表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アンテイムド・モンキーズ  作者: jonathan
南の国『オキナ』
57/59

再誕の超装甲

 夜、騎士団宿舎の自室にて、アリゼは不意に目を覚ました。いつも完璧な生活リズムを刻んでいるアリゼとしては、珍しいことだ。体に異変はない……精神的なものか。


「……ふむ、私としたことが……」


 何かを確認するように、グッと拳を握り締める。必要以上に力が入り、ミシミシと拳が音を立てていた。


「これは、興奮だろうか? あの無礼な男……ユースケとかいったか……」


 アリゼと渡り合える者など、騎士団の中にすらいない。久しぶりに実力が発揮できそうとあって、知らずのうちに気分が高まっていたようだ。


「そんなに私は好戦的であっただろうか……?」


 呟きながら、窓の外を眺める。澄み切った空に、数多の星々が瞬いており、その一つにとある人物の顔が浮かぶ。


「……血は争えない……ということか……」


 フッ、と笑い、明日に備えて眠れるように努めた。



 同じ頃、雄介も窓辺に腰掛け、翌日の決闘のこと、そしてアリゼのことを考えていた。月明かりが心地良く室内を照らし出しており、いつもより感傷的な気分になっているようだ。


「……あの瞳……」


 アリゼの瞳を見た時、今まで感じたことのないような気持ちになり、どうにも気になってしまっていた。

 

「すげえ澄んでんのになー……」


 生まれ持ったものなのか、それとも過去に何かがあったのか、それは雄介にはわからない。しかし、一つだけ確かなことがある。


「笑わせてみてえ……無表情なやつほど笑ったら可愛いの法則炸裂だぜきっと……」


 それも叶うことはないのだろう。明日決着を着け、それで二人の関係は終わり。

 なんとも虚しいような気分になりながら、雄介はベッドに潜った。



 翌日。


「んじゃ行ってくるわ」

「うむ」


 ゴンザレスにそう言い残し、雄介は部屋を出た。いつもの青いシャツに黒いズボン、ポケットにはとっておきの秘策を忍ばせてある。抜かりはない。


「ちょっと」

「ん?」


 階段を下り、宿屋の出口に向かおうとしていると、アリッサが後ろから声をかけてきた。赤いタンクトップと黒いサルエルパンツのようなものを履いている。宿屋内とあって、ラフな服装だ。


「どした? ソフィアは?」

「ソフィアは……まだ寝てるわ」

「ふーん。って、もう十一時になるんだが……」


 相変わらずソフィアは寝坊気味のようだ。真っ先にソフィアのことを聞いたためか、アリッサの表情が少し不機嫌そうなものに変わったが、雄介はそれを見逃した。

 カツカツと階段を下り、雄介の傍までやって来たアリッサは、雄介の耳を引っ張る。


「……何してんだよ?」


 思ったより痛みはないが、からかわれていると思ったのか、眉を顰めてアリッサに問う雄介。

 そのアリッサは、先ほどまでとは打って変わって、雄介に微笑みながら言う。


「何よ。気合入れてあげよっかなって思ったのに」

「気合の入れ方がおかしいんだよ!」

「ふぇ!? なにふんのよ!」


 アリッサの両頬を掴み、グニグニと引っ張り回す。じゃれあってるようにしか見えないため、周囲の視線は冷たかった。


「ぷはぁ! 何すんのよ! せっかくの人の好意をアダで返すなんて!」

「あれに好意あったのか……? だとしたら完全に間違ってるが」


 雄介の手を振り払ったアリッサは、いつものツンツンした態度で、呆れ顔の雄介に尋ねた。


「じゃあどうやってやればいいのよ!?」

「いや別に気合とか必要ないし」

「……っ! バカ! もう知らないんだからね!」


 顔を真っ赤にして、アリッサはどこかに行ってしまった。


「典型的なツンデレ台詞吐いていきやがって……」


 気を取り直し、雄介は宿屋の出口に向かう。その途中、周囲の人間に聞こえないよう、ボソリと呟いた。


「サンキュ。行ってくるわ」






 騎士団の訓練場まで足を運んだ雄介は、新米と思わしきビクビクした騎士に案内され、決闘の舞台に立つ。舞台とは言っても、綺麗に整備された広いグラウンドのような所だ。

 

 大勢の騎士達に囲まれる中、雄介はアリゼと向き合っていた。

「へえー」

 好奇、緊張、様々な視線が向けられる中で、普段と変わらない様子で口を開く。


「思ったよりギャラリーがいるんだな。昨日はよく眠れたかい? お嬢ちゃん」

「……ふん」

「おっと、手厳しい」


 雄介がどれだけ話しかけても、全て軽くあしらわれてしまう。どうやらアリゼの方は既に戦闘モードに入っているようなので、雄介も口を噤んでその時を待った。

 

 正午になり、剣の柄に手をかけたアリゼが勝負について話し出す。


「勝負は時間無制限。相手に降伏させるか、戦闘不能に陥らせた者の勝利だ。武器などの使用は自由とする」

「おう」

「準備はいいか? 何もなければすぐに開始する」


 今にも飛びかかって来そうなアリゼに対し、雄介は周りをキョロキョロと眺めたり、何の緊張感も感じられない。声をかけられた時も、雄介はニコリと笑い、答えた。


「いいけどさ……お嬢ちゃん、待ちきれねえって感じだな。楽しみにしてもらえて光栄ですよ」

「……抜かせ! 勝負開始だ!」


 そう宣言すると同時に切りかかってくるアリゼ。対して、雄介は構えることもなく、地面を見つめながら呟く。


「綺麗に整備されてんのに、気が引けるけど」


 ザッと地面を蹴り、砂を舞い上げる。その瞬間、雄介の体が光を放った。

 ザワめく外野の騎士達。しかしアリゼはそんなことで動揺して止まりはしない。

 一瞬の間に距離を詰め、振り抜かれる鋼の剣。アリゼの腕前と相まって、それはあらゆる物を切り裂く最強の一筋に変わる。しかし、その攻撃は通らない。


「……変わった魔法を使う」

「かっちょいいだろ?」


 ボコボコと割れた地面。そこから液体のように流れ出てきた金属達が雄介の体を包む。

 やがて形を成したのは、機械の装甲のような……この世界では見ることのないボディ。体の奥から湧き上がる魔力を感じ、雄介は確信した。


 ――勝てる――


 クレイグより譲り受けた鉱の魔石の力で再誕した……。


「ふはははは! パーティタイムの始まりだ!」


 超装甲アルティメット・ユースケリオンだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ