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アンテイムド・モンキーズ  作者: jonathan
南の国『オキナ』
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喪失感

 突如として消えてしまったアリッサを探すため、雄介達は静まり返るマウルの街の探索を開始した。


「しかし見事に誰もいないなぁ……」


 特に変わったものも無さそうだ。程なくしてゴンザレスが先頭を切る雄介に声をかけた。


「ユースケ、これは手分けして探した方がええんじゃないか?」


 その言葉に雄介は、やれやれとばかりに肩を竦め、首を横に振る。


「わかってないなぁ、ホラーのお約束さ。こういうのは一人になったやつから消えていくんだ。特にソフィアなんて普通にどっか消えそうだし」

「な!? ユースケ! それどういう意味!?」


 雄介の後ろからソフィアが抗議の声を上げてきた。振り返るとソフィアの白い脚が真っ先に目に付く。

 いつまでも布のままではいけないので、先ほどソフィアは気が進まないながらもとある民家から衣服を拝借していた。

 家族に男がいなかったのか、その家には女物の服しかなく、珍しくソフィアはスカートを履いていた。白いノースリーブに赤と黒のチェックのミニスカート、足元はミュールのようなものを履いている。

 なんだか異世界感の欠片もない服装だったが、雄介は満足そうだ。


「ってか、お前今は剣もローブも無いんだから戦闘力ゼロなんだぞ?」

「うっ……それは」

「おまけに方向音痴のドジッ子だ。おまけに金髪で巨乳……たまらん、どストライクだ!」


 途中から全く関係のないことを口走っていたが、とにかく雄介はこのままアリッサを探し続けるつもりのようだ。


「うむぅ……」


 しかしゴンザレスはまどろっこしさを覚えたのか、珍しくスタンドプレイに走る。


「ワシなら大丈夫じゃ。ちょっくら飛びまわって見て来るわい。日の暮れる頃に街の入り口で落ち合おう」

「あっ! 待てゴンちゃん!」


 雄介の制止の声も聞かずに、ゴンザレスは飛び去ってしまった。


「うわぁ……絶対ゴンちゃん帰って来ないヤツだよこれ……」

「……まあまあ、ゴンちゃんなら大丈夫じゃない? ボクと違って戦えるし、頼りになるし……」

「うわぁ……拗ねちゃってるよこの子……」


 そんなソフィアを宥めつつ、二人で街を探し回る。やはりアリッサが見つかることはなく、時間だけが過ぎていった。


「うう……」

「ん? ソフィア、どうしたんだ?」

「いや……なんだかどこかから見られているような……少し寒気が……」

「へえ……俺は何も感じないけどな……? それと、寒いならあっためましょうか? 俺の……」

「大丈夫」

「おうふ……」


 建物などは割と新しいものが多いのに人だけがいない。そんな街には妙な不気味さが漂っており、ソフィアも嫌な空気を感じていた。


 そして……約束の夕暮れ時。


 ゴンザレスは戻って来なかった。








「やっぱりじゃん! くっそー……」


 場所を移して、現在は街中の宿屋の一室。

 今日ばかりは二人同じ部屋に泊まることにし、雄介は自分のベッドの上で一人ごちていた。


「なにやってんだよゴンちゃーん……」


 自信満々に去っていきながら、完全に雄介の予想通りの結果に終わってしまった老妖精。

 雄介はソフィアが浴びているシャワーの音をバックに、明日はどうするべきかと思考を巡らせる。


「だいたい……なんでこんなことになってるんだ? 敵はいったい誰なんだ……?」


 ただ闇雲に探し回っても事態は動かない。かと言ってどうすればいいのか、雄介には検討も付かなかった。

 いっそ大人しく自分も同じ目に合ってみるしか……と考えたところで、シャワーの音が止まる。


「ま……なるようになるか……」


 半ば諦めにも似たような気持ちで天井を眺めていると、ソフィアが浴室から出てくる。

 その顔色はどうにも優れなく、シャワーを浴びたばかりだというのに寒そうに震えていた。


「おいおい、大丈夫かよ?」

「う、うん……大丈夫」

「どこがだよ……早くベッド入れよ」

「うん……」


 ソフィアは言われるまま自分のベッドに上がり、掛け布団に潜る。かなり心配ではあったが、雄介は一言言い残して自分もシャワーを浴びに行くことに。


「……やべえな……この状況はやばい……」


 手早く体と髪を洗い、浴室から出ると、布団越しでもわかるほどにソフィアの震えはひどくなっていた。

 雄介はゆっくりとソフィアの寝ているベッドに歩み寄り、そのまま中に入る。


「ユ、ユースケ……」

「真っ青じゃねえか……」

「あっ……」


 溜め息を漏らした後、ソフィアの体を強く抱きしめる。普段ならここで邪な気持ちが働いているところだが、ソフィアがこの状態ではさすがにふざけてはいられないようだ。

 雄介は右手で優しくソフィアの頭を撫で、囁くように言った。


「おやすみ」

「……うん。これ、落ち着く……」


 しばらく撫で続けていると、やがてソフィアの震えが治まり始めた。時刻が二十四時を越えた頃、小さく寝息が聞こえてきて、雄介はソフィアの顔を覗き見る。


「……良かった」


 ソフィアは愛くるしい寝顔を浮かべ、スヤスヤと眠っていた。ホッと一息吐いた雄介は手を止め、先ほどまでと同じ様に天井を眺める。


「せっかくまたみんなで遊べると思ったのによ……」


 これから騒がしくも愉快な旅が始まるはずだった。出鼻を挫かれた雄介は複雑な気持ちを抱えながら、静かに目を閉じる。








『助けて……』

「……っ! おい! お前なのか? 俺のツレを……」

『助……っ……』

「待て! 行くんじゃねえ!」

『……』








 次に目が覚めた時には既に朝になっていた。先ほどのあれは夢だったのか……少し気がかりではあったが、雄介にとってそんなことはどうでも良くなっていた。


「……くそ」


 目が覚めて真っ先に気付いたことがある。


「おーい……」


 ソフィアがいない。


「……くそ、また一人かよ……」



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