334話 「楽園」を賭けた戦い
〈※:スロイブ視点〉
「馬鹿野郎っっ!!!! よりによってアベルを奴隷にしただぁ!?」
これだから無能に現場を任せるのは嫌なんです。
聞くところによると珍しい、『白い小妖精』を攫ったと言う事ですが。
そいつがアベルで間違いないでしょう。
遠く離れた地にある【ななつのくに】の盟主国トウ・ダーラ。
魔王タイセイは本名をソンクウと言う。
しかし、もう一つ名前を持っているのだ。
アベル、そう。かの魔王は『はじまりの勇者アベル』の、生まれ変わりを公言しているのだ。そんな噂を聞いている。
勇者の仲間が全て集い、彼らからアベルと呼ばれている事も聞いていた。
実を言うと、どうでもいい話だったりする。
アベルは奴隷商を嫌っているが、決してなくそうとはしない。
正義の味方ではないからだ。
『敵』が自分と仲間の生活。命を脅かすなら一切の容赦はしない。が、そのルールが守られている内は、こちらに干渉はしない。
奴隷ビジネスだって商売の一つと割り切っている事だろう。嫌いではあるだろうがな。
要するに私はアベルに手出しする氣がなく。
アベルは、楽しい生活の邪魔をされなければ、わざわざ攻撃してこない性格と言う訳である。
「アベルがいるウィルバーに向かいます。お前達も精一杯謝るのですよ!!」
「「はっ!!」」
私は護衛を連れて、アベル出現の地へ向かった。
▽
〈※:アベル視点〉
「ぬし様の言う通り。各建物に捕まっとる奴隷達の開放を終えたのじゃ」
「アーガシアありがとう。皆も急に呼び出してすまなかったね」
俺はアーガシアにお礼を言う。本当は五大奴隷都に派遣したはずなんだけど。
【神越えの七帝】は、俺がいる場所に何故か集結した。ホントどう言う事だってばよ。
ミラルカなどは、めったに見せぬ好戦的な感情を見せている。頭にきている様子だぜ。
「僕達の長に手を出したんだから滅亡は当前だよね。魂すら残さないよぅ」
「マスターに手を出す愚か者は、゛イフマイータの血族゛にも喧嘩を売ったのだとわからせてあげよう。
マスターには魔王一家がついている。この事実を知らなかったでは済まさないからな!!」
サタナのやつが魔王状態の俺と同じセリフを言ってる。
普段の優しさなど微塵も感じない。
俺と対峙した『魔王イフマイータ』がそこにいた。
残る【七帝】も怒りに満ちている様だ。
「僕は、ペリルに奴隷都市に連れてこられ、〈奴隷紋〉を付けられましたから。
こんな場所無くなって欲しいです」
「私もレムと同じ意見。親代わりのレムを奴隷にした場所なんか嫌い」
「奴隷都市など行く機会がなかったから、朕はよくわからんな。
でも姉者へ〈奴隷紋〉をつけるのは許容できないぞ。ペリルが利用した場所など、無くしてかまわない」
「ニャアはマスターが第一だから。〈奴隷紋〉を付けたなんて許さないにゃー」
上からレム、シャーリー、妖六郎、ニャハルがそれぞれの意見を言った。
ふぅーむ。決は『いらない』でとれた様だぜ。
一時的でも奴隷にされたから。
俺としても相手にケジメを取らさなければならないし。
心情的にはいらないかなぁ?
何と満場一致〈※:その場にいる全員の意見が一つになる事。全員賛成〉だ!
俺は肩越しに後ろを見る。
そうして足元で土下座をする男。スロイブ・レイゾックに声を掛けてやる。
「そういう訳だからさ。五大奴隷都市と、レイゾック国の滅亡がたった今、決定したよ。
でも仕方がないよね。俺はあんた達を三度許したけど、これで四度目になるんだから」
俺を攫った奴隷商は首だけになっており、
スロイブから「こいつが勝手にした事」だと説明されている。
だが……それが、どうしたと言うんだろう……?
誰がやろうがこちらが掲げる『俺達に手を出したらただじゃ済まさない』に、抵触しているのだ。
スロイブがやろうが誰がしようが。そんな事は俺からすれば関係ない事柄である。
「軍の指揮を任せるはずの【七帝】が集結しちゃったから。
アンダルシア、コクウ、オウ〈※:描写は省きましたが、救出されました〉、サタナの四人は各都市に行き軍の指揮をするんだ。〈召喚転移〉で送るからね。
俺の後継者の実力! 思い切り敵へ見せつけてきなよ!!」
「「「「はっ!!!!!」」」」
本来ならミラルカが後継者の一人だけど、サタナを代わりに送った。
「お爺様。僕ソンクーが心配なの。お願いだから代わって~~」
祖父に向かって可愛らしくお願いをするミラルカ。彼女にサタナのやつは大きく頷く。いってらっしゃい。
慈悲をもらえぬとわかった小悪党のする行動は一個しかなかった。
土下座状態のスロイブは、
「くそ、くそ、くそっ。何故こうなった!? 奴隷商の馬鹿が、アベルに手出しさえしなければ~。
私の『楽園』がぁあ~~っ!!!!」
などと、ブツブツ独り言をずっと言ってるのだ。
氣持ち悪い。
だが決断したらしい。
「アベルを殺してしまえばいい! そうだ!!
そうすれば私の『楽園』は絶対なくなりはしないのだぁ~~!!」
ケシ太郎が反省する時と違ってそうなるよね。ぶっ飛ばしたくなる様な小悪党っぷりだぜ!
「あんたは愚かな選択をしたと言っておくぜ。
アンダルシアが用意した処刑が待ってるんで、どのみち死罪は確定してるけど」
長飛〇なら「わしとやった奴は皆こう言うぜ。やめときゃよかったってなぁ!!」そう吐き出すところだい。
奴隷都市の存続を賭けてアベル対スロイブの戦いがはじまる。
仏様でも許容できるのは3度までです。
アベルも3回我慢しましたが、4度目に滅ぼす氣になりました。
「こいつは注意するだけ無駄だった」今は、そう感じています。
なお、アベルは諸外国に向けて『トウ・ダーラに手を出せばこうなるぞ』とメッセージを送ります。
レイゾック王家はただ滅ぶだけでなく、悲惨な結末を向かえるのです。
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