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アンテイムド・モンキーズ  作者: jonathan
南の国『オキナ』
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帰還

「「フワッフー!!」」


 雄介と正蔵は、二人揃って上空を飛んでいた……スカイ・ダイビングだ。


 二人とも楽しげに声を上げながら落下してゆく。こうなったキッカケは正蔵の一言。

『何か物事を思い出せない時は、前後に取っていた行動をもう一回すれば思い出す』

 というものだった。しかも順を追っていった方が効果は高いのではと悪乗りし、異世界に行ってからに行動を全て再現しようという流れになった。


 その初めとして、上空からの落下だ。次は砂丘を歩き、森に行ってから川で泳ぐ流れとなっている。

 土日をフル活用、たとえ平日にかかってしまったとしても二人は全スケジュールを終えるつもりでいる。母親はうるさかったが、二人で強引に丸め込んで家を出てきた。


「楽しいぜぇぇぇ!!」


 やはりこうでなくては、雄介は久しぶりに生き生きとしていた。ここに仲間がいれば言うことなしだ。


「雄介! 下りたら新幹線で鳥取に向かうぞ!」

「ガッテンだぁぁ!!」


 ――砂丘――


「すげえ! でも異世界の砂漠の方がハンパなかったぜ!」

「いいのぉ! うらやましいのぉ!」

「観光客がけっこういる……はっ! そこのお嬢さん!! 俺と遊びませんかぁぁぁ!!」

「ぬぬ! 負けんぞ雄介ぇぇ!!」


 ――森――


「自然はやっぱりいいぜぇ! でも向こうの森には妖精がいたんだよ!」

「くそう! ワシも異世界に転生したいぞい!!」

「なんか木の実がある! ちょっと取ってくるわ!」

「ワシの分も頼んだ!」


 ――川――


「ぬぁぁああ! 水着美女がおらん!」

「くそっ! これが夏だったら! ちくしょう!」

「ああ! 雄介のヤツ服のまま飛び込みおった! 負けてられん!」


 



 当分遊びまわったが、もちろん記憶の方は戻るわけもない。雄介と正蔵はどこかの海岸で黄昏てゆく空と海を眺めながら、一息ついていた。

 さすがの二人も全力で暴れ回り、疲弊しているようだ。波音とカモメの鳴き声が耳に心地良く響く。


「あとは……何をすればいいんじゃ?」

「空を飛んで王都……は無いから首都に飛んで……いや、その前に金髪巨乳ボクっ娘の美女に合わなきゃ」

「そんなやつおらんぞ……」

「だよなぁ……」


 ボクっ娘の時点でだいぶハードルが高い。手詰まりかと思われた時、正蔵が空を見上げながらポツリと呟いた。


「その時の状態と今の自分を結びつけるものがあればのぉ……」

「……あの時の俺……今の俺……」


 雄介は何かに気づいたようで、勢い良く立ち上がる。巻き上がった砂に少しむせ返りながら、正蔵は何かを掴んだ様子の自分の孫を見上げ、クスリと笑った。


「……さっさと行ったらどうじゃ?」

「おう。爺ちゃん……」

「ん?」


 力強い笑みで、雄介は正蔵に言い放つ。


「めっちゃ楽しかった。ありがとな……本当の世界でまた会おう!」

「はっはっは! おうよ! またな!」


 言葉を交わした後、雄介は全力で駆け出す。振り向きざまに見えた祖父の笑顔は、赤く照り返す海よりも眩しく輝いて見えた。


 見知らぬ街並みを駆けながら、雄介は思い出す。


「あの世界の俺はこんなんじゃねえんだ」


 この世界は恵まれすぎている。与えられただけの幸福は雄介から『ある物』を奪っていった。


「結局は俺が甘えてただけか……」


 退屈だなんだと言いながら、雄介は満足してしまっていたのだ。柔らかい寝床に、充分な食料、家族や友達の笑顔だって見れる。


「もっとギラついてただろうが……俺は!」


 未知に対する渇望、もう一度仲間に会いたいということすらも、消えかけていたのかも知れない。

 雄介はそんな自分がたまらなく嫌になった。走る速度がさらに上がってゆく。いつ脚がもつれて転倒してもおかしくはない。


 ――まがい物の幸せで満ち足りていた……俺は俺に戻るんだ――



『『マウル』の町にようこそ。オイラの名前はカーラ・アングラート。スクランの幹部さ! 君達を待ってたんだ』

『ゲームをしよう。言っておくけど君達に拒否権は無いよ? 金髪の女の子、預かってるからね!』

『そんな目で見ないでよー。ふふふ、ルールは簡単さ。制限時間内に偽物の世界から戻って来れたらそっちの勝ち』

『参加者は君だけさ、サルトビ君。代償は……君とその娘の命。こっちはオイラの命と、願い事を一つ叶えてあげる』

『信用できない? 大丈夫、それがオイラの能力だから。ゲームの勝敗で……負けた方が勝った方に、賭けたモノを渡させるっていうね。しかもその内容はある程度公平じゃなきゃならない。ちょっと面倒な力さ』

『それじゃあゲームを始めるよ? 鍵となるのは記憶を取り戻すことと……』


 ――強い意志、かな?――


「幸せくらい自分で掴める! 俺は! 最強の忍者だ!!」


 世界が歪み、次元の穴が開く。雄介は蹴りだす速度のまま、そこに突っ込んだ。

 

 ――俺の……――


「勝ちだぁぁぁ!!」


 雄叫びを上げながら目を覚ます。そこには喜びの表情を浮かべたアリッサと、目を丸くしているスクランの幹部、カーラがいた。


「バカな……こんなに早く……!?」

「こんなに早く? けっこう時間かかった気がするんだが」


 驚愕しているカーラに首を傾げていると、横からアリッサが口を挟んでくる。


「いやいやいや! アンタ眠ってから三十秒くらいしか経ってないわよ!?」

「ええ!? まあ夢と現実の時間は違うってことか……」

「こうあっけないと……なんかわずかでも心配したアタシがバカみたいじゃない! まあ? 別にアンタを心配したんじゃなくて……」

「ツンデレは引っ込んでろ」

「なんですって!?」


 雄介としては久しぶりなこのやり取りを楽しみつつ、カーラの方に目を向けると、驚くべきことにその体はサラサラと砂になり始めていた。

 ゲームの代償……てっきり有耶無耶にされると思っていたが、能力による強制力には、使用者であるカーラも逆らえなかったのであろう。


「あ、ぐ……そんな、オイラが、こんなところで……」

「残念ながら今までのどの幹部よりあっけなかったな、お前。ドンマイ」

「う、く……」


 雄介に遠慮はない。早速もう一つの代償である願いを叶えることにして、声を上げた。


「んじゃ……俺は仲間に会いてえ! ソフィアとゴンちゃんをここに呼び寄せてくれ!」

「うぐ、う、あああああああ!!」


 カーラの消滅とともに、辺りを眩い光が包む。光が収まり、目に入ってきたのは懐かしき仲間達……。


「ぶほあっ!」

「ふぇ?」


 ゴンザレスは普通に現れた。木の実を食べているところだったのだろうか、頬を膨らませながら目を点にしている。

 しかし問題はソフィアだ……風呂の最中だったのだろう。捕らわれの身だというのに随分良くしてもらっていたようだ。髪を洗っていた最中だったらしく、頭はシャンプーで泡だらけ……しかし全裸だ。

 相変わらずの良い体付きに見惚れてしまいそうになるが、こんな時でも雄介は茶目っ気を忘れない。


「さしづめ俺はの○太くん……君はし○かちゃんといったところか」

「い、いやああああああああ!!」


 ソフィアの甲高い悲鳴をバックに、雄介は空を見上げながら呟く。


「よかった、俺帰って来たわ」


 白い雲が、澄んだ空に漂っていた。





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