表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リナの冒険ノート2  作者: リナ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
76/93

リナ、木曜日は十五分区切り

**20xx年7月16日(木曜日) 高校1年生**

**朝**


目が覚めた瞬間、体の重さチェックをする。


(あ、今日……けっこう動けそう)


布団の中で、いつもの三点確認。


・足 → スタスタ歩ける。階段もいけそう。

・お腹 → ほぼ存在感なし。たまに「いたよ〜」って手を振ってくるくらい。

・頭 → ちゃんと起きてる。低空飛行じゃなくて、普通の高さ。


(これはもう、“元気デー寄りなんとかデー”認定でいいや)


ベッドわきのメモ帳を開く。


『7/13 元気少なめデー(アレ終盤+月曜リハビリ)』

『7/14 なんとかデー(眠気つよめ+プリント多め)』

『7/15 なんとかデー(湿気+宿題こつこつ)』


空いている今日の欄に書き足す。


『7/16 元気デー(アレほぼ終了+テスト前ギアちょい上げ)』


ボールペンのインクの線が、いつもよりスッと通った気がした。


洗面所で顔を洗って、化粧水→乳液→日焼け止め。

鏡の前で、恒例の3秒自分チェック。


一、二、三。


(クマ、まだ完全消滅じゃないけど、

 肌のブツブツ少なめだし、

 先月より「ちゃんと生きてる顔」感ある)


「今日は、“がんばれそう顔八割デー”ってことで」


声に出して決めてから、前髪を整える。


手の甲には、今日のキーワード。


『15min』


(なんでもかんでも一気に終わらせようとするからバテるんだよな……

 “とりあえず十五分だけやる”って縛りのほうが、

 テスト前には救いになる気がする)


髪は、前より少しだけ高めのひとつ結び。

ゴムの位置を変えるだけでも、ちょっと気分が変わる。


(今日は、昨日より十五分だけ前に進めば勝ち、ってルールでいこ)


---


**午前(通学〜英語)**


家を出ると、空は相変わらず湿気多め。

でも、風が少しだけマシになっていた。


(七月の空気、今日は“攻撃力控えめモード”っぽい)


駅までの道で、またあのスカート丈チェック先生に遭遇する。


「田中さん、そのくらいならセーフかな」


「やった、今日は“セーフ判定”だ」


思わず小声でガッツポーズする。


(“もう少し下ろせるよね?”じゃなくて、

 “セーフ”って言われると、

 なんかこっちも「よし、じゃあルール内で楽しもう」って気になる)


電車の中では、スマホじゃなく文庫本『七月の空気』の続きを開いた。

ちょうど、主人公が何もしてない一日を「ちゃんと休んだ日」として数え直すシーン。


> 「何もしていないようでいて、

>  実は、体と頭がゆっくり回復する作業をしていた日。」


(“何もできなかった”って言ってる自分に、

 「いや、回復作業してたでしょ」ってツッコミ入れてくる感じ、ほんと好き)


英語の授業では、

教科書のページの端に小さく書いてあるコラムを読んだ。


『Friday night routine in different countries』


「金曜日の夜の過ごし方は、国によってけっこう違います、みたいなやつね〜」と先生。


「全部ちゃんと読むと時間足りないから、今日は日本ともう一つだけでいいよ」


(“全部読め”じゃなくて“二つだけでOK”って言われると、

 ちょっと救われる)


日本の「金曜夜のテレビとごはん」みたいな文章と、

別の国の「友達と短い映画を見ることが多いです」という文章。


(“世界の金曜日オンライン映画会”、

 わりと自然な流れなんだなって勝手に納得)


ノートの端っこにメモする。


『→ 世界の何かを全部知ろうとしないで、

  一個だけちゃんと味わう、でいい』


(テスト勉強も、

 “全部完璧”じゃなくて“今日はここだけ”でいい気がしてきた)


---


**昼休み**


お弁当タイム。

机をくっつけて、いつものメンバーで囲む。


「ねえ、期末の範囲表見た?」と一人が開口一番。


「見たくない……数学のページ数、普通にサバ読んでない?」

「英単語テストもあるって聞いたんだけど」


テーブルの上にため息が並んでいく。


私は、卵焼きを一口かじってから言う。


「全部見たら心折れるからさ、

 とりあえず“今日やるページ”だけマーカー引くとかは?」


「なるほど、“今日分だけ見る方式”」


「そう。

 なんか前に読んだ本に、

 『七月の空気に負けなかった日として数える』みたいな感じで書いてて、

 あれにちょっと似てるけど」


「あー、この前言ってたやつ? なんだっけ、『七月のなんとか』」


「『七月の空気』。

 あの本、何もしなかった日も“負けなかった”ってカウントしてて、

 あれ見てから“全部終わらなくても、今日できた分だけ数えればよくない?”って思うようになったっていうか」


「いいなそれ。“できなかったリスト”じゃなくて“できたリスト”方式」


「できたところ数えるやつね」


そう言いながら、友達のひとりが自分の範囲表を出して、

英語の単元のところにボールペンで小さな四角を描き始めた。


「じゃあ今日、ここだけ。

 “教科書〇ページ〜〇ページ、十五分だけ見る”って決めとこ」


「十五分ってめっちゃ短くない?」


「短いほうが、逆にやれるじゃん。

 “十五分だけ”って思うと、

 “え、じゃあ今やる?”って気にならん?」


(よし、“15min”キーワード、

 さりげなく外にも出せた)


「それ、真似しよ。

 “十五分だけだったらやるか”って気持ち、分かりすぎてつら」


お弁当箱の横に、

自分の範囲表をそっと出して、

私も理科のページに小さい四角を書いた。


『理科:ワークP.32〜35 15min』


(全部終わるかどうかじゃなくて、

 “十五分やった”を今日の勝ちにする)


---


**午後(自習〜放課後)**


五時間目は、テスト前恒例の自習時間になった。


「はい、分からないところは聞いていいけど、

 基本は各自でやることー」と先生。


教室中に、プリントと参考書の山が広がる。


私は、机の上に理科ワークを一冊だけ出して、

手の甲の『15min』をチラッと見る。


(今から十五分だけ、理科。

 それ終わったら、残りは“やれたらラッキー”枠)


スマホのタイマーを十五分にセットして、

スタートを押す。


カウントが動き始めた瞬間、

ちょっとだけスイッチが入る。


(はい、今から十五分は、

 “どうせやるならちゃんとやるタイム”)


途中で、前の席の子が振り向いた。


「リナ、そこ分かる? このイオンのとこ」


タイマーをチラ見して、

まだ六分台だと確認してから、

ノートを見せる。


「ここね、+とか−の数だけじゃなくて、

 “どっちに引っ張られるか”イメージしたほうが楽かも。

 ほら、前に先生が“磁石のイメージ”って言ってたところ」


「あー……それか。

 ありがとう、ちょっと分かった」


(前に作った“イメージで覚える”ノート、

 こういうとき地味に役に立つな)


タイマーが鳴ったところで、

いったんペンを置く。


(はい、理科十五分ミッションクリア)


その後は、

残り時間を英単語カードをめくるのに使って、

「今日はここまで」と区切った。


自習のあと、放課後。


今日は部活もなくて、

オンライン映画会も明日の夜。


(“寄り道したい欲”と“帰って横になりたい欲”、

 どっちもいるな……)


教室を出るとき、

友達に声をかけられた。


「今日さ、図書室寄る? それとも真っ直ぐ?」


「うーん……十五分だけ図書室寄って、

 そのあと真っ直ぐ帰るコースはどう」


「また十五分出た」


「今日のキーワードだから。

 “十五分読書したら、罪悪感ゼロで帰る権”ってことで」


「それは欲しい。採用」


二人で図書室に寄って、

『七月の空気』の隣の棚にあったエッセイ本を一冊手に取る。

タイトルは『いつか行きたい、冬の街』。


(タイトルだけでもう、『二人の季節』の参考書っぽい)


中をパラパラとめくると、

海外の冬の写真と、短い文章が並んでいた。


> 「雪道を歩いたあとの足の重さは、

>  その日、どれだけその街と仲良くなれたかの重さだと思う。」


(あ、これ……

 昨日ノートに書いた“足の重さ=歩いた証拠”と、

 ほぼ兄弟みたいな文章じゃん)


十五分だけ、立ったまま数ページ読んで、

本を元の場所に戻す。


(今日は借りない。

 “いつか絶対借りるやつリスト”に入れておこう)


---


**夕方**


家に帰ると、

リビングで太一が宿題を広げていた。


「リナ姉、社会のプリント分かんない」


「社会は母に聞きなさい社会は」


「今電話中……」


(“母は今世界と戦っているので不在”ってことね)


ため息をつきながら、

プリントを覗き込む。


「ここ、“覚えろ”って書いてあるけど、

 全部一気にやろうとするから嫌になるんだよ」


「じゃあどうすればいいの」


「十五分だけやれ」


「また十五分かよ」


「今日の田中家ワードなんだよ、“十五分”。

 社会のここだけって決めて十五分やって、

 終わったら堂々とゲームしていいことにしよ」


「マジで?」


「マジで。

 ただし、十五分はちゃんとやること」


太一はしぶしぶキッチンタイマーを十五分に合わせて、

プリントに向かい始めた。


(“自分の工夫”が兄妹にも適用されてくの、

 ちょっと実験感あっておもしろい)


キッチンでは、お母さんが蒸し器をセットしていた。


「今日のメインは?」


「鶏むね肉と野菜の蒸しもの〜。

 あとは納豆とお味噌汁。テスト前なので“消化に優しいメニュー”です」


「それ、“月曜仕様”の親戚?」


「そうそう。“テスト前木曜仕様”。

 名前は適当だけど、方向性は真剣」


テーブルに並んだのは、

鶏むね肉とブロッコリーとにんじんの蒸しもの、

冷奴、納豆、豆腐とわかめのお味噌汁。


「リナ、今日の体調は?」


「今日は“元気デー(アレほぼ終了+テスト前ギアちょい上げ)”」


「じゃあたんぱく質はしっかり取ろうね。

 あ、食後に冷凍ブルーベリー出すから」


(完全に“体調メモ前提の献立会話”になってるの、

 だいぶ未来感あるな)


ごはんのあと、

プレーンヨーグルトに冷凍ブルーベリーをざっと入れて、

ハチミツをほんの少しだけ垂らす。


スプーンですくうと、

ブルーベリーがヨーグルトの白の中で、

きれいに色を溶かしていった。


(今日のデザートは、“テスト前でも罪悪感ゼロ系”)


ひと口食べる。


(ちゃんと甘いのに、

 胃が重くならないの、ほんと偉い)


---


**夜**


お風呂で湯船に浸かりながら、

下腹を軽く押してみる。


(痛み、ほぼなし。

 今月もなんだかんだ、乗り切りゾーン入ったっぽい)


湯気で少しぼけた自分の膝を見ながら、

(これ、来月もちゃんとここまで来られたらいいな)と思う。


お風呂上がりに白湯を一杯飲んで、

三分ストレッチ動画を再生。


(“しんどすぎない日だけやる”ルールにしたけど、

 今日は普通にやれる日)


体を伸ばしながら、

一週間分の星マークを頭の中で数える。


(先週は“毎日やるチャレンジ”クリア。

 今週は“できる日に続けるチャレンジ”。

 どっちもそれなりに頑張ってるじゃん、自分)


ストレッチが終わったら、

机の“居場所スペース”へ。


『二人の季節』のノートを開いて、

今日は夏の章に進む。


> 「彼女は、七月の空気を

>  『ただの暑さ』ではなく

>  『一緒に歩く相手』だと思うことにした。

>  そう決めた日から、

>  少しだけ、夏がマシになった。」


(今日の国語と、『七月の空気』の影響、

 ちゃんと混ざってる)


ふと、将来の自分を思い浮かべる。


(いつか、本屋さんに来て、

 “自分が書いた本”が棚に並んでて、

 それを手に取った高校生の子が、

 今日の私みたいにちょっとだけ救われる……みたいな)


でもすぐに、今の自分の机に視点が戻る。


(そのために今できるの、

 “十五分だけでも書く”“十五分だけ勉強する”とか、

 そういうやつなんだろうな)


英語ノートを開いて、

今日の一文を書く。


『Today’s memo:


 Fifteen minutes was enough

 to make Thursday feel

 a little like a win.』


英語の下に、日本語メモ。


『→ 十五分だけでも、

  木曜日を“ちょっと勝ちっぽい日”にできた。』


ペンを置いて、

日記ノートを開く。


## 後書き


**日記**


**20xx年7月16日(木曜日) 高校1年生 田中里奈**


今日は、「十五分の区切りで、木曜日を少しだけマシにした日」だった。


朝、体調メモに「元気デー(アレほぼ終了+テスト前ギアちょい上げ)」って書いたら、

自分で「今日は少し攻めてもいい日だな」って分かって、

気持ちのギアを半段だけ上げられた。

体育みたいなハードな予定はなかったけど、

“無駄に飛ばしすぎない”っていう意味でも、

体調メモはやっぱり方向性を決めるコンパスみたいな役割をしてくれている。


お昼のときに、友達と一緒に期末範囲表を見ながら、

「全部見たら心折れるから、今日やるところだけ四角で囲む」って提案できたのは、

前に決めた「できたところを数える」考え方がちゃんと自分の中に残っていたからだと思う。

実際に、理科のワークを“十五分だけやる”って決めたおかげで、

自習時間にタイマーをかけてさっと取りかかれたし、

十五分経ったタイミングで「今日の理科はこれでOK」って区切れたのが、

いつもの「全然足りない……」よりだいぶ楽だった。


『七月の空気』と、図書室でパラパラ見た『いつか行きたい、冬の街』のおかげで、

「足の重さ=ちゃんと歩いた証拠」って発想が、

『二人の季節』の夏の章にも自然に入ってきた。

本やエッセイからもらった言葉が、

自分の物語の中にちょっとずつ溶けていく感じがして、

(あ、今ちゃんと“好きなものの影響を受けてる”って思えたのがうれしかった。


夜ごはんは、鶏むね肉と野菜の蒸しもの+豆腐とわかめの味噌汁。

完全に“テスト前木曜仕様ごはんデー”って感じで、

お腹に優しいのに、ちゃんと満足感もあった。

デザートのブルーベリー+プレーンヨーグルト+ハチミツ少しは、

「甘いもの食べたい」と「重くなりたくない」のどっちも拾ってくれる味で、

今日のベスト選択だったと思う。


中期目標は、

①『二人の季節』の夏の章を少しずつ進めること。

② 白湯+3分ストレッチを、“しんどすぎない日”に続けること。

この二つのままだけど、

②は「毎日じゃなくてもOK」というルールにしたおかげで、

続けることへのプレッシャーが少し減って、

逆に「今日はできそうだからやろう」って気持ちになれた。


明日からの実験としては、

・テスト勉強も『十五分だけやる枠』を一日に二つまで作る

・それ以外は“できたらラッキー枠”にする

この二つを試してみようと思う。

全部を完璧にしようとすると、

どうせ途中で固まってスマホ見始めるの知ってるから。


今日は、“十五分”っていう小さい単位のおかげで、

テスト前の木曜日がちょっとだけ“勝ち寄りの日”に変わった気がする。


まだ不安もあるし、

期末テストもこれからだけど、


とりあえず今日は、

手の甲の『15min』に助けられたってことで、


これで、よし。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ