表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リナの冒険ノート2  作者: リナ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
48/93

リナ、距離感のメモリを半目盛りだけずらしてみる

**20xx年3月9日(月曜日) 高校1年生**

**朝**


電子音が鳴る少し前に、

カーテンの隙間の明るさでなんとなく目が覚めた。


(……先週より、だいぶマシ)


まぶたの重さは、

「鉄板」から「厚手のタオル」くらいには

ランクダウンしている感じ。


机の上のノートの横で、

スマホが震え始める。


「七時三分」


先週より、ちょっとだけ遅い。


布団の中で、

下腹あたりに手を当ててみる。


(先週の□ゾーンは、とりあえず一段落したっぽいな)


まだほんの少しだけ残ってるだるさを

自分で確認してから、

布団をめくる。


足を床に下ろしたときの重さは、

「鉛入り」から「水がちょっと多い」くらいに減っていた。


机の前に座って、

カレンダーを見る。


先週のマス目には□が並んでいて、

そのあとが二つ△。


今日の欄はまだ空白。


(今日は……△寄りの○と△の間、くらいだけど)


凡例にはない、

中途半端なコンディション。


(でも、

 “なんか全部しんどいウィーク”じゃないだけで、

 だいぶ景色違うな)


ボールペンで、

とりあえず△を一つ書き込む。


『○:身体軽め

 △:ふつう

 □:重め/集中しづらい日』


(“ふつう”ってラベル、

 けっこう雑だな……って

 最近やっと思えるようになってきたけど)


油性ペンを手に取って、

手の甲の『余白/波』を見る。


まだかすかに残っているインクの上に、

小さく一文字足す。


『余白/波/距』


(今日のテーマは、“距離”。

 人との距離、予定との距離、

 スマホとの距離)


(実験、その十。

 “人間関係の距離メモリを半目盛りだけずらしてみる”)


制服に袖を通しながら、

先週の日記の「明日以降の具体的な対策」を思い出す。


男子への軽い一言。

ご褒美リスト。

夜の三分呼吸タイマー。


(ぜんぶ一気にやろうとすると、

 たぶんまた□になるから)


今日は、人との距離のやつを

優先的に試す日にする、

と心の中で決める。


鏡の前に立つと、

目の下のクマはほぼ消えていて、

代わりに少しだけ

「春っぽい眠気」の影が浮かんでいた。


(見た目だけなら、

 “いつも通りの高一女子”カテゴリ、かな)


手の甲の『余白/波/距』を一度なぞって、

ノートを机の端に開きっぱなしにして

部屋を出る。


階段を降りる途中、

リビングから聞こえてくるニュースに

「新年度」「進級」「新生活」というワードが

やたら混じっている。


(“高校一年生の里奈”でいられる残りの時間、

 案外少ないんだよな)


その実感が、

少しだけ背筋を伸ばした。


---


**午前**


ホームルームで、

三者面談の日程が黒板に貼り出される。


第二希望で出した日付に、

赤い丸印。


(あ、もう確定なんだ)


教室のあちこちから、

「その日は親が〜」とか

「平日昼間ムリなんだけど」みたいな声。


担任の先生は、

プリントを持ちながら言う。


「基本的には

 今日貼った日程でいきます。


 どうしても難しい事情がある人は、

 早めに相談してください。


 …進路のことも、

 **それぞれのペースで**

 考えていきましょう」


(先週の「みんなそれぞれ」から、

 今日は「それぞれのペース」になってる)


言葉のニュアンスが

少しずつ変わっていくのを、

ここ数週間で何回か目撃している。


(アンケートに書いた一文が

 全部の原因じゃないにしても)


自分が投げた小石が、

水面のどこかで

ちょっとだけ波紋を作ったかもしれない、

という感覚。


プリントに名前を書きながら、

手の甲の『距』をちらっと見る。


(進路も人間関係も、

 “それぞれのペース”って言葉、

 けっこう便利かもしれない)


一時間目の数学。


例の「フォーム重視ゾーン」の授業も

いつの間にか話のネタになっていて、

男子の一人が

休み時間に話しかけてきた。


「なあ田中、

 この前の持久走さー、

 “フォーム重視”って

 ずるくね?」


(来た)


先週、

日記に書いた“軽い一言バージョン”。


(全部説明しなくていい。

 “一言ツッコミ”くらいでいい)


心臓が、

ドクンと一回だけ大きく跳ねる。


里奈は、

教科書を閉じながら

できるだけ肩の力を抜いた声で言った。


「いいよ?

 その代わり、

 月一で足に鉛入れてあげようか?」


「……それは遠慮しとく」


男子が、

一瞬ぽかんとしてから笑った。


周りで聞いていた

別の男子も

「それはコスパ悪すぎ」とか言って笑う。


(あ、いまの、ちゃんと“冗談枠”で着地したかも)


胸の奥に、

じんわり温かいものが広がる。


(“全部わかってもらおう”としないで、

 “ちょっとだけ伝える”でも案外足りるのかもしれない)


その後ろで、

中学のときの記憶が

一瞬だけよぎる。


男の子のノートを

「その図きれい」と褒めただけで、

女子達に

「え、好きなの?」と

しばらくからかわれたこと。


あのときは

何も返せなくて、

ただ笑ってごまかして、

そのあと家で泣いた。


(今なら、

 「図が好きなだけで

  人として好きかどうかは別枠です」くらいは

 言える……かもしれない)


“別枠”という言葉が、

今日のテーマの「距離」と

静かにリンクする。


---


**昼**


お昼休み。


今日はパンじゃなくてお弁当の日。


フタを開けると、

真ん中にどんと

卵焼きの山。


(いつもの形じゃない。

 なんか、ちょっと崩れたブロックみたいな)


箸で一つつまんで食べると、

案の定、

塩加減が少しだけ迷子になっていた。


「今日の卵焼き、

 迷子味だな……」


思わず小声でつぶやいたら、

向かいの子が笑った。


「迷子味って何」


「なんかさ、

 “甘いかしょっぱいか

  決めきれてない味”」


「それ、

 人間関係にもあるよね」


隣の子が、

唐揚げをつつきながら言う。


「友達かどうか

 はっきりラベル貼れないけど、

 嫌いでもないみたいな距離」


(あ、今日のテーマ来た)


「なんか最近さ、

 LINEグループの距離感むずくない?」


向かいの子が、

スマホの画面を見せてくる。


「土曜日、

 このメンバーで遊び行こうって話になったんだけど」


画面には、

クラスメイト数人の名前と

カラフルなスタンプ。


そこには、

佐伯くんのアイコンも混じっていた。


(あー……)


「行きたい気持ち五割、

 しんどい気持ち四割、

 “とりあえず断らないでおこう”一割。

 みたいな」


「あー、それは迷子味だね」


自分で言いながら、

ちょっと笑ってしまう。


「里奈は?」


「え?」


「呼ばれたら

 とりあえず行くタイプ?」


(呼ばれたら行かなきゃ、

 って思ってた時期もあったけど)


手の甲の『余白/波/距』が目に入る。


(今日は“距離メモリ半目盛りずらし実験の日”)


「……最近は、

 “駅まで一緒に行く距離”とか、

 “帰り道だけ一緒ゾーン”とか、

 間の選択肢を増やしたいなーとは思ってる」


「なにそれ新しい」


向かいの子が、

ちょっと目を丸くする。


「全日フル参加か

 完全不参加か、

 しかないとしんどいからさ。


 “今日は顔だけ出す距離”とか

 “今日はLINEだけ参加距離”とか」


「それ、

 『二人の季節』に出てきそう」


またその名前が出てきて、

胸の奥が少しだけくすぐったくなる。


(距離の話、

 やっぱり脚本の方にもちゃんと書いておこう)


机の下で、

スカート越しに太ももをつまんでみる。


(△の日のエネルギー量で

 フルコース参加すると、

 たぶん□寄りになる)


「……土曜日どうするか、

 今日帰ってから

 “距離メモリ表”作ってから決めるわ」


そう言ったら、

隣の子が笑った。


「さすが実験女子」


(実験女子、

 悪くないラベルかもしれない)


---


**午後**


放課後。


今日は部活がない日。


下駄箱のところで、

佐伯くんたちが

例のLINEグループの話をしていた。


「じゃあ土曜、駅前十時集合でよくね?」


「オレそのあと塾あるから

 夕方には抜けるわ」


「じゃあ途中抜けありで」


その会話が耳に入った瞬間、

胸の奥の何かが

小さく反応した。


(“途中抜けあり”、

 それ普通に言っていいやつなのか)


今まで自分の中では

なんとなく「失礼」カテゴリに入っていたやつ。


(“最初から最後まで一緒にいるのが礼儀”っていう

 謎ルール)


そのルールに、

今、

“それぞれのペース”というラベルが

上書きされそうになっている。


玄関を出たところで、

佐伯くんと目が合った。


「田中、土曜どうする?」


心臓がまた、

余計な仕事を始める。


(行きたい気持ち三割、

 話のネタとして観察したい気持ち二割、

 しんどさ四割、

 “断ったら距離開きそう”一割)


手の甲の『距』を

親指でそっと押す。


(今日は、“距離メモリを半目盛りだけずらす日”)


「……午前だけなら行けるかも。


 午後はちょっと、

 家でやることあるから」


言いながら、

自分でも驚いた。


(“途中抜け宣言”した)


佐伯くんは、

「あ、そうなんだ」と

普通の顔で頷いた。


「じゃあ午前のカラオケまでは一緒にいて、

 そのあと解散組ってことで」


「うん」


拍子抜けするほど、

あっさり受け入れられた。


(“全部一緒にいないと冷たい”っていうの、

 だいぶ私の妄想だったのかもしれない)


家に向かう途中の道。


いつもより少しだけ

足取りが軽いのを感じる。


(△の日に、

 フルコースじゃなくてハーフコースを選べたの、

 けっこう大きいかも)


家に着いて、

制服から部屋着に着替える。


『二月からのゆるい実験メモ』を

三月分に引き継いだページを開いて、

今日の欄に書き込む。


『・男子への“軽い一言”実験→◯

 ・土曜の予定、“午前だけ参加”で申告→◯(要観察)』


タイマーを二十五分にセットして、

ポモドーロ一セット目は数学。


そのあと五分の休憩で

ストレッチしながら、

ご褒美リストを思い出す。


(今日は“甘いもの”じゃなくて

 別ルートのご褒美にしよう)


ノートの別ページに

走り書きしてあったリスト。


『・あったかいお風呂に長めに入る

 ・ふかふかのタオルをおろす

 ・『二人の季節』用に

  お気に入りのペンだけ使う時間を作る』


(今日は三つ目かな)


ポモドーロ二セット目は、

『二人の季節』タイム。


さっきのお昼の会話を

そのまま素材にするようなシーンを書く。


> 「友達かどうか

>  はっきり決めきれない距離ってさ、

>  卵焼きの“迷子味”に似てるよね」


> 「甘いかしょっぱいか

>  どっちかにしてよって

>  言いたくなるけど、

>  迷子味だからこそ食べられる日もある」


> 「全部“親友枠”にしようとすると

>  胃もたれするから、

>  “駅まで一緒に歩く枠”とか

>  “たまにLINEする枠”とか、

>  距離のメモリもっと増やしたい」


書きながら、

自分の中の距離の物差しも

少しずつメモリが増えていく感じがする。


ページの端に進捗メモ。


『・“距離メモリ”会話 一ページ弱追加

 ・迷子味卵焼き=人間関係の中間距離メタファー』


タイマーが鳴ったあと、

お気に入りのペンを一本だけ選んで

そのまま五分だけ

台詞の推敲だけをする。


(“ペンをご褒美にする”って、

 思ってたよりも気分が上がるかもしれない)


---


**夜**


夕食の時間。


テーブルの上には、

今日の卵焼きと

同じ張本人が乗っている。


「今日の卵焼き、

 なんかいつもと違ったでしょ」


お母さんが苦笑いしながら言う。


「うん。

 迷子味だった」


「なにそれこわい」


「甘くしようとしてたら

 太一に呼ばれて、

 戻ってきたら

 どっちに寄せたかったか

 わかんなくなっちゃって」


(あ、ほんとに迷子だったんだ)


「でも、

 人間関係の話には

 めっちゃ使える例えだったから

 結果オーライ」


そう言ったら、

さくらが食いついた。


「人間関係の卵焼きってなに」


「“友達かどうか”迷子の距離のこと」


説明しながら、

さっきの昼休みの会話を

ざっくり要約する。


「全部“親友”か“知り合い”の二択じゃなくて、

 “駅まで一緒枠”とか

 “LINEだけ枠”とか、

 間の距離もっとあっていいよねって話」


お父さんが、

「それは大人にも必要だな」と笑った。


「仕事でも、

 “飲み会全部参加枠”と

 “帰りの駅だけ一緒枠”の

 中間があった方が

 みんな助かる」


お母さんも、

少し考えるような顔になる。


「たしかにね……


 “女子は特に”とか言いながら、

 親の方も

 “ちゃんと全部参加してほしい”って

 思いすぎてたかも」


(“ちゃんと全部参加”)


その言葉に、

胸のどこかが

かすかにチクっとする。


(たぶん、

 親も“距離メモリ”増やしたい側なんだろうな)


「三者面談もさ」


自分でも少し意外なタイミングで、

口が動いた。


「“人生の全ルート決める会議”って思うと

 重すぎるから、


 “今の距離感を確認する会”くらいに

 してくれると助かる」


「距離感?」


「うん。


 “今はこのくらい勉強のこと考えてる”とか、

 “このくらいはまだ迷子”とか。


 なんか、

 “将来全部決めてきなさい”って

 言われると、

 いきなり遠くまで走らされてる気分になるから」


お母さんは、

少しだけ目を細めた。


「……そうだね。


 お母さんも、

 “ちゃんと決めなさい”って言うとき、

 自分の不安を

 距離ゼロでぶつけちゃってたかも」


太一が、

「距離ゼロでぶつかると

 ダメージでかいよねー」とか言って、

場が少し柔らかくなる。


しろは、

テーブルの下で

誰かの足にあごを乗せていて、

その重さがじんわり伝わってきて

妙に安心する。


(この子との距離は、

 常にゼロでいいんだけどな)


夕食のあと、

食器を片付けてから

お風呂の準備をする。


今日はご褒美ルートとして、

「長めのお風呂」を選択。


湯船に浸かりながら、

呼吸だけに意識を向ける。


(これ、

 夜の三分タイマーの予行練習だな)


湯気の中で

ぼんやりしていると、

頭の中のざわざわが

少しずつ溶けていく感じがした。


布団に入ってから、

スマホを手に取る。


いつもの癖で

SNSを開きかけて、

手を引っ込める。


(三分呼吸タイマー、

 忘れないうちにやっとこ)


スマホのタイマーを三分にセットして、

画面を伏せたまま

枕の横に置く。


ゆっくり吸って、

ゆっくり吐いて。


(今日は△の日だから、

 “完璧に無SNS”じゃなくて、

 “時間を決めてちょっとだけ”くらいでいい)


三分が終わったあと、

結局五分だけ

友達の投稿を流し見して、

そこでちゃんとスマホを閉じた。


(十五分→五分。

 この差も、

 ちゃんとメモしとこう)


“普通そうな顔”で眠りに入っていく自分の内側で、

人との距離・予定との距離・スマホとの距離が

それぞれ半目盛りずつ

調整し直されているのを感じながら、

目を閉じた。


## 後書き


**日記**


**20xx年3月9日(月曜日) 高校1年生 田中里奈**


今日は、

“人との距離感のメモリを

 半目盛りだけずらしてみた日”だった。


---


**今日できたこと**


1. 先週ノートに書いた

 “男子への軽い一言バージョン”を

 実際に使えた。

 「フォーム重視ずるい」と言われたときに、

 「代わりに月一で足に鉛入れてあげようか?」と

 冗談っぽく返せて、

 雰囲気がちゃんと笑いで終わった。

 全部を説明しなくても、

 “一言だけ外に出す”でも

 案外十分なんだと実感できた。


2. 土曜日の遊びの誘いに対して、

 “フル参加か完全不参加か”の二択にせず、

 「午前だけ参加して、午後は帰る」と

 途中抜け前提で返事ができた。

 相手も普通に受け入れてくれて、

 「途中抜け=失礼」という

 自分の中の謎ルールを

 少しゆるめられた気がする。


3. 夜、

 布団に入ってから

 いきなりSNSを見るのではなく、

 まず三分の呼吸タイマーをセットしてから

 “五分だけ見る”にできた。

 昨日まで十五分くらい

 だらだら見ていたのが、

 時間で区切ることで

 少しだけコントロール感が戻ってきた。


---


**今日できなかったこと**


1. 昼休みのLINEグループの話題で、

 少ししんどくなってきたときに

 「ちょっと水筒にお茶入れてくる」などの

 中座の一言を先に出すことができなかった。

 結果的に、

 最後までその場にいて

 ちょっとエネルギーを使いすぎた感覚が残った。


2. 土曜日の予定を

 “午前だけ参加”にしたにもかかわらず、

 心の中では

 「それでも途中で空気悪くならないかな」とか

 「やっぱり最後までいた方がよかったかな」とか、

 何度もシミュレーションしてしまった。

 距離の選択自体はできたのに、

 罪悪感の方は

 まだうまく扱えていない。


3. 夜の三分呼吸タイマーのあと、

 “五分だけ”と決めていたSNSを

 ほんの少しだけオーバーしてしまった。

 タイマーが鳴った瞬間に

 完全に切るところまでは

 まだたどり着けていない。


---


**障害ハードルとその分析**


1. 中座の一言が出せなかったのは、

 「話の途中で離れる=失礼」という

 昔からの思い込みが

 まだ根強いせいだと思う。

 特に、

 相手が自分の悩みや不安を話しているときほど、

「最後まで聞かなきゃ」と

 “いい子モード”のスイッチが入ってしまう。

 その結果、

 自分のコンディションを後回しにして

 あとからドッと疲れるパターンが多い。


2. 土曜日の途中抜けに対する罪悪感は、

 「参加=好意/不参加=拒絶」と

 極端に捉えてしまう癖から来ている気がする。

 実際には、

 時間や体力の問題も含めて

 “そのときの条件で選んだ距離”なのに、

 人間関係そのものの価値と

 全部くっつけて考えてしまうのが

 自分のめんどくさいところ。


3. 三分+五分のタイマーのあとに

 もうちょっとだけ、と

 伸ばしてしまったのは、

 「区切り」を

 “完全な禁止ライン”として

 捉えてしまっているせいかもしれない。

 自分の中で

 “オーバーしたら即失敗”みたいな

 0か100かの評価をしがちなせいで、

 ちょっとのズレなら

 “まあ半歩進んだ”と

 受け止めるのが難しい。


---


**明日以降の具体的な対策(小さな実験)**


1. 人間関係の距離メモリを

 頭の中だけでやるのではなく、

 ノートに簡単な図として描いてみる。

 真ん中に自分の名前を書いて、

 「円一つ分=“駅まで一緒枠”」

 「円二つ分=“放課後たまに遊ぶ枠”」

 など、

 距離を目で見える形にしておく。

 土曜日のメンバーも

 この図に当てはめてみて、

 “今の距離としては

  このくらいでちょうどいい”と

 自分で確認する実験。


2. 中座の一言が出せるように、

 あらかじめ“テンプレ台詞”を

 いくつか用意しておく。

 例えば、

 「ちょっとお茶入れてくるね」

 「トイレ行ってくるー」

 「その話の続き、あとでまた聞かせて」

 など。

 これは、

 以前やった“グレーな一言”実験の

 人間関係バージョンとして

 応用してみたい。


3. 夜のSNSタイムに関しては、

 “完全にやめる”ではなく

 “二回目のアラームで確実に切る”という

 段階を挟む。

 最初の五分タイマーが鳴ったら

 「あと二分だけ」の

 二回目タイマーをセットして、

 それで確実に終了する実験。

 「一発でやめる」は

 今の私にはハードルが高いので、

 呼吸タイマーの延長として

 “ソフトランディング用アラーム”を

 試してみる。


---


**繰り返しの意識**


今日向き合ったのは、


・男子に対して

 “ちゃんと説明”ではなく

 “一言だけ外に出す”という距離の取り方


・遊びの誘いに

 フル参加/不参加の二択ではなく

 “途中抜け”という中間の距離を選ぶこと


・SNSや家族との会話に対しても、

 “ゼロか百か”ではなく

 “半目盛り”単位で

 距離を調整する感覚


みたいなテーマだった。


一年前の私だったら、

男子からの一言には

ただ笑ってごまかすだけで、

あとで一人でモヤモヤして終わっていたと思う。


遊びの誘いも、

フル参加してぐったりになるか、

断って勝手に自己嫌悪するかの

どちらかだったはず。


今日の私は、


・ノートにメモしておいた台詞を

 一つだけ現実に持ち込んでみたり、


・“午前だけ参加”という形で

 距離のメモリを

 半目盛り分だけずらしてみたり、


・三分呼吸+五分タイマーという

 “小さな区切り”を挟んでから

 SNSに触ってみたり、


少しずつだけど、

「全部かゼロか」の世界から

“中間のグラデーションがある世界”への移行を

練習できた気がする。


もちろんまだ、


・中座の一言を

 その場で自然に出すことはできなかったし、


・途中抜けを選んだあとも

 何度も頭の中でシミュレーションして

 疲れてしまったし、


・タイマーを

 きっちり守れるほど

 自分に甘くも厳しくもなれていない。


それでも、


「今日は△の日だから、

 半歩進めたら十分」


「“全部できない=失敗”じゃなくて、

 “どこが動いたか”を見る」


みたいな見方が

少しずつ染み込んできている。


身体の波と同じように、

人との距離感も

その日その日のコンディションで

変わっていいものなんだ、

という感覚を

これからも育てていきたい。


たぶんこれから先、

進級や受験やバイトで

関わる人の数も

距離の種類も

もっと増えていく。


そのたびに、


・手の甲の小さな『距』とか、

・ノートの円の図とか、

・『二人の季節』の

 距離メモリの台詞たちとか、


今まで積み重ねてきた

いろんな実験の道具を

少しずつ取り出しながら、


「まあ今日も、

 自分なりの距離で

 なんとかやってたよね」と

言える日を

増やしていけたらいい。


全部の距離を

完璧に測れるようにならなくても、

昨日よりほんの少しだけ

“自分のペース”を信じるのが遅くなったなら、

それだけでも

この実験は

ちゃんと前に進んでいるんじゃないかと、

今日は思えた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ