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アンテイムド・モンキーズ  作者: jonathan
南の国『オキナ』
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呪われた街

「というわけで……みんな久しぶり! これまでどうしてたんだ?」


 紆余曲折を経て再び集まった雄介一行。場所を街の中心部に移し、話し合いを始める。


「ワシは……東の国の各町を転々としておった。特に変わったことはなかったがの」

「そっか。ソフィアは?」


 服は飛ばされて来なかったため、現在ソフィアはアリッサがどこかから取ってきた布を体に巻きつけ、俯いている。


「っ……」


 雄介は話を振るが、ソフィアは先ほどのことが尾を引いているのか、答えようとしない。


「まあまあ。見られたのが俺ら三人だけでよかったじゃねえか」


 全くフォローになっていない言葉を投げかけつつ、雄介はソフィアの肩をポンと叩く。無言のまま顔を赤く染めるソフィアに代わり、真っ先に雄介の言葉に反応したのはゴンザレスだった。


「そう、それじゃよ。あれだけ街の入り口で騒いでおったのにも関わらず、誰にも目撃されていない。なあユースケ……なぜ……」


 ゴンザレスは周囲を見回し、この場の全員が疑問に思っていたことを口にする。


「この街には人がおらんのじゃ?」


 そう、ここは南の国『オキナ』の町の一つ、『マウル』。

 南の王都である『コーザ』に比較的近いこの町は、近隣の山々から採取される果実などで市場が賑わう、栄えた場所であるはずなのだが……。


「それがわかんねえんだ……俺とアリッサがここに着いた時から、人っ子一人いなかった」

「そうなのよね……そこにスクランの幹部が現れて……だからてっきりアイツの仕業だと思ってたんだけど」

「今までこんなことはなかったしな……」


 何か気にかかることがあったのか、考え込む二人の言葉にソフィアの体がピクリと跳ねる。 

 それまで無言を貫いていたが、ようやく顔を上げて口を開いた。


「ちょっと待って! 二人はずっと一緒にいたの?」


 言われて顔を見合わせる雄介とアリッサ。数秒見つめ合った後、視線をソフィアに戻し、なぜだか二人揃って焦った様子で言い訳を始める。


「いやほら、たまたま前の町で合流してだな」

「そうそう! ずっとって言うほど一緒にいたわけじゃなくて……ってか、こんなヤツと一緒とかウンザリだったし!」

「あ? 調子に乗んなよ貧乳女」

「は? 調子に乗ってるのはそっちでしょ? 変態」


 些細なことからガミガミと言い争いを始めた二人。ソフィアはそれをジト目で見ながら、ボソリと呟く。


「なんか二人、仲良くなった?」


 指摘された二人の体がビクリと跳ねた。互いにやましいことが頭に浮かび、それまで以上に口数が増える。


「誰がこんなのと! ソフィアったら変なこと、い、言わないでよね!」

「そうだぞーソフィア! 勘違いしてもらっちゃあ困る!」


 はたから見ると完全に怪しかったが、渋々ソフィアは引き下がることに。


「あ、あんなことするような変態と仲良くなんて、死んでもゴメン……」

「バカ! アリッサ!」


 せっかく丸く納まりそうだったというのに、アリッサが余計なことを言ったせいでソフィアの両眉が釣り上がる。


「ユースケ……? 一体アリッサに何したって言うのかなー……?」

「おかしいな……ソフィアちゃん、顔が怖いんだが……いつもの可愛いお顔に戻っておくれ……」

「ふふふ……何したのか正直に言ってくれれば戻るかもねー……?」


 雄介は困った。いつもなら可愛いと言っておけば顔を赤くして有耶無耶にできたのだが、今日のソフィアは一味違うようだ。

 そもそもなぜ怒っているのか雄介にはわからなかった。やきもちか? やきもちなのか? と、若干ニヤついてしまうが、目の前のソフィアの顔を見るとそんな浮ついた気持ちもどこかに消えてしまう。


「まあこれと同じことだ。言ってもあれだぞ? 不可抗力だぞ?」


 そう言ってソフィアの胸を鷲掴む。何が起こったのかわからずにキョトンとするソフィアと、ピシリと固まる外野二人を見ながら、雄介は満足げに頷いた。

 サラシを巻いていないソフィアの胸の破壊力は凄まじい。ずばり、柔らかい。


「正直に言ったから元に戻ってくれるよなー、ソフィア!」

「イ」

「イ?」

「イヤアアアアアアアアアアア!!」

「ですよね!?」


 渾身の右ストレートを顔面に受け、地面を二回三回と転がる雄介。


「うう……最近俺ごまかし方下手になった、か……?」


 下手になったというより、大胆になっているのだが、それに気付くことは今後ない。









 雄介は痛む鼻を押さえながら、話題を半ば強引に戻し、これからの流れについて話し始める。


「とにかく、なんかこの町で良からぬことが起こったのは間違いない。でもそれを突き止めて解決してやるような義理は、俺らにはない」

「うむ。少々気は引けるが、無闇に首を突っ込む必要もないじゃろう」

「俺らは正義の味方じゃねえんだ。さっさとここを出て次の場所に……」


 雄介は言葉の途中で急に周りを見回し始める。その不審な挙動に首を傾げる三人のうち、真っ先にゴンザレスが雄介に問う。


「どうしたんじゃ?」

「いや、誰かに呼ばれたような気が……」


 しかし周囲に人の気配はない。気のせいだろうか、と話の続きをしようとする雄介の耳に、再び何者かの声が届いた。


『助け……て……』

「……おいおい……」


 今度こそはっきりと聞こえた。やはり気のせいなどではなかったのだ。しかし、だとすると一体どこから……。

 その時、突風が雄介たちを襲った。


「ぐ……また風かよ! みんな! 飛ばされんなよ!」


 雄介のその言葉に各々答える仲間達。雄介は必死に地面にしがみ付き、飛ばされまいと粘った。

 風の音がやかましい……力を込めるうちにいつしか瞼はギュッと閉じ、視覚と聴覚の欠けた状態で、雄介は耐える。


「ぐ、お……止まった……?」


 数分ほど経った頃だろうか、風はピタリと止み、雄介は謎の突風を不思議に思いながら立ち上がる。

 ……こういう展開の時は大抵良くないことが起こるものだ、と嫌な予感を胸に抱えながら。


「……やっぱりですか」


 同じ様に蹲っている仲間達の方を見た時、一瞬で気付いたことがある。


「せっかくみんな集まったのになぁー……」


 先ほどまで言い争いをしていた赤髪の少女、アリッサがその姿を消していた。動揺を隠し切れない雄介に、同じ様に気付いたソフィアが声をかけてくる。


「ユースケ!」

「わかってるさ」


 ソフィアに短くそう返し、はあ、と溜め息を漏らしていると、ゴンザレスが雄介のすぐ真横にやって来て口を開いた。


「まーた厄介事じゃのう」

「そうだな……これでこっから出て行くわけにいかなくなったぜ」


 雄介は空を見上げながら一言呟く。


「呪われた街ってとこか……」



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