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アンテイムド・モンキーズ  作者: jonathan
東の国『キオ』
35/59

魔女

 雄介とゴンザレスが到着した時、猛スピードで煙の中に突入したために風圧で周りの煙は一時的に晴れていた。しかし時間が経つと共に再び新しい煙が立ち込め、ゴンザレスが苦しそうに声を上げる。


「ぬぁ!? なんじゃ、これは……」

「どうしたゴンちゃん!」


 ゴンザレスはそのまま地面にパタリと倒れる。見ればソフィアと同じ様に体を痙攣させているようだ。雄介は姿の見えないカルディナに向けて問う。


「おい!! なんだよこれ!!」

「ふふふ、『パラライズド・ヘイズ』って言うの。ただの目暗ましじゃないのよ? 吸い込んだら体が痺れて動けなくなるの。でも変ね? そこの小娘はともかくなんであんたにも効かないのかしら……」


 その言葉を聞いて少し考えた雄介だったが、すぐに思考を切り替えてカルディナに叫んだ。


「まあいいや! とりあえず無駄な抵抗をやめて出てきやがれ!!」


 辺りをキョロキョロと見回しながら雄介は前に進んで行く。


「お断りよ。これでも喰らいなさい」


 そしてカルディナは魔法で雄介に仕掛けた。無数の氷の礫が雄介を襲う。


「甘めぇな」

「へえ」


 しかし攻撃のタイミングや範囲を把握していた雄介はそれを横に跳んでかわした。カルディナは少しばかり驚いたものの、まだ余裕な態度を崩さない。


「やるじゃない。でもね……」

「あ?」

「あぐっ……!!」


 背後からアリッサの呻き声が聞こえ、雄介は振り返った。視界は最悪だが、目を凝らして見ればそこではアリッサがソフィアとゴンザレスを庇い、その身で攻撃を全て受けていた。


「避ければそこの小娘が代わりに攻撃を受ける事になるよ? あんたがその場から離れて私を探しに来ようものなら、その小娘は集中砲火に……」

「そこだああ!!!」

「な!? ええ!?」


 忠告を無視して雄介は走り出す。そしてすぐにカルディナの下へと辿り着いた。


「くたばれやあぁぁぁ!!」

「ま、待ちなさいよ!!!」


 雄介は焦るカルディナに容赦なく拳を突き出す。カルディナは慌てて煙の中に隠れようとするも、雄介には通用しない。


「なんで私の居場所が……!?」

「俺のカンニングスキル舐めんなよ!!」


 雄介は集中すれば気配を読む事ができる。その事を知らないカルディナは雄介の攻撃を避けながら叫んだ。


「何よそれ!? っていうかあんた! 仲間がどうなってもいいの!? 魔法でズタボロにするわよ!?」

「殺られる前に殺れ、それが俺の流儀だ!」

「ふざっけんな!!!」


 カルディナはそう叫びつつ魔法でアリッサに攻撃を仕掛けた。離れた所から「あうっ……! ぐっ……!!」とアリッサの呻き声が聞こえてきて雄介はさすがに足を止めた。


「ほら、お仲間が苦しんでるわよ? 戻らないともう持たないかも……」

「やりやがったなこの野郎!!!」

「ええ!? あぐっ!!」


 しかし尚も雄介はカルディナに突っ込んでいく。そして雄介渾身のボディブローが決まり、カルディナは苦悶の表情を浮かべた。

 雄介はすかさず追撃するが、カルディナは腹部を押さえながらそれをかわして口を開く。


「何考えてんのよあんた!!」

「何も考えてない!! 魔法を発動できなくなるまで殴る!! 話はそれからだ!!」

「なんなのよこのバカ!!」


 しかし実際雄介の取った行動は最良であったと言えるだろう。たとえアリッサを守りに戻ったとしても魔法で攻撃され続け、いずれは全滅する運命だ。

 カルディナはさらに魔法を発動させようとするも、雄介がそれを許さない。


「がっ、ぐっ!」


 雄介のワンツーが綺麗に顔面に決まり、カルディナは弾き飛ばされた。すかさず雄介はマウントポジションを取り、カルディナをたこ殴りにしようとする。


「なっ!?」

「へ……?」


 しかし雄介はそこで動きを止め、驚きの表情を見せる。やられると思っていたカルディナは突如止まった雄介を見て素っ頓狂な声を上げた。

 雄介は体をわなわなと震わせ、冷や汗を垂らす。そして震えた声で呟いた。


「めっちゃかわいい……」


 視界が煙で閉ざされていた上、攻撃に必死だった雄介はカルディナの顔をまともに見ていなかった。しかし馬乗りになって近距離で見たカルディナの顔は思っていたより綺麗だ。ここに来る前に鼻水垂れ流しのゴリ子の顔を見ていたのでギャップにより尚更そう見える。

 カルディナは雄介の呟きを聞き、にやりと笑って口を開いた。


「……ふふふ。あら、ありがとう。ねえ、苦しいわ……どいてもらえないかしら」

「あ、さーせん」


 雄介は思わず普通にどいてしまった。すかさずカルディナは立ち上がり、雄介と距離を取りながら声を上げる。


「ふふふ、おバカさんね」

「しまったぁ!!」


 雄介はカルディナと再び距離詰めるべく駆け出す。すると遠くの方からズン、と地面に響くような物音が聞こえてくる。


「足止めご苦労様!!」

「アリッサ!!」


 雄介の方に突っ込んできたのはアリッサだった。アリッサは耳を澄ませ、雄介とカルディナの声を辿って居場所を突き止めた。先程の物音はアリッサが地面を蹴る音だ。雄介が時間を稼いだため少しは回復したようで、その足取りはいつもと比べても遜色なかった。


「アリッサ! 少し左に曲がれ!」

「了解!」

「なっ!?」


 アリッサは雄介の指示を受け、その脚力で一気にカルディナに詰め寄った。アリッサは不敵に笑いながらカルディナに声をかける。


「さっきまではどうも……オバさん」

「くそ! 小娘……がっ!?」


 その勢いのままアリッサはカルディナの腹に膝蹴りをねじ込んだ。勢いがついたアリッサの攻撃は避ける事ができず、カルディナは整った顔を苦痛に歪ませて悶絶する。しかしアリッサの怒りはそれで収まる事はない。

 前屈みになって苦しむカルディナの顎をトーキックで跳ね上げた。そしてガラ空きになった腹部に今度は右の回し蹴りを叩き込む。


「ぁ……ぇ……」


 声にならない叫びを上げながらカルディナは地面を転がっていく。それと同時に辺りに立ち込めていた煙が晴れ始めた。あまりの痛みに魔法を維持する事ができなくなったのだろう。

 アリッサは転がっているカルディナに一歩ずつ近づきながら口を開いた。


「もうアンタに勝ち目はないわね? どうする? まだやる? オバさん」

「あ……う……」


 カルディナはそんなアリッサをキッと睨みつけるも、言葉が出てこない。アリッサは先程とは打って変わって余裕の表情でカルディナを見下ろしている。


「……あ、あああああ!!!」

「え? な、なによ急に……」


 するとカルディナは突如頭を抱え、苦しみだした。アリッサはその様子を見て戸惑い、後ずさる。


「あれ? どうかした?」

「いや、コイツが急に苦しみ出して……」


 後ろから暢気に歩いて来ていた雄介は様子のおかしいカルディナを見てアリッサに声をかけた。カルディナはアリッサの言葉を遮り、大声で喚き出す。


「いや!! やめてよ!! 私ならまだやれるから!! あんな、醜い姿になんて……」


 言葉の途中でボゴン、とカルディナの頭が変形し出した。雄介とアリッサはそれを見て警戒し、少しずつ距離を取る。


「来るな……第二形態だ」

「今度はどんな化け物になるのかしらね……」


 話している間にもカルディナの体は次々と変形していく。カルディナは二人を歪んだ目で睨みつけながら叫んだ。


「あんたら! あんたらの……せいで!! 殺してやる!!! あ、ああアああアぁあ!!!」


 絶叫と共にその体は変形を終えた。その姿を見た雄介とアリッサは思わず息を呑む。そして目の前の怪物に見覚えのある雄介は、冷や汗をかきながらボソリと呟いた。


「メデューサ……」



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