表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リナの冒険ノート2  作者: リナ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
79/93

リナ、自分ペースの地図を引きなおす

**20xx年7月25日(土曜日) 高校1年生**

**朝**


目が覚めたとき、まず天井を見つめる。

セミの声が、すでに全力で鳴いている。


(今日は、“地面にのしかかられてる感じ”はないな)


布団の中で、いつもの三点チェック。


・足 → 布団から出した瞬間、ちゃんと動く。ふくらはぎもそこまで重くない。

・お腹 → ちょっとだけ空腹寄り。ぐう、と小さく鳴っている。

・頭 → もやり度は低め。日本語も英単語も、なんとか読めそう。


(うん、“元気デー寄りのふつうデー”。

 テストが終わったあとのわりには、けっこうマシ)


横に置いてある赤い手帳を開く。

この一週間のページには、テスト科目とブロックのメモ、

それから、「できたとこメモ」の小さい字がいくつか並んでいる。


(今日で、テスト週間もいったん一区切り。

 土曜日だし、ブロックも“詰め込む日”っていうより、

 “自分ペースを整える日”にしたい)


今日の日付の欄に、さらさらと書き込む。


『7/25(土)

 天気:晴れ時々くもり/気温:暑い予報/体調:元気デー寄りのふつう』


その下に、ざっくりとブロック。


『10〜12:図書館(英語+読書)

 14〜16:おやすみブロック(昼寝+だらだらOK)

 16〜18:テスト返却の見直し&できたとこメモまとめ

 20〜22:『二人の季節』+白湯&ストレッチ(ゆる枠)』


(“おやすみブロック先に書いとく”って、

 ちょっと前の私だったら絶対やらなかったよな)


洗面所で顔を洗って、化粧水→乳液→日焼け止め。

鏡の前で、3秒自分チェック。


一、二、三。


(ニキビは、あごに小さいの一個だけ。

 クマは、テスト前よりちょっとマシ。

 “夏休み前の顔”としては、合格ラインってことで)


前髪を軽く巻いてから、手の甲に細いペンで書く。


『マイペース優先』


(今日は“十五分本気枠”っていうより、

 “他人ペースに流されすぎない日”にしたい)


キッチンに行くと、

テーブルには、鮭の切り身を焼いたものと、

蒸し器で蒸したブロッコリーとじゃがいも、

それから納豆と味噌汁が並んでいた。


「“テスト明け栄養リセットごはん”です」と母。


「そのシリーズ、何パターンあるの」と里奈が座りながら聞くと、

父が新聞をたたんで笑う。


「名前はともかく、魚と野菜が食卓に乗っていれば、大体正解だ」


太一がトーストをかじりながら言う。


「オレも、来週から宿題地獄なんだよな〜。

 “おやすみブロック”ってオレも導入していい?」


「いいけど、その代わり“ゲームブロック”と混ぜないこと」と母。


(うちの家族、どんどんブロック制に侵食されてるな……)


---


**午前(図書館ブロック)**


午前のブロックは、近所の図書館。

冷房目当ての人と、夏休み前の学生で、

いつもより少し賑やかだ。


英語のテキストと、赤い手帳、

それから借りたい本候補を書いたメモをカバンから出す。


(テスト範囲の英語、

 “解く勉強”って感じじゃなくて、

 今日は“のんびり読む”側に寄せたい)


閲覧スペースの隅の席に座って、

英語の長文を一つだけ選ぶ。

タイマーはセットしない。

今日は、“十五分本気”より“ゆっくり理解するモード”。


(こういう日も、あっていい)


しばらく英語とにらめっこしてから、

一区切りつけて本棚へ向かう。


「小説」「エッセイ」の棚をうろうろして、

前から気になっていた一冊を手に取る。


『かがみの孤城』


(前にクラスの子が「読んだあとしばらく余韻えぐい」って言ってたやつ)


近くのソファに腰掛けて、

最初の数ページだけ、そっと読む。


いじめ・不登校・世界から切り離された感じ。

主人公の女の子の息苦しさが、

ページの隙間からじわじわ伝わってくる。


(“学校にちゃんと行けてる私”と、

 “行けなくなるかもしれない誰か”との距離って、

 たぶんそんなに遠くないんだよな……)


読みすぎると、そのまま世界に引きずられそうだったので、

今日はプロローグまでで本を閉じる。


(続きは、夏休みの“読書ブロック”でちゃんと読みたい)


貸出カウンターで本を借りていると、

後ろのほうから聞き覚えのある声がした。


「……あれ? リナ?」


振り向くと、同じクラスの子が、

問題集を抱えて立っていた。


「テスト終わったのに、勉強?」


「うん、返却されたやつの見直しとか……

 あと、図書館の冷房に甘えに来た」


「わかる〜。家だと、つい寝ちゃうしね」


彼女の腕に抱えられた問題集の背表紙には、

「数学」「英語」と太い文字。


「テストどうだった?」


「……理科、爆死した。

 “できたとこメモ”とかやる余裕なかった」


(あ、この前“できたとこカウント”の話をした子だ)


「今からでも、ちょっとだけやらない?

 今日返ってきたとこでもいいからさ、

 “ここは意外とできてた”ってとこ三つ、無理やり探すやつ」


「今から?」


「うん。五分くらいで終わるし」


閲覧スペースの端で、

彼女の答案をちょっとだけ見せてもらう。


赤ペンだらけのページの中に、

ぽつぽつと丸が並んでいる。


「ほら、ここと、ここと……ここ。

 “グラフの読み取りできてた”“計算の過程は合ってた”“用語一個だけ正解”

 とかでもいいからさ、三つだけピックアップしてみて」


「そんな細かいとこまで?」


「“できたとこ”って、

 “ちゃんと合格した問題”だけじゃなくて、

 “前よりマシになったとこ”も含めていいことにしてる」


彼女はしばらく答案とにらめっこしてから、

小さく「これと、これと……これかな」と指さした。


「じゃ、それ手帳かノートの端っこに書いときなよ。

 “次の自分への証拠”みたいなやつとして」


「証拠?」


「うん。“前もちゃんとやってたよ”って、

 未来の自分に見せるための証拠」


彼女は、ちょっと笑ってうなずいた。


「じゃあ、“証拠メモ”書いとく。

 ……ありがと。五分くらいで終わったし」


腕時計を見ると、

ほんとに五分ちょっとしか経っていなかった。


(“助けるときは5分以内+知識シェア”ルール、

 今日もちゃんと機能した)


---


**昼〜午後(おやすみブロックの罪悪感と交渉)**


昼過ぎ、家に戻ると、

リビングはカーテンが半分だけ閉められていて、

エアコンの風が静かに流れていた。


「今日は“午後おやすみブロック推奨デー”だからね」と母。


「そんな日があるの?」


「テストで頭使った週の土曜日は、

 “片付けより休む優先”って、母が勝手に決めました」


(母の中にも、マイルールが増えていってる……)


お昼ご飯は、

昨夜の鯖の味噌煮の残りをほぐして混ぜたおにぎりと、

蒸し器で蒸したかぼちゃとピーマン、

ワカメスープ。


(“残り物活用+蒸しブロック”、普通に好き)


ご飯を食べ終わってから、

14〜16時の欄をちらっと見る。


『14〜16:おやすみブロック(昼寝+だらだらOK)』


(書いたの、自分なんだけどさ。

 いざその時間になると、

 “ほんとに休んでいいの?”って、

 胸のあたりがざわざわする)


ソファにごろんと横になりつつ、

天井のシミを数える。


(ここで英単語帳開いたら、

 “えらい自分”ポイントは上がるんだけど。

 でも、今週けっこうがんばったしな……)


スマホを手に取ると、

SNSのトレンドには、

「テスト」「成績表」「夏休み前ラスト」みたいな単語が並んでいる。


(見たら確実にしんどくなるやつ)


アプリを開きかけて、

すぐにスリープボタンを押す。


(今日の“おやすみブロック”は、

 “脳に変な情報入れない”っていう意味も含めることにしよ)


代わりに、

図書館で借りてきた『かがみの孤城』を少しだけ開く。


さっき読んだ続きから、

ページを数枚めくったところで、

胸のあたりにズキンとくる一文があった。


> 「世界のどこにも、自分の居場所がない気がした。」


(わかる、って言い切れるほど

 同じ経験をしてるわけじゃないけど、

 “もしそうなったら、私もこう感じるんだろうな”っていう想像の痛さ)


本を閉じて、胸の上に置く。


(この本、ちゃんと読むときは、

 元気デー寄りの日にしよう。

 なんとかデーの日に読むと、

 たぶん引きずられる)


エアコンの風とセミの声が混ざる音を聞きながら、

そのままいつのまにか眠っていた。


目が覚めたとき、

時計は十五時半を少し過ぎていた。


(“おやすみブロック”、

 ほとんど寝て終わったけど、

 これはこれで正解な気がする)


赤い手帳の14〜16の欄に、

『◎(ちゃんと休めた)』と書き足す。


(休んだブロックも◎にしていいって、

 前に決めた私、ほんとナイス)


---


**夕方(テスト返却の見直し&センターピン探し)**


16〜18時は、

「テスト返却の見直し&できたとこメモまとめ」ブロック。


机の上に、返却された答案を全部並べる。

英語、理科、国語、数学。


(こうやって並べると、なんか地図みたい)


赤ペンの丸とバツ、

先生のコメント、

自分の字。


一枚ずつ手に取って、

「できたとこメモ」を別のノートにまとめていく。


『英語:

 ・長文1番の要旨はちゃんとつかめた

 ・単語テスト、前回より2個多く合ってた

 ・並びかえ問題、語順で迷わなかったやつが1つ増えた


 理科:

 ・グラフ問題1つ、フル点

 ・記述1番、先生のコメント「考え方は良い」

 ・イオンの簡単な問題は落としてない


 国語:

 ・漢字で全滅してない(大きな進歩)

 ・記述で“自分の言葉で書けている”と書かれた

 ・古文の助詞のとこ、全部合ってた


 数学:

 ・計算ミスはあるけど、立式まではほぼ合っている

 ・図形の証明、途中までの流れはOK

 ・前回完全に意味不明だった単元が、“ちょっとだけわかる”レベルに』


書いているうちに、

だんだん机の上の答案が、

“失敗の証拠”じゃなくて、

“進んだ距離のメモ”みたいに見えてくる。


(もちろん、点数だけ見たら“もっと取れたでしょ”って思うけど。

 それでも、“前回の自分よりちょっとマシになったとこ”は、

 確かにここにあるんだよな)


ノートの端に、今日のセンターピンっぽい一文を書き足す。


『テストは、“できなかったことを責める紙”じゃなくて、

 “できたことを拾い上げる紙”にもできる。』


(なんか名言っぽくなっちゃったけど、

 たぶん今日の私にとっては、これが一番大事な気づき)


太一がドアをノックもせずに顔を出した。


「ねえリナ、“できたとこメモ”ってさ、

 宿題にも使っていい?」


「いいよ。どうするの?」


「夏休みの宿題、山ほどあるからさ。

 その日できたページ数とか、

 “ここだけは理解した”ってとこだけメモってこっかなって」


「それ絶対いい。

 全部終わってなくても、

 “今日はこれだけ前に進んだ”って実感あると、

 ちょっと救われるから」


「じゃ、オレバージョン作るわ。

 “ゲームで勝ったとこメモ”はダメ?」


「それは別ノートにして」


笑いながら、太一が部屋を出ていく。


(家族内でも、“できたとこカウント文化”、

 じわじわ広がってる)


---


**夜(未来の自分にメモを書く)**


夕飯は、

鮭ときのこのホイル焼きと、

蒸し器で蒸したさつまいもとブロッコリー、

キムチを乗せた冷奴と、味噌汁。


(魚率高めの一週間、

 正直ちょっと飽きそうだけど、

 肌の調子が安定してるのはありがたい)


お風呂に入って、

湯船の中で軽く足を伸ばす。


(下腹は、まだ静か。

 “例の週”は、やっぱり来週あたりか)


湯船から上がって、

化粧水と乳液を丁寧になじませる。

白湯をマグカップに注いで、机の前へ。


20〜22時ブロック。


まず、『二人の季節』のノートを開く。

今日のセンターピンを、物語の中にも混ぜ込んでみたくなる。


> 「テストの紙を、

>  “ダメだった証拠”みたいに扱うの、やめてみない?

>  あれ、ほんとはさ。

>  “ここまでは頑張れたね”っていう、

>  未来の自分へのメモなんだと思う。」


(ちょっと説教感あるかな……でも、

 主人公が自分に向けて言ってるなら、ギリ許されるかもしれない)


白湯を一口飲んでから、

机の横で3分ストレッチ動画を再生する。


(今日も②の中期目標クリア。

 “白湯+3分ストレッチ”、

 だいぶ体に馴染んできたな)


ストレッチが終わったところで、

赤い手帳の今日のページを見返す。


『10〜12:図書館(英語+読書) ◎

 14〜16:おやすみブロック ◎(昼寝成功)

16〜18:テスト見直し&できたとこまとめ ◎

 20〜22:二人の季節+白湯&ストレッチ ◎寄り』


(“全部◎にする日”って、

 そんなに多くなくていいけど、

 たまにあると、ちょっと嬉しい)


ページの下の余白に、

来週からのブロック配分について、

ちょっとだけメモする。


『・夜ブロック、1日おきに“おやすみブロック”と入れ替え

 ・元気デーの日だけ、朝ブロックを一つ増やす

 ・“読書ブロック”を週に一回どこかに入れる』


(“全部がんばる週間”じゃなくて、

 “がんばる日と休む日の地図”を、

 ちゃんと自分で引きなおす感じにしたい)


そう思ったところで、

今日のセンターピンが、

頭の中でカチっとハマる。


(“テストの点数”でも“勉強時間”でもなくて、

 “自分のペースを、自分で選び直した日”って感じ)



## 後書き


**日記**


**20xx年7月25日(土曜日) 高校1年生 田中里奈**


今日は、「自分のペースの地図を、少し書きかえた日」だった。


テスト週間がひと段落して、

“もっと勉強しなきゃ”と“もう寝たい”の間で揺れてたけど、

赤い手帳に最初から「おやすみブロック」を書き込んだおかげで、

休む時間を「サボり」じゃなくて、「予定どおり」にできた。

お昼にしっかり昼寝したのに、

ブロックの欄に◎を書けたのは、

なんか不思議だけど、けっこう気持ちよかった。


図書館で『かがみの孤城』を少しだけ読んだとき、

「世界のどこにも、自分の居場所がない気がした」って一文が、

胸にぐさっときた。

私は今のところ、学校に普通に通えているし、

友だちもいるけど、

ちょっとしたことでそのバランスが崩れたら、

あっち側に落ちる可能性は全然あるんだと思う。

だからこそ、

“勉強ができるかどうか”だけじゃなくて、

“自分のペースを守れるかどうか”とか、

“しんどくなりそうなときにどこまで引き返せるか”っていう感覚を

少しずつ育てておきたい。


テストの答案を並べて、

「できたとこメモ」をまとめて書いたとき、

紙の見え方がちょっと変わった。

前までは、赤ペンのバツを見るたびに、

“ここもダメ、ここもダメ”って自分を攻撃してたけど、

今日は「ここは前よりマシ」「ここは意外といけてた」っていう

“進んだ距離”のほうに目を向けてみた。

点数そのものは大したことなくても、

前回より解ける問題が増えてるなら、

それはちゃんと前に進んでる証拠だと思う。


新しい実験としては、

・土日は、最初から「おやすみブロック」をどこかに入れておく。

・テスト返却のときは、各教科ごとに「できたとこ三つメモ」を必ず作る。

この二つをしばらく続けてみようと思う。


夜のおやつは、

蒸し器で蒸したさつまいもを薄くスライスして、

トースターでこんがりめに焼き直して、

プレーンヨーグルトと合わせた。

さつまいもは表面が少しカリッとしてて、

中はほくほくで甘くて、

ヨーグルトの酸っぱさと一緒になると、

“夏だけど重くないスイートポテト”みたいな味になった。

白湯をちびちび飲みながらそれを食べていたら、

(今日もちゃんと、自分の体と時間に

 “おつかれ”って言えたかも)

って、少しだけ思えた。


テストの結果も、将来のことも、

まだ全然不安だし、

これから絶対また落ち込む日も来るけど、

赤い手帳の今日のページと、

“できたとこメモ”と、

さつまいも+ヨーグルトの幸せを思い出せば、


とりあえず、今の自分のペースで、

もうちょっとだけ前に進めそう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ