな子だけ。
その代わり、ブロックの終わりに“返信タイム”作る感じ」
「ブロックの終わりに…返信タイム…」
タイマーを見ると、
ちょうど4分半くらい。
(よし、5分ルール内で収まりそう)
「詳しい計画立てるのは、
自分で試して“合う形”探してく感じで良くない?
最初は1日1ブロック◎目標とかでも全然ありだと思う」
「うん、それならできそう。
なんかさ、田中って
“全部やろうとしないで生き延びる方法”見つけるの上手いよね」
「生き延びるって言い方やめて」
二人で笑ったところで、
タイマーがピピッと鳴った。
「じゃ、続きは図書館で。
ここまでにしとこ」
「ありがと。
田中の“5分相談ルール”、
私も真似したいかも」
通話を切ってから、
赤い手帳の今日の欄に小さく書き足す。
『8〜10:数学+英語一行 ◎(5分相談ルール守れた)』
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**昼(図書館で、歩幅の調整)**
お昼は、
・鶏もも肉とキャベツとパプリカの蒸し料理
・きゅうりとわかめとトマトのサラダ
・白いごはん
・なめこと豆腐の味噌汁
だった。
「なんか今日、彩りが“頑張る人向け”って感じだね」と里奈が言うと、
「“外で集中したい人セット”です」と母が返してくる。
(だんだんネーミングにジャンルが出てきた気がする)
ごはんを食べ終わってから、
水筒にお茶を入れ、英語ノートと数学ワーク、
『二人の季節』ノートもカバンに入れる。
(元気デーとはいえ、
飛ばしすぎると次の日“なんとかデー”に落ちるから、
今日は13〜15のブロック一本だけにしとこ)
図書館の自習スペースに着くと、
さっき通話した友達と、
もう一人クラスメイトがすでに座っていた。
「田中ー、こっちこっち」
「おじゃましまーす」
三人並んで座ると、
友達の一人が言う。
「とりあえずさ、
30分勉強→10分休憩→雑談→また30分、みたいなのでどう?」
「私はそれ助かる〜。
ずっと黙ってるのムリだから」
(うわ、ここで“完全に合わせる”かどうか問題)
里奈は、
手の甲の『歩幅まもる』を見る。
(最初から全部合わせると、
絶対あとでバテるやつ)
そこで、
前にうまくいった“グレーな一言”を思い出す。
「最初の30分は、
私、雑談なしでがっつりやりたい派かも。
その代わり、休憩タイムになったら、
そのぶん全力でしゃべるっていうのはどう?」
「え、全力でしゃべるって何」
「推しの話しようってこと」
二人が笑う。
「じゃあ、
“最初の30分は無言ゾーン”って決まりにしよ。
そのあと10分は、雑談フリータイム」
「賛成〜」
ノートに「13:05」と小さく書いて、
そこから30分、三人とも黙々とワークを進める。
横から、
シャーペンの音と、
ページをめくる音だけが聞こえてくる。
(“みんなと一緒に集中してる感じ”、
けっこう好きかもしれない)
30分経って時計を見たところで、
友達の一人が小声で言う。
「はい、推しタイム入りました〜」
一気に空気がゆるむ。
「最近さ、
海外ドラマで観てるやつがあって…」
もう一人の友達が、
カバンからタブレットを少しだけ出す。
画面には、
『星をなくした街で』というドラマのサムネイルがちらっと見えた。
「これの主人公がさ、
みんなと歩くペース合わなくて悩んでるんだけど、
途中で“自分の歩幅で歩くことがむしろ役に立つ”って展開になるの」
(タイムリーすぎん?)
「へえ。
それ観たら、
“全員に合わせなくていいんだな”って思えて、
ちょっと気が楽になった」
(フィクションからも“歩幅メモ”もらえるのありがたいな)
10分の雑談タイムが終わるころ、
里奈は自分のノートの端に小さく書く。
『・勉強も雑談も、“時間で区切れば”一緒にできる。
・最初の集中タイムを大事にすると、自分の歩幅も守りやすい。』
残りの時間も、
「集中→雑談」を二回まわして、
図書館ブロックは終了した。
帰りぎわ、
友達がスマホを取り出す。
「せっかくだから、一枚写真撮らない?
“図書館頑張りました”記念」
三人で本棚を背景に自撮りする。
「フィルターどうする?」
「盛れるやつで!」
友達が、
肌がつるつるになって目が大きくなるフィルターを選ぶ。
(たしかに可愛いけど、
もはや誰って感じのときもあるんだよな)
自分のスマホのほうでは、
色味だけちょっと明るくなるくらいの、
控えめなフィルターを選んで撮り直す。
画面を見て、
三秒だけ自分をチェック。
(クマはちょっとあるけど、
“頑張った人の顔”って感じで、
これはこれで好きかも)
『“今の自分で好き”フォルダ』に、
その写真を一枚だけ追加する。
(将来、
誰かの写真を撮る立場になったとしても、
“盛りすぎないけど、その人が好きって思える顔”を
ちゃんと残せる人でいたいな)
---
**夕方(体力ゲージと、スマホの歩幅調整)**
家に帰って、
水筒を洗って一息つく。
(今日は“元気デー”だけど、
ちょっと足に疲れが来てる感じ。
このままダラダラSNS見始めたら、
夜ブロックが死ぬ未来しか見えない)
ソファに座ってスマホを開くと、
グループトークがにぎやかになっていた。
『図書館組おつかれ〜』
『写真盛れすぎて笑ったw』
『田中のブロック勉強の話、もっと聞きたかった』
(“もっと聞きたい”って、
ここから延々とチャット相談コースに行く可能性あるやつ)
そこで、
通知設定を開いて、
自分なりの“小さなルール”を追加してみる。
(夜ブロックが始まるまでは、
グループトークの通知はオフ。
代わりに、赤い手帳の横に
“18:30〜18:40:返信タイム”って入れておこ)
メモ欄に書き込む。
『・スマホ返信は“時間の箱”に入れる。
→ だらだら開きっぱなしにしない。』
(“全部リアルタイムで反応しなきゃ”って思わなければ、
ちょっとは脳みそも休めるかもしれない)
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**夜(二人の季節と、今日の実験メモ)**
夕食は、
・鶏むね肉とナスとししとうの蒸し料理
・ひじきと大豆とにんじんの煮もの
・雑穀ごはん
・ほうれん草と卵の味噌汁
だった。
「今日、図書館どうだった?」と父が聞く。
「なんか、
みんなで勉強するときも、
“自分の歩幅”決めておいたほうが楽って気づいた日」
「お、なかなかの名言出たな」
(さすがに家族の前で“歩幅まもる”って
手の甲見せながら語るのは恥ずかしいけど)
お風呂でしっかり温まってから、
20〜22時ブロックに入る。
机の上に、
赤い手帳と『二人の季節』ノート、英語一行ノートを並べる。
まず英語ノートに、
今日のフレーズを書く。
『I want to keep my own pace, even when I walk with someone.
(一緒に歩くときも、自分の歩幅はちゃんと持っていたい)』
声に出すと、
胸のあたりが少しだけしゃんとする。
『二人の季節』ノートを開く。
今日書きたいのは、
主人公の女の子と、友達の歩くペースが合わない場面。
> 「私さ、
> あんたのことは好きなんだけど、
> 全部の歩幅をあわせ続けると、
> 自分の足がすり減る気がするんだよね。」
> 「だからさ、
> 最初の角までは私のペースで歩かせて。
> その先は、あんたの話を聞きながら、
> お互いの歩幅を探す感じにしない?」
そんな台詞を書きながら、
里奈は手の甲を見る。
『歩幅まもる』
(今日みたいな日を、
ノートの中の人たちにもちゃんと残しておきたい)
赤い手帳の今日の欄に、
今日の“実験メモ”を書き込む。
『・誰かと勉強するとき、
→ 最初に“集中タイム”と“雑談タイム”の時間を決める。
→ 自分の集中タイムを削ってまで合わせない。
・スマホ返信は、
→ “返信タイム”を決める。
→ グループトークはブロック中オフ。』
ブロックの達成度も書き込む。
『8〜10:家ブロック(数学+英語一行) ◎
13〜15:外ブロック(図書館勉強+読書少し) ◎
20〜22:二人の季節+ストレッチ ◎(ストレッチ5分+脚多め)』
(◎三つの日は、
“今日は自分の歩幅で走り切れた”って感じがする)
ご褒美に、
冷蔵庫からぶどうを小皿に出す。
種なしの粒を半分に切って、
プレーンヨーグルトの上にころころとのせる。
上からハチミツをほんの少したらす。
(ぶどうって、
皮ごと食べられるタイプだと、
“そのままで完成してる感”あって好き)
一口食べると、
ぶどうの甘さと、ヨーグルトの酸味がまざって、
(今日は、誰かのペースに流されすぎずに済んだな)
と、お腹のあたりがふわっとゆるむ。
画面の中の“完璧な高校生”たちとは、
まだ全然違う自分だけど、
「自分の歩幅をちょっとだけ守れた日」が
一個増えたなら、それでいいか、と思いながら、
里奈はもう一口、スプーンを口に運んだ。
## 後書き
**日記**
**20xx年8月18日(火曜日) 高校1年生 田中里奈**
今日は、自分の歩幅を守る練習をした日だった。
午前中は、家でブロック勉強をしてから、
友達にブロック勉強の決め方を5分だけ通話で話した。
前に決めた「人を助けるのは5分以内でできること」とか、
「知識と工夫で助ける」というルールを思い出して、
自分の赤い手帳を見せながら、
「2時間を1ブロックにして、1日◎1個でOKにしてる」とか、
「ブロックの中身は欲張りすぎない」っていう話だけを伝えた。
タイマーを5分にセットしておいたおかげで、
相談もちゃんと聞けたし、
そのあと自分の勉強ブロックも崩れなかった。
午後は、友達二人と図書館で勉強した。
最初に「30分勉強→10分休憩→雑談」の流れにしようって話になって、
いつもみたいに全部合わせるか迷ったけど、
手の甲の「歩幅まもる」を見て、
「最初の30分は雑談なしでがっつりやりたい」って
グレーな感じで本音を混ぜてみた。
結果的に、三人ともちゃんと集中できたし、
休憩タイムに推しの話を全力でできて、
(合わせすぎないほうがむしろ仲良くいられることもあるんだな)
ってちょっとびっくりした。
海外ドラマの『星をなくした街で』の話を聞いて、
“自分の歩幅のままで役に立つキャラ”のことを思い出したのも、
今日のテーマとつながってた気がする。
今日の実験は、
・誰かと勉強するときは、
最初に「集中タイム」と「雑談タイム」を時間で決めること。
・スマホの返信は、
“返信タイム”を赤い手帳に一つ入れておいて、
それ以外の時間はグループトークの通知をオフにすること。
この二つをやってみたら、
友達との距離はそのままで、
自分のブロック勉強と体力はちゃんと守れた。
「一緒にいる=全部合わせる」じゃなくて、
「一緒にいるけど歩幅はそれぞれ」でもいいんだと分かったのは、
今日いちばん大きな収穫かもしれない。
おやつは、
半分に切ったぶどうをのせたプレーンヨーグルトに、
ハチミツをちょっとだけかけたもの。
皮ごと食べられるぶどうが、
なんか“そのままでもいいよ”って言ってくれてる感じがして、
(私も、完璧じゃなくても“今の歩幅のまま”で進んでよさそう)
って少しだけ思えた。
まだ、これからも相手のペースに引っ張られてしまう日もあると思うけど、
そのたびに今日の「歩幅まもる」メモを思い出して、
自分のペースをちょっとずつ言葉にしていけたらいいなと思う。




