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アンテイムド・モンキーズ  作者: jonathan
南の国『オキナ』
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獅子王

「で、騎士団長と決闘をすることになったと」

「そうだな」


 雄介は買い物を済ませ、宿屋に戻っていた。そして自分の部屋に仲間達を集め、街で起こった出来事を話した。


「さあ、どうする! さあさあ良い案ちょうだい! 待ってるよ! 俺、待ってるよ!」


 両手を広げ、おどけながら仲間に知恵を乞う。


「知らんわい」

「うん、知らないね」

「アンタの自業自得でしょ?」


 返って来たのは冷たい反応ばかり。人生はそんなに甘くない。世知辛さを感じながら雄介は溜め息を吐き、ベッドに腰掛けた。


「ですよねー……」

「まあ、最初の行動は評価せんでもないがな」

「だろ? なんかカッときちゃったもんだからさ」

「子どもに暴力を振るう輩は許せんよなぁ? いくらお主が街一つ消し飛ばした大悪人と言えどもなぁ? マウルの人々は住む所も無くなって大変だったじゃろうなぁ」

「痛い所突くねぇゴンちゃん……まあ前回のあれは事情が事情だったから……ともかくだ。どうしようかな」


 頭を抱え、考え込む。今回ばかりは真面目に悩んでいるようだったが、日頃の行いのせいか、未だ仲間達の目は冷たい。

 特に、勝ったら騎士団長が貰えると話した時の女性陣の反応は殊更だった。


『死ね』

『変態』


 アリッサはともかくソフィアにまでそんな罵倒をされ、若干へこんだ雄介だった。

 思い返してみると再び気が滅入る。そんな雄介にゴンザレスが声をかけた。


「買い物も済ませたことじゃし、さっさと逃げればいいじゃないか」

「違うんだよねーゴンちゃん。それは違う」

「なんじゃお前! めんどくさい!」

「……あとたぶんあれからは逃げられない気がする」


 雄介とて普通に逃げることは考えていた。しかしアリゼの『来なければ草の根分けても探し出す』という言葉が頭がどうしても離れない。

 あの言葉はただの脅し文句ではない……そんな気がしてならなかった。


「目を付けたヤツには超しつこそうな……でもヤンデレって感じではないよなぁ……」

「考え込んでるところ悪いんだけど……そろそろツッコンでもいいかな?」

「ん? どうしたソフィア?」

「ユースケが買ってきた服……なにこれ?」


 ソフィアが手に持っているのは……フリフリのついたメイド服(ミニスカート)だった。雄介もこれを見つけた時には「異世界ハンパねえな」と狂喜したものである。

 何の迷いもなく購入し、ホクホクで帰ってきたのだが、ソフィアはお気に召さなかったようだ。


「メイド服だ」

「それはわかってるよ!」

「こういうの好きじゃなかったっけ?」

「う……た、確かにかわいいけど……こんなの日常的に着れるわけないでしょ!」

「あ、そこら辺の常識は弁えてたか」


 やれやれ、と首を横に振りながら、雄介は真面目に選んで買ってきた服を袋から取り出し、ソフィアに渡す。

 白いシャツにまるでデニムのような生地のショートパンツ、それに黒革のブーツだった。


「む、まあ、これなら……」

「剣は前と同じくらいの長さのやつな。残念ながら前のみたいに特殊なローブは無かったが」

「いいさ。魔法が使えなくても、剣の腕前でカバーする!」


 意気込むソフィアを横目に雄介は立ち上がり、窓枠に手を掛ける。空は憎たらしいほどに澄み渡っている。


「こんな日は草原で昼寝がしてえなぁ」


 雄介が目を瞑って草原をイメージしていると、横にアリッサが来て、声をかけてきた。


「現実逃避してないで、さっさと対策考えなさいよ」

「水を差すな。ほらお前も横に来て眠ってみ? 気分いいぜー」

「よ、横で眠るって……た、試しにやってみてあげてもいいけど! 変なことしないでよね!?」

「んー?」


 完全に自分の世界に入り込んだ雄介には、アリッサの声は届かない。

 ここは草原、ここは草原、ここは……。


「太陽があったけえ……土と草の匂いがする……ん?」


 何かが引っかかり、雄介は目を開けた。隣をチラリと見れば、アリッサがなにやら赤い顔をしながらギュッと目を瞑っている。何を考えているのだろう、気にはなったが、雄介はそっとしておくことにした。


「なんかすごい策が浮かんで来そうな気が……」


 太陽、草原……ハッと気が付く。


「ゴンちゃん!」










 王城・謁見の間にて。


「ミリアム国王陛下。アゼル・バスティード、ただいま戻りました」

「ご苦労。報告を頼む」

「はい」


 国王、ミリアム・ラビエール。

 ラビエール王家歴代の国王の中で、最も民衆の心を掌握する才に長ける。

 身長百九十センチを越える巨体、逆立った金の髪、鋭い眼光、その身から放つ厳格な雰囲気から『獅子王』とも呼ばれる。しかし、それに反し、くだけた性格の持ち主。

 かつては前線に出て魔物の討伐に参加していた武闘派で、齢は五十を越えているが、その肉体は衰えることを知らない。


「太陽祭の準備、滞りなく進んでおります。例の侵入者三名は現在捜索中、街にはその他、異常ありま……」


 アリゼの頭に無礼な少年の顔が浮かぶ。


「ん?」

「……いえ。異常はありません」

「……なんかあったんだな?」


 ミリアムは微笑みながらアリゼに尋ねた。


「いえ、そんなことは」

「……珍しく表情が歪んだぜ?」


 アリゼ自身でも気付かないわずかな変化。ポーカーフェイスには誰よりも自身のあるアリゼだったが、それが崩れるということは思ったより頭に来ていたようだ。

 気持ちを切り替え、再び努めて冷静を装う。


「……失礼しました」

「はっはっは! いや、別にいいんだがな?」


 アリゼはどうもミリアムに対して苦手意識があるようで、必要以上に言葉を発しようとしない。ミリアムとしては常々コミュニケーションを取ろうとしているのだが、なかなか上手くはいかないようだった。


「……ま、治安のことに関しちゃ、お前に任せてるからよ。無理しない程度に頑張ってくれ」

「……失礼します」


 ミリアムに一礼し、謁見の間を去るアリゼ。


「……ったくよ」


 扉が閉じた後、訪れる静寂の中、残されたミリアムは悲しげな笑みを浮かべ、一人ごちる。


「変わっちまったな……」


 その姿に、いつもの王たる面影は見られない。まるで一人の父親のような、良くも悪くも人間味の溢れる姿。


「なあ、グレンよ……難しいな、子育てっつうのは……」


 ミリアムは、かつて弟のように可愛がっていた戦友のことを思う。駆け巡る思い出が胸を締め付けた。



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