リナ、“大人っぽい”の重さにびびる
**20xx年1月27日(月曜日) 高校1年生**
**朝**
耳元で、
いつもの軽い電子音が鳴った。
「……七時五分」
目だけが
先に覚めて、
天井の白い模様をぼんやり追う。
(実験、その三。
“一個目のアラームは
とりあえず上半身を起こすやつ”)
昨日の夜、
自分でそう決めて、
スマホをベッドから
少し離れた棚の上に置いた。
手を伸ばしても
ギリギリ届かない距離。
(とりあえず…行け)
布団から腕を出すと、
空気の冷たさが
肌にまとわりついてくる。
心臓が
ちょっとだけ早く打つ。
えい、と
半身を起こして、
ベッドから足を下ろす。
床の冷たさが
足の裏からじわっと伝わってきて、
一気に眠気が引いた。
棚のスマホを取って、
アラームを止める。
(……ここで
布団に戻るかどうか問題)
ベッドを振り返った瞬間、
ふわふわの掛け布団が
信じられないくらい魅力的に見えた。
(でも“上半身を起こしたら◯”って
自分で決めたんだから、
今日はこれでいいことにする)
そのまま
ベッドから離れて、
机の前の椅子に座る。
体はまだ重いけど、
さっきより少しだけ
「起きてる側」に
寄っている感じがした。
『一月からのゆるい実験メモ』のノートを開いて、
今日の日付の横に書く。
『一個目アラーム→上半身起こすまで成功(◯)』
声に出して読むと、
ちょっとだけ
自分で自分をほめたくなった。
制服に着替えて、
タイツを引き上げる。
鏡に写った自分の姿が、
なんとなく
先週より“制服に慣れてきた人”っぽく見える。
スカートの丈を整えていると、
ドアの向こうから
お母さんの声。
「里奈ー、
今年終わったらもう二年生なんだから、
ちゃんと早起きの習慣つけなさいよー」
(“もう二年生”って、
まだ一月なんだけど)
心の中で突っ込みながらも、
「はーい」と返事をする。
(でも、
“もう二年生”って言葉、
ちょっとだけ
背中を押されてる感じもするんだよな)
**午前**
駅のホームは、
吐く息で白くにじんでいる。
電車に乗り込んで、
つり革につかまる。
ポケットの中のスマホが、
じわじわと意識の表面に浮かんでくる。
(今日は“ポモドーロもどき実験”)
昨日の日記に書いたとおり、
「四十五分集中+十五分チェック」を
とりあえず短くして、
『電車の中は
・十分集中(メモ+単語帳)
・五分スマホOK』
というルールにしてみた。
カバンから
小さなメモ帳と単語帳を出して、
腕時計の針を確認する。
(今から二駅分、
集中タイム)
メモ帳には、
すでにいくつか
「モヤモヤ候補」が並んでいる。
『・一年後の自分プリント提出
・“もう二年生なんだから”発言
・三年生の受験モード』
(あとで脚本の材料にするやつ)
書き足しているうちに、
少しずつ頭の中が
“観察モード”に切り替わっていく。
(自分のことなのに、
半分くらい他人事みたいに
メモできるの、
ちょっと便利かもしれない)
十分快が過ぎたところで、
スマホをポケットから出す。
いつもみたいに
無意識でアプリを開くんじゃなくて、
一度だけ
ロック画面をじっと見る。
未読の表示が
小さく並んでいる。
(十五分チェックじゃなくて、
今日は“五分堂々と見る”時間)
タイマーをセットして、
ニュースアプリを開く。
画面の端に
「受験シーズン」「合格」みたいな文字が
何度も出てきて、
胸の奥が少しざわつく。
(あと二年したら、
あれが自分たちの話になるのか)
心臓の鼓動が
すこしだけ早くなる。
(でも今は、とりあえず
今日のホームルームを乗り切るところから)
五分快のタイマーが鳴ったところで、
ひとまずスマホを閉じる。
(全部コントロールできてるわけじゃないけど、
“時間を決めて見る”ってだけで
ちょっと大人になった気がする)
**昼**
一時間目のホームルーム。
例の「一年後の自分へ」プリントの
下書きを持ってこいと言われて、
みんながざわざわしている。
先生が前に立って、
プリントの束を掲げる。
「はい、
だいたい書けてる人からでいいので、
前に持ってきてください。
今週中に封筒に入れて、
学校経由で出します」
教室のあちこちで
椅子が引かれる音。
前の席の佐伯くんも、
すっと立ち上がって
プリントを持って行った。
(“ポストの前で五分固まった”人)
そう思うと、
ちょっとだけ
親近感みたいなものが湧く。
先生はプリントを受け取りながら、
いつもの調子で言う。
「一年後には、
君たちも二年生。
今の三年生を見てたらわかると思うけど、
あっという間に“受験生”ですよ。
特に女子はね、
進学するのか
資格を取るのか、
就職するのか、
選択肢が多いんだから」
その「特に女子はね」が、
先週とは少し違う角度から
また皮膚の表面をこすってくる。
(“選択肢が多い”って言われるたびに、
何かを選び損ねたときの
責任まで一緒に乗ってくる感じがするの、
なんなんだろ)
ノートの端に、
また小さく書く。
『“選択肢が多い”=いいこと、
って決めつけ?
選び損ねたときの怖さは
誰のもの?』
喉の奥が
少しだけきゅっとなった。
でも、
先週よりは
呼吸の仕方を
自分で意識できている気がした。
**昼休み**
いつもの窓際のテーブル。
今日のお弁当の卵焼きは、
少ししょっぱめだった。
「もうさー」
向かいの子が、
スマホをいじりながら言う。
「三年の廊下、
雰囲気違いすぎない?」
「わかる。
なんか“受験生”ってだけで
急に大人に見えるよね」
「メイクとかしてなくても、
顔つきが違うっていうか」
「てかうちらもさ、
二年になったら
ちょっと大人っぽくした方がいいのかなー」
「髪染めたい」
「ピアス開けたい」
「怒られるやつ〜」
笑い声が弾ける。
箸を動かしながら、
その会話を聞いていたら、
隣の子がふと
こっちを見た。
「てかさ、
里奈って
なんかもうすでに
大人っぽくない?」
心臓が、
スプーンを落としそうなくらい
ドクンと跳ねた。
「え、どこが」
反射的に
否定しかけて、
(待って)と
自分で自分を止める。
(“ほめられたら即否定”じゃなくて、
グレーな一言とか
“ありがとう”を返すって
前から練習したかったやつじゃん)
喉の奥が乾いて、
指先が少し震える。
「なんかさ、
落ち着いてるっていうか。
うちらが“ヤバい〜”とか言ってるときも、
ちょっと一歩引いて見てる感じする」
「冷めてるってこと?」
別の子が茶化すみたいに言って、
一瞬空気が揺れる。
(ここで笑ってごまかすか、
ちゃんと何か言うか)
胸の真ん中が
きゅっとなって、
視界の端が少しにじんだ。
深呼吸をひとつ。
「……ありがと?」
自分でもびっくりするくらい
小さい声で、
でもはっきりとそう言った。
テーブルの上の空気が、
一瞬止まる。
(うわ、
言っちゃった。
“ありがと”って。
なんか調子乗ってるみたいに聞こえないかな)
心臓の音が
耳の近くで響く。
「いや、
いい意味でね」
さっき“大人っぽい”と言った子が、
慌てて付け足す。
「なんか、
ちゃんと考えてる感じがするっていうか。
里奈、
脚本とか書いてるからかな」
「わかる。
急に説教とかしないけど、
たまに出てくる一言が
大人みたいなときある」
「褒めてる?
それともディスってる?」
「褒めてる褒めてる」
笑いが戻ってくる。
胸の奥にあった緊張が、
少しだけほどけた。
(“大人っぽい”って言葉、
今まであんまり好きじゃなかったけど)
(今みたいに、
“ちゃんと考えてる”って意味で
言われるなら、
少しは受け取ってもいいのかもしれない)
窓の外を見ると、
渡り廊下を
三年生らしき先輩が
ゆっくり歩いていくところだった。
その後ろ姿が、
いつもより少し
遠く見えた。
**午後**
五時間目が終わって、
ホームルームの時間。
先生が
プリントの束を持って入ってくる。
「はいこれ。
来週の学年末テストの
範囲表と時間割」
教室全体から
「うわー」という声が上がった。
配られたプリントには、
科目と日程がぎっしり並んでいる。
「一年の総まとめですからね。
ここが終わったら、
君たちももう“新二年生”です」
先生がそう言った瞬間、
胸の中で何かが
小さくカチッと音を立てた気がした。
(“新二年生”。
言葉だけ聞くと、
急に大きくなった気がするけど)
プリントの端を
指でなぞりながら、
自分の爪が
ほんの少し伸びていることに気づく。
(中一のとき、
“先輩”って聞くだけで
別世界みたいだったのに)
(自分が“先輩側”に
回る日が来るって、
ちゃんと想像できてなかったな)
心臓の鼓動が
すこしだけ早くなる。
でも、
それは怖さだけじゃなくて、
少しのワクワクも混ざっていた。
**夕方**
放課後、
今日は部活はお休みで、
まっすぐ帰ってもよかった。
でも、
テスト範囲表を見ていたら
さすがに不安になって、
図書館に寄っていくことにした。
(“図書館で勉強してる人はすごい”って
自分で言ったんだから、
たまには自分も
そっち側になってみてもいいかもしれない)
駅前の市立図書館。
自動ドアが開くと、
いつもの静けさが迎えてくれる。
自習スペースには、
すでに何人か
三年生らしき人たちが座っていた。
教科書を広げている背中が、
どれも少し丸くて、
でも集中している空気だけは
ピンと張っている。
(“受験生”の空気って、
こういう感じなんだ)
自分も端の席に座って、
数学の問題集を開く。
スマホは
カバンの中に入れたまま、
外側のポケットに
付箋を貼る。
『四十五分集中+十五分スマホ
×二セット実験』
腕時計を見て、
深呼吸をひとつ。
(とりあえず一セットだけでも
やりきれたら上出来)
問題を解き始めると、
最初の十分くらいは
数字が頭の中で踊っているだけだった。
途中で、
隣のテーブルに座った三年生が
小さくため息をつく音が聞こえる。
その音が、
少し未来の自分の音みたいにも感じられて、
胸の奥がきゅっとなった。
(二年後、
私もここでため息つきながら
問題解いてるのかな)
そんなことを考えながらも、
手だけは
ペンを動かしていた。
四十五分のタイマーが鳴いたとき、
解けた問題数は
想像より少なかったけど、
“ゼロ”ではなかった。
スマホを取り出して、
十五分だけ
LINEとSNSを見る。
さっきの昼の写真や、
どうでもいい動画が並ぶタイムライン。
(“どうでもいい”って思いながら
見ちゃうの、
ちょっと大人っぽい自己矛盾な気もする)
二セット目に入ったところで、
集中力が一気に落ちてきて、
ペンの動きが止まる。
頭がぼんやりして、
問題の日本語すら
目に入ってこない。
(……今日は一セットで
いっぱいいっぱいかも)
無理に続けて
机に突っ伏すよりは、
ここで区切りをつけた方がいい気がして、
ノートの端に書く。
『四十五分×一セット→ギリ成功』
図書館を出るころには、
外はもう薄暗くなっていた。
(“図書館で勉強してる人すごい”って
自分も含めて言える日が、
ちょっとだけ増えたかもしれない)
**夜**
家に帰ると、
リビングに
テレビのニュースの音が流れていた。
「今年の受験シーズンは…」
アナウンサーの声が、
どこか遠い世界の話みたいに聞こえる。
お母さんが、
台所から顔を出した。
「おかえり。
図書館寄ってたの?」
「うん。
ちょっとだけ勉強してきた」
「おー、
なんか里奈、
最近“受験生予備軍”っぽくなってきたじゃん」
「予備軍て」
笑いながらも、
心臓が少しだけ誇らしく跳ねる。
「でも、
ほんともうすぐ二年生なんだからね。
太一やさくらの見本にも
ならないと」
また、“見本”。
(“お姉ちゃんだから”とか
“見本になって”って言われるたびに、
自分の失敗が
許されなくなる気がして
ちょっと息苦しくなるんだよな)
喉の奥に
何か言葉が引っかかる。
(でも、
全部飲み込むんじゃなくて、
グレーな一言くらいは
出してもいいって、
最近やっと思えてきたんだよね)
「見本っていうかさ」
言いながら、
自分でも少しびっくりする。
「“失敗してもなんとかなる大人”
みたいな感じになれたらいいかな」
お母さんが
手を止めてこっちを見る。
「なにそれ。
新しいタイプの見本?」
「完璧にやる見本は
無理だから。
途中でコケても
立て直してるところを見せる、
みたいな」
自分で言っていて、
ちょっとだけ照れくさくなる。
お父さんが
ソファから笑い声を上げた。
「それ、一番リアルで
いい見本じゃないか?」
「ほら、
やっぱりお父さんに似てる」
お母さんが苦笑しながら
野菜を切る音を再開する。
その音を聞きながら、
胸の奥が少しだけ
温かくなった。
部屋に戻って、
机に『二人の季節』のノートを広げる。
さっきノートの端に書いた
“選択肢が多い”のメモを
新しいページに移す。
> 「“選べるって幸せでしょ”って
> 言われ続けるとさ、
> 選ぶのが怖くなるんだよね。
> 選ばなかった道の分だけ、
> 怒られそうな気がしてさ」
書きながら、
自分の胸の真ん中あたりが
じわっと熱くなる。
(これ、
言わせたいのは
誰だろう)
頭の中で、
舞台の上のキャラクターたちが
ぼんやりと動き始める。
スマホを見ようとした手を止めて、
『一月からのゆるい実験メモ』を
もう一度開く。
今日の欄に書き足す。
・一個目アラームで上半身起こす→◯
・電車十分ブロック+図書館四十五分集中→△〜◯
・“大人っぽい”と言われて即否定せず「ありがとう」と返す→◯
ページを眺めていると、
先週までの自分より
少しだけ、
“途中経過”の書き込みが
増えているのがわかる。
電気を消して布団に入るとき、
窓の外から
遠くの電車の音が聞こえた。
一年後、
二年後、
三年後――。
未来の自分たちも、
きっとどこかで
同じ音を聞いている。
全部を想像するには
まだ少し早いけど、
今日の自分が
「まあ、
先週よりはちょっとマシ」と
思えていることだけは、
少しだけ誇ってもいいのかもしれない。
## 後書き
**日記**
**20xx年1月27日(月曜日) 高校1年生 田中里奈**
今日は、
“『大人っぽい』って言葉の重さと、
新二年生っていう音にびびりながら、
それでもちょっとだけ前に進んだ日”だった。
---
**今日できたこと**
1. 一個目のアラームを
ベッドから少し離れた棚に置く
“場所の実験”をして、
「上半身を起こして
ベッドから離れる」ところまでは
ちゃんと達成できた。
2. 電車と図書館で、
「時間を区切ってスマホを見る」
というポモドーロもどき実験をして、
・行きの電車→十分メモ&単語帳+五分スマホ
・図書館→四十五分集中+十五分スマホを一セット
までは崩さずに続けられた。
(二セット目は無理だったけど、それでもゼロよりは進歩)
3. 昼休みに
「里奈って大人っぽくない?」と言われたとき、
いつものように
すぐ「そんなことないよ」と否定せず、
一回深呼吸してから
小さい声で「ありがと」と返すことができた。
その結果、
空気が変に凍ることもなく、
「いい意味でね」と笑い話にできた。
---
**今日できなかったこと**
1. 一個目のアラームで
「すぐに立ち上がって活動スタート」までは行けず、
机に座ったあともしばらく
ぼーっとしていて、
朝の時間を有効に使えたとは言いづらい。
2. 学年末テストの範囲表を見たとき、
本当は先生に
「ここが不安です」とか
「この教科の勉強の仕方がわかりません」とか
聞きたかったけど、
結局何も言えないまま
プリントをカバンにしまってしまった。
3. 図書館での“二セット目”ポモドーロ実験は、
集中力が落ちてきた時点で
「今日はここまで」と
勝手に打ち切ってしまい、
もう少しだけ粘るための
小さい工夫(ストレッチするとか、
問題の種類を変えるとか)を
試さずに終わらせてしまった。
---
**障害とその分析**
1. 朝の「立ち上がるところまで」は、
眠気だけじゃなくて、
「早く動き始めたら
そのぶんちゃんと時間を使わなきゃいけない」
というプレッシャーも
影響している気がする。
起きてすぐ全力を出すのが怖くて、
わざとぼんやりすることで
自分を守っている感じがある。
2. 先生に質問できなかったのは、
「こんな基本的なこと聞いたら
“まだそんなこと?”って思われるかも」
という恥ずかしさと、
ホームルームの空気の中で
自分だけ前に出ていく勇気が
まだ足りなかったから。
それに、
“質問する=進路をちゃんと考えてますアピール”
みたいにも感じて、
そこまでの覚悟が持てなかった。
3. 図書館で二セット目に入れなかったのは、
単純な疲れもあるけど、
「一セットできた自分」を壊したくなくて
そのままいい感じで終わらせたい、
という欲張りも混ざっていたと思う。
一回成功したものを
続けて失敗するのが怖くて、
“一回だけの成功”にとどめたくなるクセが
まだ残っている。
---
**明日以降の具体的な対策(小さな実験)**
1. 朝の問題については、
「起きたらすぐ勉強」みたいな
ハードルの高い目標じゃなくて、
・一個目アラームで上半身を起こす(今日と同じ)
・起きてから最初の五分だけ、
“今日の予定を書き出すタイム”にする
という“観察モードから始める朝”に
シフトしてみる。
「ちゃんと動かなきゃ」じゃなく、
「とりあえず今日の自分を把握する」くらいの
軽いスタートにして、
プレッシャーを減らしたい。
2. 先生への質問については、
いきなり授業中に手を挙げるんじゃなくて、
・ノートの端に
「先生に聞きたいことメモ」を作る
・その中から一つだけ選んで、
放課後に友達と一緒に
職員室前まで行ってみる
という“ひとりで抱えない質問実験”をしてみたい。
一回で聞けなくても、
職員室の前まで行った距離感を
体に覚えさせるところから。
3. 図書館ポモドーロ二セット目問題については、
・二セット目に入る前に
椅子に座ったまま伸びをする
・二セット目は四十五分じゃなくて、
二十分集中+十分スマホの“ハーフセット”にする
という“サイズを小さくする実験”をしてみる。
「一セットと同じクオリティでやらなきゃ」じゃなくて、
「二セット目はおまけ」くらいの気持ちで
試してみたい。
---
**繰り返しの意識**
今日つまずいたことは、
たぶん来週もふつうに
顔を出してくると思う。
朝起きられないこと、
先生に質問できないこと、
二セット目の集中力が続かないこと。
どれも、
一回の実験で
劇的に解決するタイプじゃない。
でも、
・スマホの位置を動かしてみたり
・“誰か主語のほめ言葉”を
今度は自分への言葉として
受け取る練習をしてみたり
・モヤモヤをそのままにせず、
『二人の季節』の台詞にして
外に出す回数が増えてきたり
そういう“小さい応用”は、
確実に増えている。
「大人っぽいね」と言われたときに
前の私だったら、
たぶん反射的に
「全然だよ」と笑って終わらせていた。
でも今日は、
一拍置いてから
「ありがと」と言えた。
それだけで、
世界がちょっとだけ
違って見えた気がする。
新二年生、
受験生、
“女の子だから”と言われる未来。
これから先、
もっと重たい言葉や選択肢が
私の前に並ぶんだろうな、って
なんとなくわかる。
そのときに、
完璧な答えを
一発で選べる大人には
きっとなれない。
でも、
・モヤモヤをメモして
・台詞にして
・小さい実験を挟んでから諦める
そういう遠回りの仕方だけは、
今から少しずつ
体に染み込ませておきたい。
一年後の私が、
今日の日記を読んだらたぶんこう言う。
「めっちゃ遠回りしてるけど、
そのぶん風景も多く見てて
悪くないじゃん」って。
「どんな時でも笑顔で」
今日は、
完璧な“高校生の正解の笑顔”じゃなくて、
アラームにもスマホにも揺れながら、
「先週よりほんの少しだけ
諦めるタイミングが遅くなった自分」
に向けて、
ちょっとだけ
大人っぽく笑ってみた。




