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リナの冒険ノート2  作者: リナ


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リナ、計画のほころびと本音

**20xx年9月30日(月曜日) 高校1年生**

**朝**


中間テストまで、あと2週間。


先週立てた「勉強と創作のバランス計画」。


最初の3日は、うまくいった。

平日は「勉強1時間半+創作30分」。

土日は「勉強3時間+創作1時間」。


「私、やればできるじゃん」


そんな気分でノートにチェックマークをつけていた。


……4日目までは。


金曜日、部活が長引いて帰りが遅くなって、

土曜日は家の用事が入って、

日曜日は気が緩んで、スマホを触りすぎた。


今朝、計画表を見たら、

チェックがついてない日が3つ並んでいた。


「はあ……」


ため息をつきながらトーストをかじった。


お母さんがコーヒーを飲みながら、

ちらっと私の顔を見た。


「計画通りにいってない顔してるわね」


「……なんで分かるの」


「分かるわよ、母親だもの」


苦笑しそうになったけど、

正直に言った。


「ちょっと、サボっちゃった」


「ちょっと?」


「えっと……まあ、それなりに」


お母さんは怒らなかった。


「計画通りにいかない日があるのは、普通よ」


「でも……」


「大事なのは、“全部ダメだった”って思わないこと」


「…………」


「今日は、今日の分だけやればいいの」


その言葉は、

思っていたより優しくて、

思っていたより痛かった。


「全部ちゃんとできないと、意味ない」


どこかで、そう思い込んでいた。


「今日は、今日の分だけ」


そう呟いて、家を出た。


**午前**


学校に着いて、

廊下の掲示物を見上げる。


「中間テストまで あと14日」


赤いペンで書かれていた「14」に、

ちくっと胸が痛んだ。


ホームルームが始まる前、

咲希ちゃんがそっと近づいてきた。


「リナ、顔が“テストこわいモード”になってる」


「そんなモードある?」


「ある。前にも見た」


図星すぎて、笑ってしまった。


ちょっと迷ってから、

本当のことを打ち明けた。


「先週立てた計画、途中から崩れちゃってさ」


「ふむふむ」


「なんかもう、『全部ダメだ』って気がしてきて」


咲希ちゃんが、

机に腕を組みながら言った。


「じゃあさ、“計画の再テスト”しよ?」


「再テスト?」


「うん。最初から100点取ろうとするから、しんどいんだよ」


「……耳が痛い」


「今週は、“60点取れたら合格”ってことにしようよ」


「60点?」


「4日できたら合格。3日でも“追試で合格”」


何それ、って笑いそうになったけど、

心が少し軽くなった。


「いいな、それ」


「でしょ」


「じゃあ今週は、60点目標で」


「うん。私も一緒にやる」


そう言ってくれる人がいるだけで、

ちょっと頑張ろうって思える。


**昼**


お昼休み、

予定していた「勉強会+脚本読み会」の第1回。


今日は図書室の片隅の席を二人で確保した。


「じゃあまず、30分数学タイム」


「はい……一次関数さんと仲良くなれるよう、努力します」


冗談を言いながら、

お互い黙々と問題を解く。


分からないところがあったら、

「ここどうやってやるの?」

と見せ合いながら、

知っている方が説明する。


完璧な先生じゃないけど、

同じ目線だから、

分からない気持ちが分かる。


30分後、

タイマーが鳴った。


「ふー。じゃあ、次は英単語小テストね」


互いの単語帳をシャッフルして、

ランダムに出し合う。


「えーっと……‘confident’」


「自信のある!」


「正解」


小さな「できた」が、

少しずつ心を温めていく。


勉強の部が終わって、

いよいよ脚本タイム。


「はい、『二人の季節』、第一場と第二場の途中まで」


プリントした脚本を手渡すと、

咲希ちゃんが目を輝かせた。


「読むの久しぶりでドキドキする」


「朗読お願いしてもいい?」


「もちろん」


転校生の子の台詞を私が、

明るい子の台詞を咲希ちゃんが読んだ。


静かな図書室の片隅に、

二人の声だけが小さく響く。


読み終わったあと、

咲希ちゃんが、

真剣な顔になった。


「……好き」


「え」


「この空気、好き。

 “友達になりかけの、まだフワフワした距離感”って感じ」


「ほんと?」


「うん。でも、少しだけ気になったところもある」


「どこ?」


「転校生の子が、

 “みんな私を見ている気がする”って言うところ」


「ああ、あそこ」


「もっと、言い訳っぽくてもいいかも。

 『話しかけたいのに、話しかけられない自分を誤魔化してる感じ』」


その一言で、

頭の中で、

主人公の表情が変わった。


「……分かるかも」


「でしょ?」


「私、転校してないのに、なんか分かる」


そう言った咲希ちゃんの笑顔が、

少しだけ寂しそうに見えたのは、

気のせいだろうか。


**午後**


放課後、演劇部の基礎練。


発声、滑舌、簡単なエチュード。


文化祭が終わってからの部活は、

少しゆるくて、

でも、心地いい。


練習の合間に、

山口先輩が見学用の椅子に座っている私の隣に来た。


「どう、脚本の方は」


「少しずつですけど、進んでます」


「焦らなくていいからね」


「はい」


「中間テストもあるし」


そう言ったあと、

先輩がふっと笑った。


「でもさ」


「はい?」


「“勉強してるから、創作やっちゃダメ”ってわけでもないと思うよ」


「え」


「全部勉強だけにしたら、

 リナちゃん、きっと心がカラカラになるでしょ」


痛いところを突かれた。


「……はい」


「だから、ちゃんとやることやりつつ、

 “ちょっとだけ創作”も残しておくのがいいんじゃないかな」


「先生みたいですね」


「3年生だからね」


先輩の言葉に、

今朝のお母さんの言葉が重なった。


「今日は、今日の分だけ」


「全部じゃなくていい。

 ちょっとずつでも、続けられれば」


たぶん、

大人たちが言いたいことは、

みんな同じなんだと思った。


**夕方**


家に帰って、

今日は「今日はの分だけ」をやる日、と決めた。


まずは、数学30分。


そのあと、英語30分。


タイマーをセットして、

区切りをつける。


1時間の勉強が終わったところで、

ノートに「◎」じゃなくて「○」を書いた。


「今日は60点くらい」


それで良しとする。


そのあと、

脚本ノートを開いた。


咲希ちゃんに指摘されたシーンを書き直す。


> 「みんな、私を見てる気がする」

> そう言いながら、

> 本当は――

> “話しかけてほしいのは、自分の方なのに”。


心の中の本音を、

少しだけ言葉にしてあげる。


ペンを止めて、

深呼吸した。


「うん。さっきより好きかも」


時計を見ると、

創作に使ったのは40分。


今日は、

これで十分。


**夜**


夕食の時、

今日のことを話した。


「勉強会+脚本読み会してきた」


「え、もう応用編?」


お母さんが笑う。


「でもね、そのおかげで数学少し分かってきたし、

 脚本も良くなった気がする」


「いいじゃない」


お父さんが箸を置きながら言った。


「人に見せるのは、やっぱりいいことだな」


「うん。ちょっと怖いけど」


「怖いってことは、それだけ本気なんだよ」


太一が口を挟んだ。


「今度、僕にも読ませて」


「小学生には、ちょっと地味かもしれないけど」


「それでも読んでみたい!」


「じゃあ、中間テスト終わったらね」


約束を一つ、未来に置いた。


部屋に戻って、

今日の計画表に「○」をつける。


完璧じゃないけど、

前よりずっと、

自分に優しい印だ。


「今週は、60点合格コース」


そう呟いて、

布団にもぐり込んだ。



## 後書き


**日記**


**20xx年9月30日(月曜日) 高校1年生 田中里奈**


先週立てた「勉強と創作の両立計画」。


最初の何日かは順調だったのに、

途中で崩れてしまった。


前の私なら、きっとこう思っていた。


「もうダメだ」

「計画通りにできなかったから、全部失敗」


でも今日は、少し違った。


お母さんが言った。


「今日は、今日の分だけやればいい」


咲希ちゃんが言った。


「今週は60点取れたら合格ってことで」


山口先輩が言った。


「全部勉強だけだと、リナちゃんカラカラになるよ」


たくさんの言葉が、

「完璧主義の私」を、

少しずつほぐしてくれた。


今日は、


* 勉強会+脚本読み会を一緒にやれたこと。

* 数学も英語も、少しだけ前に進めたこと。

* 『二人の季節』の主人公の本音を、

 もう少しだけ掘り下げられたこと。


全部合わせて「60点」くらい。


でも、その60点が、

今の私にはちょうどいい気がする。


完璧じゃなくていい。


「全部できなかったから、0点」じゃなくて、

「できた分だけ、ちゃんと点数をつける」。


そういう考え方を、

少しずつ身につけていきたい。


どんな時でも笑顔で。


今日は、

「完璧じゃない自分」を、

ちょっとだけ許せた笑顔の日だった。


中間テストまで、あと2週間。


勉強も、創作も、

60点合格を積み重ねていきたい。




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