336話 黒いスライム〈ジョリオン・ニョジィ・トランベリー〉
渾身の力を込め、敵の眉間目掛けて一撃を振るう。
これで終わってくれ。そう願いを込めながら叩き込んだ斬撃は、やつに撤退を選ばせた様だ。
「たかが人間にやられてっ……逃げ帰る羽目になるとはっ……!?
その顔と魂の形! 貴様を殺すまでは絶対忘れぬぞ!!」
ゴーシュと名乗った巨大な魔物がそう吐き捨てる。
残念だけど私は元人間種と言うだけで、今は【人間種】ではないんだよ。人間の魂を持ってはいるが体は魔物なのだ。
赤髪の少女が話しかけてくる。
フレデリックに現れた悪魔を討伐するために来た。討伐軍の指揮官と聞いて協力したんだが。
オークから人間種に〈変身〉するのでびっくりしたよ。
「僕達と一緒に、悪魔を討伐してくれてありがとうございます。何かお礼がしたいので我が国に来てはいただけませんか?」
オウ次郎と名乗るトウ・ダーラ国軍の指揮官は丁寧な口調だった。
今は戦闘の必要性がないからかオークの姿に戻っている。
露骨にがっかりしてる兵士がチラホラいるところを見ると、人氣が高いのだろう。
人柄の良さがわかるな。
私は誘いを断るとまた旅に出る事にする。この身は重大な使命を帯びているからである。
私の名はジョリオン・N・トランベリー。『漆黒の旅人』と呼ばれる【七勇者】の一人だ。
『はじまりの勇者』が魔王を務めるという【ななつのくに】。
その盟主国を目指し旅を続けているのだが、一向に辿りつかない。
これは私が方向音痴ではなく【魔神】のせいである。
やつは私を捕らえられないため、代わりに他の【七勇者】と合流させない呪いを掛けたのだ。
ジャミングがなんだ。
勇者たる者その程度の妨害に負けたりはしないぞ。
私は必ずアベルを見つけてみせるからな。
〈戦闘能力感知〉を頼りに、アベルがいるかもしれない方角に足を向け歩き出す。
▽
〈※:アベル視点〉
悪魔の残骸は一定時間たつと消滅する。
この都市に充満していた悪魔の群れは、今では一匹も残っていなかった。
俺達が全部退治したからである。
「レイゾック一族の繁栄を支えた悪魔とやらは脆いね。俺達【神越えの七帝】なら本氣を出さずに倒せちまうぜ」
俺は振り向くとスロウブに向け言い放った。
やつは悔しい様子で顔がゆでだこみたいに真っ赤になっていた。
と言うか七人もいらないよね。
こいつら相手なら一人で十分だぜ。
そういう氣分である。
「アベル君あいつ弱い! 私一人で勝てるから皆は休んでていい」
「シャーリー駄目です。そう言う事はどんなに『事実で本当でも』言っちゃいけません」
ドヤ顔のシャーリーに不味いと思ったのかレムのやつが注意する。
レムも失礼な事を言ってるけど。
頭の中で二代目JOJ〇が「さ、さすが育ての親!!」と相槌したのは内緒だ。
敵がどんなに弱くても侮るのはいけないぜ。油断につながり自分の足を掬われる結果になるからである。
〇空さも「これ以上あいつを追い詰めるな!! 何をするかわからんぞ!!!」。と、◯飯ちゃんに注意した事があるから間違いないのだ!!
「そうにゃ。ニャアは左手だけで戦ってやろうかにゃ? いい勝負になるかもにゃー」
「汝は弱すぎる。だから朕は、戦闘用ならぬ試合用のパワーで戦ってやる!」
ニャハルと妖六郎もやめなさい。
悪ふざけしてやられたら恥ずかしくなるのは自分なんだぞ!
注意すると聞き入れてくれたみたいだ。さすがに、まずいと思ったかな?
「「真面目に、真面目に」」とか言ってる。
本当にわかってるんだろうね?
その時。スロイブの横の空間が音を立てて裂けたかと思うと、その亀裂をケダモノの手が広げていく。
空間に空いた穴からは三つ首の大型犬が現れた。
地獄の番犬と呼ばれるケルベロスが登場する。
だが体は傷まみれであり〈回復〉を掛けてはいるが全快とはいかないみたいだ。
オウにやられて、慌てて逃げ帰ってきたんだろう。
さすが俺の弟である。
ケルベロスが何やら慌てた様子を見せている。何だというんだい?
「ドロワットの反応がない!? ま、まさかっやられたというのか? 〈念話〉ならどうだ!? 1、2、3、4、5秒経過。おのれ~~~~!! お前の仇はこのゴ-シュがとってやる〜〜〜〜!!!」
ゴーシュの言う内容によると、ボスみたいなやつがもう一人いるみたいだけど、やられている様子だ。
そうしてる内にサタナから〈念話〉がきた。
おかげで全体像を把握する事が出来たよ。
目の前のケルベロスはやられたオルトロス含め冥界王の側近かい。
そうすると俺の仲間がドロワットを倒した事で冥界王にケンカを売った事になるのか。
望むところさ!!
相手がたとえ誰であれ。俺と仲間に手を出すなら容赦はしない。【ななつのくに】に手を出して後悔するのは向こうなのだ。
俺は目の前のゴーシュ。その後ろに君臨してる冥界王アルカディアに向けて宣戦布告する。
「覚悟はいいかい冥界の悪魔共。あんたの相手はこの俺だ!」
胸の炎が感情の高ぶりで大きく揺らめいた。
ドロワットは氣絶だけですみましたが。ゴーシュはアベルの手で、トラウマ級の敗北を植え付けられてしまいます。
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