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リナの冒険ノート2  作者: リナ


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75/93

リナ、月曜日の空気をならす

**20xx年7月13日(月曜日) 高校1年生**

**朝**


アラームの音より先に、

なんとなく体の軽さで目が覚めた。


(あれ、今日……だいぶマシかも)


布団の中で、いつものセルフ診断。


・足 → ちゃんと動く。小走りくらいはいけそう。

・お腹 → まだちょっとだけ重いけど、「います」って自己主張は弱め。

・頭 → 低空飛行から普通の高さくらいまで浮上。


(“元気デー”とまではいかないけど……“元気少なめ寄りなんとかデー”くらい?)


ベッドわきのメモ帳を開く。

週末もちゃんと埋まっている。


『7/11 おやすみデー(ソファと友達)』

『7/12 なんとかデー(宿題ゆるめ+白湯続行)』


空いている7/13の欄に書き足す。


『7/13 元気少なめデー(アレ終盤+月曜リハビリ)』


(“終盤”って言葉書くだけで、

 なんかトンネル出口見えてる感じする)


洗面所で顔を洗って、

化粧水→乳液→日焼け止め。


鏡の前で、3秒カウント。


一、二、三。


(クマ、ちょっといるけど

 先月の「世界終わりかけフェイス」に比べたら圧勝)


「……今日は、“静かにがんばれそう顔”」


声にして確認してから、

前髪のうねりを軽く直す。


手の甲に、今日のキーワードを書く。


『soft』


(週明け一発目から全力ダッシュすると

 絶対バテるから、

 “今日は全部ソフトめで”って意味のsoft)


髪は、低めのひとつ結び+少しだけ後れ毛。

月曜日から気合い入れすぎない範囲で、ちゃんと外に出る顔を作った。


---


**午前(ホームルーム〜国語)**


家を出ると、

空は薄曇りで、湿気だけはしっかり主張してきていた。


(梅雨、まだ粘るんだ……)


駅までの道で、

さっそく制服のスカート丈チェックのおじさん先生に遭遇する。


「裾、もう少しだけ下ろせるよね?」


「はーい」


(“もう少しだけ”って毎回言われるの、

 もはや季節イベントじゃない?)


電車の中では、

スマホじゃなくて文庫本『七月の空気』を開いた。

週末に半分くらいまで読んだところだ。


> 「七月の空気は、

>  何もしていなくても

>  じわじわと体力を奪っていく。

>  だから、

>  『今日は何もしなかった』じゃなくて、

>  『七月の空気に負けなかった』と数えたほうがいい。」


(分かる。

 “何もしてない日=サボった日”じゃなくて、

 “七月の湿気に耐えた日”ってカウントしたい)


ホームルームでは、

期末テストの範囲表が配られた。


「はい、文系科目はこっち、理系科目はこっちね〜」


周りから一斉にため息が漏れる。


「え、もう期末?」「早くない?」「てかまだ梅雨なんだけど」


(カレンダー的には順番通りなんだけど、

 体感としては“前のテストから二日後”くらいのスピードなんだよな)


国語の時間、

先生が黒板に太字で書いた。


『季節感=描写+行動+感情』


「ただ“暑い”とか“寒い”って書くだけじゃなくて、

 そのとき人がどんな行動をとって、

 どんな気持ちになるかセットで書けると、

 季節がちゃんと伝わります」


(『七月の空気』まんまそれやってたな……)


ノートの端っこに、こっそりメモする。


『→ “季節”をただの背景じゃなくて、気分とセットで書く』


(『二人の季節』にも使えるやつ、きた)


---


**昼休み**


お弁当タイム。

机をくっつけて、

今日もいつものメンバーで囲む。


「てかさ〜」と、ひとりがスカートの裾を引っ張りながら言った。


「日焼けしちゃダメで、

 スカートは短すぎても怒られて、

 でも体育は全力でやれって、

 要求多くない?」


「それな」


「日焼け止め塗っても汗で落ちるし。

 だったら最初から“ほどほどでOK”にしてほしい」


(“女子はこうあるべき”の条件、

 スマホの利用規約より細かくない?)


私は、お弁当のふたを開けながら、

ちょっとだけグレーな一言を混ぜてみる。


「まあでも、

 先生が“これが普通”って思ってるラインと

 うちらの“これくらいで普通じゃん”ってライン、

 だいぶズレてる気はする」


「確かに。なんか“昭和の普通”と“令和の普通”混ざってる感じ」


みんなが笑った。


(“先生側が全部悪い”って言い切らないくらいのグレーなら、

 ケンカにならずになんとなく本音言える気がする)


そこへ、

別の子がスマホをちらっと見て言った。


「そういえばさ、金曜に言ってた“世界の金曜日オンライン映画会”、

 グループLINEでアンケート来てたよ」


「あ、マジ? 何候補?」


「アニメ映画と、洋画の恋愛系と、

 海外ドラマ一話だけ見るコース」


(海外ドラマ……週末、

 『七月の空気』読む合間に

 クリスマス回ちょっとだけ見返したやつ思い出す)


「リナどれ派?」


「うーん……

 がっつり二時間コースはテスト前きついから、

 ドラマ一話とかがいいかな。

 “世界の金曜日”ライト参加みたいな」


「分かる。ライト参加大事」


アンケートの画面を開いて、

迷いながらも「海外ドラマ一話」にぽちっと入れた。


(全部盛り上がらなくても、

 “この日はここだけ”って決めたほうが

 テスト前でも罪悪感少ないかも)


---


**午後(体育〜放課後)**


午後の体育はバスケ。

よりによってだいぶ動くやつ。


(今日、終盤とはいえ“アレ後半”なんだよな……)


体育館に集まると、

先生が出欠をとりながら言った。


「体調きつい人は、最初の準備運動と

 パス練習だけ参加でもOKね。

 無理はしないこと」


(神……)


私は手を挙げて、

「今日は“元気少なめデー”なので、

 軽め参加でお願いします」とだけ伝えた。


「お、いいねその言い方。

 自分のコンディション分かってる感じで」


(“生理なんで”って毎回説明するのもしんどいし、

 体調メモの言葉そのまま使うの、わりと便利かも)


準備運動はちゃんとやって、

全力ダッシュの試合形式のところは見学寄りの参加。

その代わり、ボール拾いと

チームメイトへのパス出しをまめにやる。


(全部全力じゃなくて、

 “今日はここをちゃんとやる”って決めると、

 罪悪感より「まあよくやった」に近づく気がする)


体育のあと、

教室に戻る途中で、

同じクラスの子に声をかけられた。


「リナさ、さっき“元気少なめデー”って言ってたやつ、

 なんかいいね。

 私も今度使っていい?」


「全然いいよ。

 “おやすみデー”もあるからおすすめ」


「何それ、めっちゃ欲しい」


(こうやって、

 自分用に作った言葉がちょっとずつ外に広がるの、

 地味にうれしい)


放課後は、部活はお休みの日。

図書室に行こうかな、と思っていたけど、

(今日は“月曜リハビリ”って書いたしな……)と思い直して、

まっすぐ家に帰ることにした。


---


**夕方**


最寄り駅を出たところで、

またあのショッピングモールのポスターが目に入った。


『World Summer Fair

 世界の夏祭りを味わおう!』


(この週末、人めっちゃ多そう……

 でも、今はテスト前だし、

 “家バージョン世界の夏”でいいかな)


家に帰ると、

キッチンからお味噌汁と焼き魚のにおいがした。


「今日は鮭のホイル蒸しだよ〜」とお母さんの声。


「世界ごはんデーじゃないんだ?」


「今日は“日本の月曜日仕様ごはんデー”。

 世界要素は、レモンをちょっとだけ絞るあたりかな」


(名前のつけ方ゆるいけど、

 ちゃんと“月曜の胃袋に優しいやつ”になってるのすごい)


テーブルの上には、

鮭ときのこと野菜のホイル蒸し、

冷ややっこ、

きゅうりとわかめの酢の物。


「リナ、お腹のほうは?」


「うん、今日は“終盤元気少なめデー”って感じ」


「じゃあちょうどいいね。

 タンパク質と野菜多めで、

 あんまり油っこくないやつ」


(“体調デー”で会話が通じる家、

 冷静に考えてありがたいな)


ごはんのあと、

冷蔵庫からスイカを取り出す。

週末に切っておいたやつの残り。


一口サイズに切って、

プレーンヨーグルトの上に並べる。


(今日は“スイカ×ヨーグルト”でいこう)


スプーンで一口食べる。


(あ、意外と合う。

 ちゃんと夏なのに、

 ヨーグルトでちょっとだけ落ち着く感じ)


「それおいしい?」とさくらが覗き込む。


「おいしいよ。

 “夏のデザートだけど、テスト前っぽい落ち着きあります”って味」


「何それ。意味わかんないけど一口ちょうだい」


スプーンで小さくすくって渡すと、

さくらも「ん、おいし」と満足そうにうなずいた。


---


**夜**


お風呂でしっかり湯船に浸かって、

下腹を軽くさすりながら、

(今月もなんとか折り返しまで来たな)と息を吐く。


(世界のどこかでも、

 今同じこと考えてる人いるって思うと、

 ちょっとだけ“イベント仲間感”あるの不思議)


お風呂上がりの白湯を飲んで、

いつもの3分ストレッチ動画。


(白湯+3分ストレッチ、

 これで一週間継続達成だ……)


ストレッチが終わったところで、

手帳の端っこに小さく星マークを描く。


『白湯+3分ストレッチ 7日目』


(中期目標②、とりあえずクリア宣言でいいよね)


部屋に戻って、

机の“居場所スペース”に座る。


『二人の季節』のノートを開く。

昨日まで書いていた“冬祭りの夜”の続きに、

少しだけ「その日だけの疲れ方」を足してみる。


> 「彼女の足首は、

>  雪道を歩きすぎたせいで

>  じんわりと重かった。

>  でも、その重さは

>  『今日ちゃんとこの街を歩いた』証拠でもあった。」


(“疲れ=マイナス”じゃなくて、

 “ちゃんと歩いた証拠”って書き方、

 『七月の空気』からもらったやつだな)


ペンを置いて、ふと将来の自分を思い浮かべる。


(いつか本当に海外の冬の街歩いて、

 「今日ちゃんと歩いた重さ」感じたいな)


コート着て、

手袋して、

ホットドリンク持って、

知らない言語の看板に囲まれてる自分。


(でも多分そのときも、

 “今日の体調どうだったか”って

 ノートにメモしてる気がする)


今の自分にできるのは、

英語ノートに一行書くことくらい。


英語ノートを開いて、今日の一文。


『Today’s memo:


 On Monday, I moved slowly,

 but I still counted

 my small steps as a win.


 → 月曜日はゆっくりしか動けなかったけど、

   それでも小さい一歩をちゃんと「勝ち」として数えた。』


ペン先が止まらないうちに、

日記ノートも開く。



## 後書き


**日記**


**20xx年7月13日(月曜日) 高校1年生 田中里奈**


今日は、「月曜日の空気を、なるべく静かに鳴らしていった日」だった。


朝起きたら、お腹の重さが先週よりだいぶマシになっていて、

体調メモに「元気少なめデー(アレ終盤+月曜リハビリ)」って書いたら、

「あ、今日は“フルパワーじゃないけど動ける日”なんだな」って

自分で納得できた。

体育のときにそのまま「元気少なめデーなので軽め参加でお願いします」って先生に言ったら、普通に伝わったのも、ちょっと自信になった。

“生理なんで…”って毎回言うより、自分のコンディションの言葉で話すほうが、少しだけ楽かもしれない。


国語の授業で、先生が「季節感=描写+行動+感情」って言っていて、

『七月の空気』の中で、何もしてない日も「七月の湿気に負けなかった日」として数えてるのを思い出した。

自分の「なんとかデー」も、“ただだるかった日”じゃなくて、

“湿気と体調に負けなかった日”ってカウントしていいのかもしれない。

『二人の季節』の冬祭りシーンに、

「足の重さ=ちゃんと歩いた証拠」って一行足せたのは、今日いちばんのナイス応用だった。


お昼は、

友達と「日焼けするなって言われるのに外で部活しろって、条件多くない?」って話をして、

私は「先生の“普通”と、うちらの“普通”がズレてる気がする」って、グレー寄りの一言を混ぜられた。

“誰かを悪者にしない言い方”でモヤモヤを外に出すの、

前にノートに書いたやり方がちゃんと役に立った感じ。

放課後の「世界の金曜日オンライン映画会」のアンケートでも、

全部盛りじゃなくて「海外ドラマ一話だけ」のライト参加を選べたのは、テスト前の自分に優しい選択だったと思う。


夜ごはんは、

鮭のホイル蒸しと、きゅうりとわかめの酢の物。

“日本の月曜日仕様ごはんデー”ってお母さんが名付けてたけど、

実際、お腹にも気持ちにもほどよくて、

「こういうのでいいんだよ」の見本みたいなメニューだった。

デザートのスイカ+プレーンヨーグルト+ちょいハチミツも、

夏っぽさと落ち着きのバランスがちょうど良くて、

“元気少なめデー”にはぴったりだった。


中期目標は、

①『二人の季節』を夏の途中の章まで進めること、

② 白湯+3分ストレッチを一週間続けること、

この二つのままだけど、②は今日で一応一周クリア。

今日は、手帳に小さい星マークを描いておいた。

明日からは、②を「一週間続ける」じゃなくて

「“しんどすぎない日”に続ける」に少しだけルール変更して、

長く続けやすい形にしてみようと思う。


月曜日なのに、

全部ちゃんとやろうとしないで、

“soft”モードでゆっくりアクセル踏めたから、

Today’s winとしては十分。


まだテストも“アレ”も完全終了じゃないけど、


とりあえず今日は、

小さい一歩を「勝ち」として数えて、


これで、よし。


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