335話 アルカディアの右と左
スロイブが立ち上がる。そうすると、二つの陰が左右に立っている事に氣がついた。
いつの間に現れたのか!?
この重く感じる戦闘能力は悪魔だね。レイゾック一族は冥界と取引をしている様だ。
「我がレイゾックが奴隷都市の後ろ盾でいれるのは、冥界と交わした契約のおかげです。
軍を持つよりはるかに強く、効率が良いですよ。
貴女は果たして勝てますか? クヒッヒヒヒヒ」
もう勝った氣でいるのかい。
氣色悪い笑い方するない。
それだけ悪魔達が持つ力。言い換えれば自戦力に対して、絶対の自信があるんだろうがね。
「俺個人の戦闘能力とあんたの悪魔達。どちらの戦力が上か比べてみるかい!?
俺にやられても泣きなさんなよ!!」
剣を抜いた直後、左右を見た。アーガシア達も同様に戦闘態勢の形をとっている。
スロイブの周りの空間から、悪魔がポコポコ出てきており、
俺達をとっくに囲んでいたからである。
とはいえ、たかが中級悪魔程度が何匹集まろうが負ける氣がしない。
さっき「俺個人の戦闘能力」と言ったけど。
【神越えの七帝】が揃った状態ならば、こっちは誰が相手でも負けはしないのである。
▽
〈※:サタナ視点〉
僕はミラルカの代理でエイブリン。五大奴隷都市の一つに来ている。
今、目の前で大量の悪魔が都市を覆いつくす。
そんな光景が広がっているのである。
「術者〈※:召喚者〉はこの都市内にはいない様だ。悪魔達から出る魔力を辿ると……。
出所は僕が居たウィルバーか!? スロイブとかいう、あの【人間種】が術者で間違いないだろう」
そうなると、やつを殺害しない限り、悪魔が無限に増殖する事になる。
聡いマスターだからそんな事は既に氣がついてるだろう。
僕は悪魔の数を減らす事に力を尽くそう。
この数を召喚するにはたくさんの魔力がいるため、全滅させれば次が召喚されるまでの時間を稼ぐ事ができる。
休憩時間が作れるのである。
この事を〈念話〉でオウ次郎、アンダルシア、コクウにも伝えようとする。が、マスターからすでに同じ連絡をもらったらしい。
「「「兄貴/我が君/マムと同じ考えですね。サタナさんのおかげで確信が持てました」」」
オウ次郎、アンダルシア、コクウの三人からそんな風に返事を貰った。
僕より先に結論を出して皆に連絡を出しているとは。
さすが我がマスターである。
僕はトウ・ダーラ軍を指揮しながら、この都市内に居る悪魔共を全滅させる。
オウ次郎達も、時間がかかったが悪魔を全滅させたようだ。
マスターに報告をする〈念話〉の内容を聞いてわかった。
アベルの後継者が持つ、『炎の魔剣』はアベルの意志を持つため。
その所有者はアベルの動きと思考。つまり戦闘能力を発揮する事が可能である。
獣〇槍が伝承者へ歴代の伝承者の足運び、動きなどを囁くのと一緒だ。
例えだけど、こんな感じではないだろうか?
マスターの受け売りだが。
「なかなかの猛者がいるなぁ!? 悪魔を倒した地上の勇者はどいつだ? 顔を見せてみろ」
「ほぅ。この戦闘能力は上級悪魔か!?」
何もない空間に亀裂が入りそこからケダモノの手が出てくる。
手は亀裂をこじ開け広げると、本体がノソッと出現した。
面識はない。
だが聞いた事があるぞ。
冥界王の側近に違いない。双頭の犬オルトロスが現れる。
「我は冥界王アルカディア様の忠実なる僕、ドロワットと言う。
アルカディア様と、レイゾック家が交わす契約により参上した。悪魔を倒した勇者は何処にいる?」
「大きいな。僕の『鎧』。それにアーガシア達の『本性』の様に50メートルある」僕のつぶやきが聞こえた様だ。
やつは、こちらに目を向け、その後。驚いた。
「まっ、魔王イフマイータッ!?『死の眠り』から目覚めていたのか!? そっ、それでは……」
「帰ったらお前の主に必ず伝えるんだ。
僕が蘇ったと言う事実は『イブナスを倒せる勇者が地上に現れた』と言う事だ。
僕は『近いうちに、マスターと共に、
冥界に下りるつもりだから待っていろ』とも伝えろ」
冥界に参上する。
この発言を聞いて、こいつは嬉しそうな顔で笑った。
「お伝えしますとも。
『イブナスの間違った願いを止める』。それこそが我が主アルカディア様の悲願なれば!!
それとは別の件ですが。
我も子供の使いで、地上まで出て来てはおらんのです。
まことに恐縮ですが、イフマイータ様と戦わせて頂いてもよろしいでしょうか?」
あぁ……『強者ほど強い相手と戦う欲求が強くなる』だったか……?
バルトエードは何で面倒なルールをつけたのか?
理解に苦しむよ。
まぁ僕も戦いは全然嫌いじゃないんだ。
僕はドロワットの目を見据えたまま『鎧』を着込んでいく。
「我がマスター。アベル・ジンジャーアップル様と過ごす事で身につけた、さらなる力。存分に味わうといい!!」
準備は整った。僕は奥の手である『鎧』を装着し、50メートルの巨人に変化している。
ロボットのパイロットと言いたい氣分だ。
実際は鎧と一体化しているため、正確に言うと光のくにの宇宙人である。
ドリア〇なら相手を見た後、「サイズ的には私とタメを張るな」そう言うところか。
この後ドロワットはけたぐり、噛みつき、ひっかき。
犬らしい攻撃を何度もするが、僕の鎧には傷一つつけられなかった。
「イフマイータの強さではない。我が主より聞いていた実力の遥か上をいってる!?…すっ、素晴らしい……」
これが、こいつの最期の言葉になった。
僕が放った正拳突きは双頭犬の眉間をとらえ、ドロワットは宙を舞い地面に叩きつけられる。氣絶したまま動かなくなったのだ。
僕がいる都市にドロワットが現れたなら、残り四都市のどこかに、
ゴーシュがいるって事か?
この二匹はアルカディアの側近で、悪魔ではありません。サタナは魔力量で上級悪魔と判別しました。
正確に言うと『上級悪魔なみの魔力量』に、なります。
サタナとアルカディアはお互いをよく知る、旧知の仲です。
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