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アンテイムド・モンキーズ  作者: jonathan
東の国『キオ』
32/59

商業都市『エーノ』

 ソフィアの意外な一面が垣間見れた夜が明け、雄介達は『シジュ』から旅立った。


「うう……死にたい」

「まあまあそう言うにゃー」

「うわああああ!!!!」


 移動中、雄介はうな垂れるソフィアをからかい続けた。一々反応するソフィアが面白くてたまらないようだ。

 そして賑やかに移動する事数日、一行は目的地である『エーノ』に辿り着いた。


「ここが『エーノ』か……すげえ賑やかな所だな!」

「アンタが好きそうな雰囲気ね」


 この国有数の商業都市である『エーノ』は商人達が露店などをそこら中で開いており、街中が活気に溢れている。

 

「そこのお兄さん方! どう? ちょっと見てってよ! 良い物揃ってるよ?」


 あちこちからそんな声をかけられながら雄介達は街の奥へと進んでいく。そしてしばらく歩いていると街の中心部に大きい掲示板を発見し、それに駆け寄った。


「魔物の大量発生につき討伐依頼、協力してくれる冒険者は警備隊本部まで……報酬も出るみたいだな」

「警備隊本部、ねえ……」


 その言葉にアリッサは露骨に嫌そうな顔をした。地元である『コダッテ』で散々引っ張られていった場所だからだ。


「地図によると、本部はこっちの方みたいだね。行こうかみんな」


 そう言っていきなり真逆の方へ歩き出すソフィアの首根っこを掴んで引っ張り、雄介達は警備隊本部まで移動した。地図の場所に辿り着くとそれなりに立派な鉄筋造りの建物があり、門の所に大きく『警備隊本部』とある。

 門前に二人の警備隊員が控えていたので、雄介は近寄って声をかけた。


「掲示板の討伐依頼を見て来たんすけど」

「ああ、冒険者の方ですか? それではこちらにお願いします」


 雄介達は隊員の一人に連れられ、中に進んで行った。途中で何人もの隊員とすれ違い、会釈程度で挨拶をする。そして隊長室と書かれた広い部屋へと通された。


「これはどうも。私はエーノ警備隊隊長、アルド・スアレスと申します。この度、依頼を引き受けてくださるという事でよろしいですか?」

「あ、はい」


 アルドはガタイの良い壮年で、その丁寧な口調と物腰から温和な雰囲気を醸し出している。しかしこういう人物ほど怒らせると怖いものだ。

 雄介達はアルドに促され、部屋の中央に置かれているソファへと腰掛けた。アルドもそれを確認してから対面に座り、話し出す。


「それでは詳しい説明の方をさせていただきます。決行は明日の正午、ここから出発します。班を二つに分け、東と西に如々に進んで行く形です」

「魔物の大量発生っていうと、規模はどのくらいなんですか? ここに来るまでではそれほど魔物とは遭遇しなかったんですが」


 ソフィアが話の途中でアルドに質問を投げかけた。それに対してアルドは視線をソフィアに送りながら言葉を返す。


「主に東の森と西の沼地に魔物が湧いているのです。恐らくあなた方は北か南の方角から来られたのでしょう」

「アタシ達は北の国から来たの。でも、東の森と西の沼地? 街には直接被害は出てなさそうだし、なんでわざわざ討伐なんてするの?」

「いやあ、それがですね……街に被害が出なくてもここへ流通へ来る商人達の方に被害が出ていまして……商業都市であるこの街に商人が来なくなってはあっという間に寂れてしまいますゆえ」

「ふーん、なるほどね。それじゃあ続きどうぞ」


 アリッサも疑問が解消されたようで、アルドに続きを促す。しかし既にアリッサは退屈そうな様子だった。やはりこの場所とこういう空気は苦手なのだろう。

 ちなみに雄介はわかったような顔で頷いているが、ここまで話を全く聞いていなかった。


「はい、それで班分けなのですが、あなた方には西の沼地に行ってもらおうと思っております。装備などはある程度はお貸しできますが、いかがされますか?」


 三人は顔を見合わせるが、雄介が代表して口を開いた。


「いや、大丈夫っす」

「わかりました。それでは他に質問がなければこれで終了となります」


 特に質問もなかったので、雄介達は本部から出て街を見て回る事にした。堅苦しい空気から開放された一行は羽を伸ばす。

 そしてさすがに商業都市と言うだけあって店の数が多く、変わった品も多かった。特に雄介は心を躍らせながら店を巡った。


「おっちゃん! これなんだ?」

「おお! 良い物に目をつけたね! これは魔力を込めると相手の服が透けて見えるようになるメガネさ!」

「ください。超ください」


 雄介はすぐに購入しようとしたのだが、アリッサとソフィアに引きずられて泣く泣く諦めた。

 その後もいろいろと見て回ったのだが、ソフィアが再びファンシーな服やグッズに目を引かれたり、アリッサが強引な客引きをしている店主を叩きのめした以外は特に変わった事もなく、そのまま全員で宿屋へと移動した。


「ソフィアちゃん今日は一緒に寝ないのかな?」

「もう!! いい加減に怒るよ!!」


 雄介としてはまたハプニングを期待していたのだが、残念ながら部屋割りはいつも通りの二部屋だ。そして寝る前に雄介とゴンザレスは部屋で翌日の事について軽く話し合う。


「なあゴンちゃん、沼地って事は魔女が出てくんのかな?」

「なんでそう思うんじゃ?」

「沼地って言えば魔女なんだよ。ワンセットなんだ」

「なんかお主がそう言うと本当に出て来そうじゃな……」


 雄介は妙なフラグを立てながらゴンザレスと他愛もない会話をし、そのまま眠りに就いた。そして翌朝、支度をして全員で警備隊の本部まで向かう。

 するとそこには雄介達の他に二十人の冒険者が集まっていた。そのまましばし待っているとやがて中からアルドが出てきて、冒険者達全員に声をかけた。


「本日は集まっていただき感謝しています。それでは事前に決めた班分けに従い移動してもらいます。西へ行く班は私に、東に行く班は副長について行ってください」


 そしてその場にいた冒険者は二組に分かれる。だが明らかにその比率がおかしく、雄介達や他の冒険者達は不審に思った。東に行く班が圧倒的に多く、西に行く班は雄介達を含めて六人しかいないのだ。ゴンザレスとアルドを含めると八人である。


「おいおい、この人数の振り分け方はおかしんじゃないか?」


 他の冒険者の一人がアルドに向かって言い放った。アルドはその冒険者の方を向き、少しだけ頭を下げる。


「納得行かないところもあるでしょうが、後で説明します。まず移動しましょう」


 雄介達含めた西の班の冒険者は皆戸惑っていたが、有無を言わせず移動しようとするアルドに仕方なく続いていく。するとそこで不意にアルドが振り返り、思い出したように雄介に言う。


「そうだ、すいませんがあなたはやはり東の班に行ってください」

「は? なんでそうなる、っすか?」


 突然の班変更に雄介は戸惑う。そしてそれは他の二人も同じだ。


「ちょっと! 意味がわかんないんだけど!」

「ユースケがそっちの班なら僕達も……」


 アルドはソフィアの言葉を遮り、口を開く。


「作戦の指揮は私です。従っていただけないならあなた方は外れていただきますが?」

「はあ!? ふざけんじゃないわよ!」


 アルドのその言い草にアリッサは食ってかかっていく。しかし雄介がそれを制止してアルドに言い放った。


「あー、わかった。俺は東、こいつらは西、それで行こう」

「な!? アンタまで何を!?」

「ユースケ! そんなの……」

「いいから」


 珍しく真面目な表情で雄介は二人をたしなめた。思わず黙り込んでしまったが、やがて観念したようにソフィアが口を開く。


「はあ……わかったよ。それじゃ後でね」

「おう。それじゃな」

「話がまとまったようなので移動を開始します。私についてきてください」


 アルドはそう言って歩き出し、冒険者達はそれに続いた。そして歩きながらアリッサはソフィアに顔を近づけ、小声で話しかける。


「ちょっと、これで良いわけ?」

「……正直アルドって人が何考えてるかはわからない。でもユースケにはきっと何か考えがあるはずだよ」

「……ふーん……」


 アリッサは意味有り気な笑みを浮かべながらソフィアから顔を離した。ソフィアはそれを見てアリッサに問う。


「な、なにさ?」

「いやー? べっつにー?」


 しかしアリッサはそれをはぐらかした。ソフィアはそんなアリッサにジト目を向けながら黙り込む。


 そしてそんな二人のやり取りを見ていた人物がいる。前方のアルドは人知れず口元を歪めた。






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