リナ、日曜日をブロックで塗りつぶす
**20xx年7月19日(日曜日) 高校1年生**
**朝**
目が覚めて、天井を見ながら体の状態をざっくりチェックする。
(うん、今日は……けっこう軽いほう)
布団の中で、三点確認。
・足 → 起き上がってそのままキッチンまで余裕で行けそう。
・お腹 → ほぼ存在感なし。ときどき「先週バタバタしてたよね〜」って思い出程度に主張してくるくらい。
・頭 → ちゃんと起きてる。ふつうに日本語の文章が読めそうなレベル。
(これは、“元気デー(地面軽め+眠気ふつう)”だな)
ベッドの横に置いてある、赤い手帳を開く。
左のページに先週(月〜土)のブロック予定と、
横にちょこんと書かれた「◎」「△」「×」。
『7/13(月)
6〜8:英語ワーク+復習 △
20〜22:『二人の季節』+ストレッチ ◎』
『7/16(木)
6〜8:理科ワーク ◎
20〜22:英単語+ストレッチ △(眠気)』
(◎の日、多いの朝ブロックなんだよな……
夜ブロック、普通に×まみれのときあるもん)
今日のページを開く。
『7/19(日)
天気:晴れ/気温:暑い予定/体調:元気デー(地面軽め)』
その下に、今日のブロックを書き込む。
『8〜10:英語ワーク+数学見直し
10〜12:理科ワーク(15min×2セット)
14〜16:『二人の季節』夏の章
20〜22:明日からの週間ブロック決め+ストレッチ』
(今日は“2時間ブロックで塗り絵する日曜日”ってことにしよ)
洗面所で顔を洗って、化粧水→乳液→日焼け止め。
鏡の前で、恒例の3秒自分チェック。
一、二、三。
(あ、先週より目の下のクマちょっとマシ。
肌も、とりあえず大荒れしてないし。
“夏休み前に顔面崩壊コース”ではない)
「今日は、“がんばれそう顔九割デー”認定でお願いします」
小声で宣言してから、前髪を整える。
手の甲には、細めのペンで小さく書く。
『2h+15min』
(2時間ブロックの中に、“十五分だけ本気枠”を一個入れる。
全部を本気でやろうとすると、また木曜日みたいにバテるし)
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**午前(8〜10時ブロック:英語+数学)**
朝ごはんは、蒸し器から出てきた温かいさつまいもと、
目玉焼きと、味噌汁。
「日曜だけど、テスト前だから“ちゃんと朝ごはん食べてから勉強強化週間”です」と母。
「ネーミング、強化週間のくせにちょっとゆるいんだよな」
そう言いながら、さつまいもを割る。
湯気の向こう側が、ちょっとだけオレンジに見える。
(今日のおやつ枠も、絶対さつまいも活躍するやつじゃん)
ごはんを食べて、
8〜10時ブロックスタート。
机の上に、英語ワークと数学のノートを並べる。
赤い手帳のすみっこに『8〜10:◎狙い』とちょっとだけ強気に書いた。
(まずは英語、30分。
そのあと数学に移動して、
9時半くらいから“15分本気枠”やる感じで)
そう決めて英語を解き始めたところで、
スマホがブルッと震えた。
画面には、クラスメイトからのメッセージ。
『ねえ、今ちょっといい?
数学の証明ヤバすぎて死にそう。
通話で教えてほしいレベル……』
(うっ……出た、“通話で教えて”案件)
手の甲の『2h+15min』が目に入る。
そして、頭の片すみにある、自分ルール。
(“5分以内で知識だけ”、
“それ以上は先生とか他の人にバトン渡す”。
ここで1時間コース入ったら、
自分のブロック全部崩壊するやつ)
少しだけ息を吸って、
LINEのキーボードを開く。
『今8〜10で自分の勉強ブロック中だから、
通話はむずい…!』
一瞬迷ってから、続ける。
『でも、その証明のとこ、
ノートにまとめてるやつあるから、
ポイントだけ写真送るのはできるよ』
数十秒後、返事。
『神…!通話無理なの了解!
写真くれるだけでもめっちゃ助かる…!』
(通話断っても、“冷たい”ってわけじゃない感じの返事でちょっと救われた)
数学ノートをペラペラめくって、
その単元のページをスマホでパシャ。
図をなぞったり、
「ここだけ“ゴールから逆算する”って考えたほうが楽」と
自分で書いたメモが映るように撮る。
写真を送るときに、一言添える。
『この図の下の、“こうなるはず”ってとこから
証明を組み立ててくと、ちょい楽かも。
分かんなかったら、まずそこをマネしてみてー』
(これなら、5分以内でできる“知識シェア”って感じかな)
送信してから、スマホを伏せる。
(よし、自分ルール的にもギリセーフ)
時計を見ると、8時半をちょっと過ぎたくらい。
(英語に戻る。
このブロックの“15分本気枠”、
9時15分からにしよ)
英語ワークを区切りのいいところまで進めて、
9時15分。
スマホのタイマーを十五分にセット。
『英語長文15min本気』
スタートボタンを押す。
(今から十五分は、
“集中してるフリ”じゃなくて、
ほんとに集中する時間)
目の前の英文が、
さっきよりちょっとだけクリアに見えた。
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**午前後半(10〜12時ブロック:理科)**
10時になって、ブロック切り替え。
赤い手帳の横に、小さい丸を描いて、
そこに『△』を書いておく。
(英語◎にしたかったけど、
途中でLINE対応も挟んだし、
“がんばったけどちょい崩れブロック”ってことで△)
理科ワークを机の中央にドンと置く。
(ここから12時までは理科タイム。
でも、ひたすら解いてると絶対飽きるから、
“15min本気枠”を二回に分けて入れる作戦で)
『10:10〜10:25 15min本気①
11:05〜11:20 15min本気②』
手帳の今日のページに、小さく書き込む。
(ブロックの中にさらにミニブロック作ると、
なんかゲームのステージ増やしたみたいで、
ちょっと楽になる)
一回目の十五分で、
イオンのところを一気に攻める。
昨日、自習時間に説明したときの「磁石イメージ」を思い出しながら。
(人に説明したところって、
自分も理解度上がるんだよな。
あれ、けっこう得してるよね)
二回目の十五分では、
グラフ問題だけを集中的にやる。
タイマーが鳴った瞬間、
ペンを置いて、
ワークの端に小さくハナマルマークを描いた。
(十五分×2セットやったから、
今日の理科ブロックは“◎寄りの△”ってことで)
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**昼**
お昼ごはんは、
冷やしうどんに、
蒸した鶏むね肉ときゅうりとプチトマトを乗せたやつ。
「テスト前は“消化に優しい・でもタンパク質は削らない”がモットーです」と母。
「母、最近ちょいちょいスローガン風なんだよな」
「なんとなくノリで言ってるだけだから、あまり深く考えないように」
テーブル越しに、
父が新聞を折りたたみながら聞いてくる。
「勉強のほうはどうだ、計画どおり?」
「まあ、“2時間ブロックで、なんとかデーでも最低限やる作戦”にしてる」
「また新しい専門用語出てきたな」
「リナ流時間割ね」と母が笑う。
太一が、うどんをすすりながら言う。
「オレも午前中、“十五分だけ社会”やったよ。
昨日の約束守った。えらい?」
「えらい。
“十五分だけちゃんとやったら、堂々とゲームしていい権”のやつね」
(自分の工夫が、
弟にもじわじわ浸透してるの、ちょっと楽しい)
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**午後(14〜16時ブロック:『二人の季節』)**
お昼のあと、
少しだけソファで横になってから、
14〜16時ブロック開始。
机の上に、『二人の季節』用のノートと、
昨日図書室で見た『いつか行きたい、冬の街』を思い出しながら書いたメモを広げる。
(今日は、夏の章の“夕立のあと”のシーンを書きたい)
ペンを持って、ノートに書き始める。
> 「雨上がりの道を歩くたびに、
> 彼女は『今日の足の重さ』を確かめる。
> その重さは、
> その日、どれだけ夏と仲良くなれたかのメモみたいなものだった。」
(この前の“足の重さ=歩いた証拠”と、
エッセイの“その街と仲良くなれた重さ”の、
いいとこ取りしたやつ)
書いている途中で、
なんとなく集中がふっと切れる。
(あ、これ以上ダラダラ続けると、
“なんとなく机にいるだけ”タイムになるやつ)
時計を見ると、14時40分。
手の甲の『2h+15min』を見て、
スマホのタイマーを手に取る。
「じゃあ、ここから十五分だけ“セリフタイム”」
声に出して宣言して、
十五分セット。
> 「ねえ、七月の空気ってさ」
> 彼女は言った。
> 「ただの“暑い”じゃなくて、
> “今日も来たよ〜”って毎日顔出してくる知り合いみたいじゃない?」
(本からもらった感覚、
自分の言葉に変えるの、
ちょっとずつ上手くなってる気がする)
タイマーが鳴ったときには、
今日書きたかったセリフの塊はとりあえず形になっていた。
(2時間ブロック全部を完璧にはできないけど、
“十五分本気枠”一個ちゃんと取ったなら、
◎あげてもいいでしょ)
赤い手帳の『14〜16:二人の季節』の横に、
小さく『◎(セリフ十五分本気)』と書き込む。
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**夕方**
16時を過ぎたころ、
しろの散歩タイム。
外に出ると、
七月の空気は相変わらず重めだけど、
夕方の風がほんの少しだけマイルドだった。
(今日は“攻撃力控えめモード+セミ鳴き始め”って感じ)
しろが電柱の匂いを念入りにチェックしている間、
ふと、自分の将来のことを考える。
(いつか、自分の本が出て、
それを読んだ誰かが、
“今日ちょっとだけマシだったかも”って思ってくれたらいいな)
頭の中で、その「誰か」を勝手に設定してみる。
部屋で一人、ごろごろしながら本を読んでる高校生。
ページの端っこに、自分で小さくメモを書く子。
(“今日の自分もまあまあ悪くない”って、
その子が思ってくれたら、
それだけで相当勝ちなのでは)
でもすぐに、
現実の自分の足元に視点が戻る。
サンダルの中の足が、
じんわり汗ばんでいる。
(そのために今できるの、
2時間ブロックの中に、
十五分だけでも“ちゃんと書く時間”を残すことなんだよな)
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**夜(20〜22時ブロック:週間ブロック決め+ストレッチ)**
ごはんは、
鮭のホイル蒸しと、
きのこのソテー、
冷ややっこと味噌汁。
(今日のメインは鮭か。
魚率高くなってきたな、うち)
食後のデザートは、
昨日の残りのさつまいもを、
トースターで軽く焼き直したやつと、
プレーンヨーグルトを少し。
焼き芋をひと口、
ヨーグルトをひと口。
(甘いけど、
“罪悪感ゼログループ”の味)
お風呂で湯船に浸かって、
下腹を軽く押してみる。
(もう完全に“アレの名残り”も消えた。
今は“元気デー〜元気多めデー”ゾーンだな)
お風呂上がりに白湯を飲んで、
三分ストレッチ動画を再生。
今日もちゃんと最後までやり切る。
(“しんどすぎない日だけやる”ルールにしたおかげで、
「やらなきゃ」じゃなくて「やっとくか」に変わったの、
地味にデカいよな)
20〜22時ブロックは、
赤い手帳と向き合う時間。
机に手帳を開いて、
今週分のページをめくる。
◎が多かった朝ブロック。
×が何個か並んでいる夜ブロック。
(夜はやっぱ、22時まで詰めるとしんどいんだよな……)
ボールペンで、
来週の時間割を書き始める。
『月
6〜8:英語ワーク+理科 ◎狙い
20〜21:二人の季節(15min本気枠含む)
21〜22:白湯+ストレッチ(できたらラッキー枠)』
『火
6〜8:数学+英単語
20〜22:テスト見直し or おやすみブロック』
(夜を“2時間ガチ”じゃなくて、
“1時間+1時間ゆる枠 or おやすみ枠”にしたほうが、
たぶん現実的)
今週の反省を、
ページの端っこにメモする。
『◎が多かったところ → 朝ブロック、体調“元気デー”の日
×が多かったところ → 夜22時まで詰めた日(眠気+スマホ)』
『→ 夜ブロック詰めすぎない。
“できたらラッキー枠”を作る。』
(“できなかったところ”じゃなくて、
“できたところベースで調整する”の、
少しずつ板についてきた気がする)
手帳を書き終えたら、
英語ノートを開いて、今日の一文。
『Today’s memo:
Two-hour blocks worked better
when I left a small space
for “just fifteen minutes.”』
下に日本語。
『→ 2時間ブロックも、
“十五分だけちゃんとやるスペース”があると、
だいぶマシになる。』
ノートを閉じて、
日記ノートを開く。
## 後書き
**日記**
**20xx年7月19日(日曜日) 高校1年生 田中里奈**
今日は、「2時間ブロックの中に“十五分だけ本気枠”をはめこんだ日」だった。
朝、赤い手帳を見ながら一日のブロックを決めて、
8〜10、10〜12、14〜16、20〜22って、
時間割っぽく書き出したら、
それだけでちょっとだけ「自分でコントロールしてる感」が出た気がした。
英語ブロックの途中で、
友達から「数学通話で教えてほしい」ってLINEが来たとき、
正直、ちょっとだけ「うわどうしよう」ってなった。
でも、自分の中で決めた
「5分以内・知識で助ける/それ以上は大人や他の人にバトン」
のルールを思い出して、
ノートの写真+一言アドバイスだけ送って、
通話は断ることにした。
断る瞬間は胸がぎゅっとなったけど、
「それでもありがとうって言ってもらえた」ことで、
(あ、ちゃんと助け方を選んでもいいんだな)って
少しだけ安心した。
理科ワークと『二人の季節』は、
2時間全部を完璧にやろうとすると途中でだれてくるから、
一つのブロックの中に
「15min本気枠」を1〜2回だけ仕込むやり方が、
思ったよりうまくハマった。
タイマーをかけて、「今から十五分だけちゃんとやる」って決めると、
最初から最後まで集中が続くわけじゃなくても、
その十五分だけはちゃんと“自分で選んで集中してた時間”だって
言い切れる感じがする。
『七月の空気』と、
図書室で見た『いつか行きたい、冬の街』からもらった
「足の重さ=その日その場所と仲良くなれた証拠」っていう感覚を、
『二人の季節』の夏の章に混ぜられたのも、
今日のよかったことの一つ。
好きな本の言葉を、
ちょっとだけ自分の物語のほうに引っ張ってくる作業が、
最近けっこう楽しい。
中期目標は、
①『二人の季節』の夏の章を、今週中に“夕立のあと”まで書く。
② 白湯+3分ストレッチを、“元気デー〜なんとかデー”の日に続ける。
の二つのまま。
ただ、②は「毎日やる」じゃなくて
「できそうな日にやる」って決めたことで、
結果的に回数は増えてるのが不思議だなと思う。
来週からの実験としては、
・夜ブロックは“2時間ガチ”じゃなくて
“1時間集中+1時間ゆる枠 or おやすみ枠”にする。
・2時間ブロックの中に、必ず「15min本気枠」を一つだけ入れる。
この二つを試してみることにした。
たぶん、全部やろうとするとまたどこかで固まるから。
今日は、手帳とタイマーと、
自分ルール(5分以内の助け方)のおかげで、
テスト前の日曜日が“がんばりすぎてバテる日”じゃなくて、
「ちょっとだけ自分を上手に使えた日」になった気がする。
まだ不安もあるし、
テストも、将来のことも、
ぜんぶがスッキリしたわけじゃないけど、
とりあえず今日は、
赤い手帳の今日のページに書いた『◎と△』を見て、
これで、よし。




