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アンテイムド・モンキーズ  作者: jonathan
北の国『カイド』
28/59

メテオ・エクスプロージョン

 超装甲アルティメット・ユースケリオン。なぜこんなものが爆誕してしまったのか、それはアリッサがギャビンに向けて跳び蹴りを放った時まで遡る。

 

 飛び出していったアリッサを見てクレイグが慌てて雄介に声をかけてきた。


「ユースケ! だめだ! あのお嬢ちゃんじゃ勝てない!」

「ええ? でもなぁ……ぶっちゃけアリッサはこの中じゃ一番強いし、あいつが勝てなかったらどうしようもないぜ」


 「今の状態ではな」と内心で付け加え、腕を組みながら自らの切り札を使おうか雄介は迷う。しかしそこでクレイグがとある提案をしてきた。


「オレの力を貸してやるよ!」

「お?」


 その言葉に雄介は反応する。精霊の力、確かにとびきりのパワーアップが見込めそうだ。何より面白そうだと感じた雄介は深く考えずに乗った。


「おし! 来い!」

「よっしゃ!」


 クレイグが雄介の体に向かって飛び込んでいく。そして二人の体が合わさるようにスっと重なった。その瞬間、体中を巡る血液が熱を帯びたように雄介の体は熱くなる。


(おお、こりゃすげえ!!)

(だろ?)


 現在クレイグと雄介は意識を共有している状態であり、雄介の脳内にはクレイグの声も響いている。二人はそのまま会話を始めた。


(お前自身には戦う力はねえのか?)

(うんにゃ、オレも本気出しゃそこそこ強いぜ? でもな……)


 クレイグはもったいぶるように言葉を溜め、答えた。


(融合してパワーアップってのは、ロマンがあるじゃないか)

(それはどこの世界でも変わらねえよな!! わかってるじゃねえか!! んで? この力で一体何ができる?)

(オレは鉱の精霊。鉱石の類は思うままさ! ここは鉱山の近くだろ? あとは自分で考えな!!)


 目の前で仲間が死闘を繰り広げているというのに思わず雄介はにやりとしてしまった。もう一つのロマンを叶える時が来たようだ。

 雄介は精霊の力を解放させた。今雄介には精霊がまるまる宿っている。アリッサの加護とは比べ物にならない力が体に漲った。


(あれしかないでしょう!)


 ボコン、と地面が盛り上がり、鉱石が中から出てくる。鉱山の方からも雄介に向かって次々と飛んで来ていた。必死な仲間達はそれに気づかず、戦い続けている。


 精製されていない原石達は精霊の力によって輝かしい金属に姿を変えていく。形も自由自在だった。

 雄介はそれらを次々にその身に纏わせ、装甲を形作っていく。そして完成したのが……。


「超装甲!! アルティメット・ユースケリオン!!」


 これだ。金銀さまざまなカラーの金属を身に纏い、なんと装飾で宝石の様な物まであしらわれている。そのメカメカしいボディーに雄介は大満足だ。


「おし、行くぜ!!」


 やられてしまった仲間達の敵を討つべく、雄介はギャビン目がけて突進していく。その力は凄まじいもので、最初の一歩で離れていた距離を一気に詰めてしまった。


「オラァ!」

「グ、ガアア!!」


 精霊の力で強化された雄介の装甲はギャビンと激突しても傷一つ付かない。今までどんな攻撃を仕掛けてもダメージがなかったギャビンが体当たり一つで転がされていく。


「剣をこの手に……!」


 雄介がそう言うとその手に金属が集まり、剣を生成した。別に無言でもできたはずなのだが、雄介はセリフを決めて悦に入っていた。完全に力に溺れている。


「ふはははは!! 俺様は無敵だぁ!!!」


 完全に悪役だ。フラグを立てまくりながら雄介はギャビンに襲い掛かっていく。それを見てギャビンは立ち上がり、避けようとするも雄介の方が一歩早い。


「ガアアアアア!!!」


 間一髪で真っ二つにされるのは免れたギャビンだったが、左腕を肩から切り落とされる。即席の剣だというのに相当な切れ味だ。紫色の血飛沫が上がる。

 ギャビンは苦しみながらも残された右腕で雄介に反撃する。その一撃はガン、という鈍い音を立てるも雄介の装甲に傷一つ付ける事ができない。


「効かぬわぁ!!」


 なんだかテンションの上昇と共に口調がおかしくなってきた雄介は、お返しに右拳をギャビンの胴へとねじ込む。吹き飛ばされていくギャビンを見据え、雄介はトドメを刺しにかかった。


「これで最後だ……」


 地中から、鉱山の方からおびただしい数の鉱石が雄介の周囲に集まる。その一つ一つが不思議な力を帯びているように赤く発光していた。


「『メテオ・エクスプロージョン』!」


 訳すると流星爆発だ。正直深い意味は無かった。雄介の中の子ども心、もとい中二病がエクスプロージョンだ。

 赤く光る鉱石が一斉にギャビンに襲い掛かる。その光景はまるで流星の如くとても綺麗なものだった。


「グゲアアアアアアア!!!」


 ギャビンは断末魔を上げ、押し潰されていく。紫の血飛沫が飛び散るその光景を見て雄介は一言発した。


「チッ、汚ねえ花火だ」


 やりたかった事をやり、言いたかったセリフを言った雄介は大満足していた。ギャビンの体はある程度押し潰されると、そのまま灰になった。

 それを確認してから雄介は装甲を解き、クレイグと分離する。


「いやー楽しかった!!」

「オレもだ! 久しぶりにワクワクしたぜ! ユースケお前良いセンスしてるぜ!」


 クレイグと言葉を交わし、雄介は倒れている仲間の下へ向かった。


「アリッサは……早く治療しねえとな。ソフィアもか……ゴンちゃんはまだ無事そうだ」


 唯一無事そうなゴンザレスの体を揺さぶる。するとゴンザレスは目を覚まし、慌てたように飛び起きた。


「はっ!? ギャビンはどこじゃ!!」

「俺とクレイグでぶっ倒した」

 

 ゴンザレスは周りを見回す。ギャビンの姿が見当たらない事を確認すると、雄介の顔を見ながら驚きの表情を浮かべる。


「信じられん……あんな化け物、一体どうやって倒したんじゃ?」

「『メテオ・エクスプロージョン』だ。それより二人を治療しないと!」


 ゴンザレスは正直ピンと来ていなかったが、倒れているアリッサとソフィアを見てそれどころではないと判断し、二人を風の魔法で浮かせた。


「このまま急ぎで街まで戻るぞ、ユースケ!」

「待て! それならこっちの方が早い! クレイグ!」

「あいよ!」


 再びクレイグと同化し、雄介は二人を担ぎ上げ猛スピードで街まで走った。そして街の診療所まで辿り着いた雄介は、二人を診てもらった。

 そしてそれからまもなく、置き去りにしていたゴンザレスが追いついてきた。


「ユースケ、二人はどうじゃ?」

「今治療中だ。まあ大丈夫だろうってよ」


 回復魔法の使い手は少ない。街に一人いれば良い方で、残念ながらここにはいなかった。そのためオーソドックスに薬などでの治療となる。

 待っている間二人が先程の流れについて会話していると、奥から診療所の人間が雄介の事を呼びに来た。ゴンザレスは咄嗟に雄介のポケットに隠れる。


「サルトビさん。お二人が目を覚ましましたのでこちらへどうぞ」

「あ、はい」


 雄介は奥の部屋に行くと、二人は体や額に包帯を巻き、ベッドの上に寝ていた。雄介の姿を確認するとソフィアは上半身を起こし、雄介に尋ねた。


「ユースケ、あいつは……?」

「『メテオ・エクスプロージョン』だ」

「え!? なにそれ!?」


 もう説明が面倒になった雄介はただ技名のみで押し通す気でいた。一体何回その技を押すつもりなのだろうか。訳がわからないソフィアは戸惑っている。

 そんなソフィアを横目に、先程からおとなしいアリッサに目をやる。


「……なんかムスっとしてんなお前」

「……別に……」


 ったく、これが舞台あいさつだったら大問題だぜと思いながら雄介は二人に言葉をかける。


「今日はここに泊まれ。二人とも動くのしんどいだろ?」

「いや、大丈夫だよ! 僕はもう、いっ」

 

 その言葉にソフィアが反応した。ベッドから下りようと体をよじらせるが、痛みで顔を歪める。


「いいから寝てなって。どうせ今日はもう移動するつもりもないし」

「でも、診療所のベッドを一日借りるって結構値が張るし……その、肩を貸してくれれば宿屋まで行けるから……」


 さりげなくソフィアは雄介に肩を貸してもらおうとするが、雄介はソフィアをベッドまで押し戻した。


「問題ない。ちょっと金作ってくる。」

「え? ちょっと、ユースケ?」


 そう言って雄介は診療所から出て行った。外に出るとゴンザレスがポケットから顔を出して雄介に話しかけてくる。


「一体どうするつもりじゃ?」

「まあ見てろ」


 数十分後、雄介は診療所に戻った。


「よお、ただいま」

「おかえり……ねえユースケ、その袋なに?」


 雄介は重そうな布の袋を肩に担いでいた。ドヤ顔で中身をソフィアに見せつける。


「どうよ! これ!」

「……」


 中には札束や金貨がぎっしりと詰まっていた。それを見たソフィアは絶句する。


「ユースケ」

「お? どうした? 顔色悪いぞ?」

「自首して! 今ならまだ戻れる!!」

「ちくしょう!! やっぱり俺の信頼ってそんなもんか!!」


 もちろん雄介は強盗してきたわけではない。まず鉱山付近に行き、クレイグの力で鉱石を掘り出し、全て精製して金属や宝石に変えた。あとは街のあらゆる店でそれらを売りさばいて回ったという訳だ。

 部屋には診療所の人間も控えていたので耳うちでそれらをソフィアに伝えると、ソフィアは納得したようだった。


「あいつもその力でユースケが倒したって事でいいのかな?」

「ああ、まあな。それにしてもソフィアちょっと顔赤いぞ?」

「これはなんでもない! 気にしないで!」


 大量の資金を手に入れた雄介は受付で二人分の治療料金と宿泊料を払い、ソフィアとアリッサに明日の朝に落ち合う約束を取り付け、診療所を後にした。

 そして脳内でクレイグに話しかける。


(なあクレイグ)

(ん?)

(アリッサが「別に……」以外一言も喋らなかったんだけどさ、やっぱ負けたのが響いてんのかな?)

(加護持ちの人間が他者に負けるってのは滅多にねえからな。あのお嬢ちゃんは特に負けん気が強そうだしよ)


 やっぱりか、と一言呟くと、街の人々の声がふと雄介の耳に入ってきた。


「どうしよう俺行ってみようかな!」

「やめとけって、お前じゃ無駄死にするだけだって」

「ぐ……しかし魔物の大量発生なぁ……」


 雄介は足を止め、声の方を見た。するとそこでは二人組の男が掲示板らしきボードに貼られている一枚の紙を見ながら会話をしていた。

 しばらく眺めていると二人はどこかに移動していったので、近づいてその貼り紙の内容を確かめる。


「東の国『キオ』の『エーノ』の街付近で魔物が謎の大量発生……」


 内容を小声で読み上げていると、スっと分離したクレイグが雄介に話しかけてきた。


「なんか引っかかる事でもあるのか? 確かにあんまり聞かない話だが」

「……ああ、こりゃ多分『スクラン』絡みだな」


 以前ソフィアの騎士団試験の時に立ち入った森でも同じ様な現象が起きていた。ゴンザレスも同じ事を考えたのか、ポケットから顔を出して雄介に話しかける。


「次の行き先、決まったようじゃな」

「ああ」


 雄介はにやりと笑って告げる。


「行こうぜ! 東の国!」


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