超装甲 アルティメット・ユースケリオン
ソフィアはギャビンが動かなくなったのを確認すると、その場にへたり込んだ。雄介達はソフィアの所へと駆け寄る。
「よお、お疲れ」
雄介が声をかけるも、ソフィアの表情は優れない。敵とは言え、人を殺したという事実は重く圧し掛かっていた。
「……気分の良いものじゃないね、やっぱり」
「まあそりゃな。ほら、立てるか?」
雄介はソフィアの手を掴み、立ち上がらせた。そしてゴンザレスが黒焦げになったギャビンを見ながら口を開いた。
「じゃが……倒したは良いものの、また手がかり無しじゃな……」
「あいつと出会ってからここまで俺達ほぼ何も考えないで進めて来たからな……」
結局また悪ノリしてばかりで何も得る事ができなかった。アリッサが男性陣に対して咎める様に言葉をかける。
「アンタらアイツと一緒に行動しててなんで何も聞き出してないのよ! いつもの変なノリで情報引き出しなさいよ! 使えないわねー!」
雄介とゴンザレスはそれを無視した。
「ちょっと!! 何か言いなさいよ!」
さらに無視する。
「ちょ、ちょっと……」
雄介がようやく口を開いた。
「ソフィアの祝勝会だな! まずはそれからだ!」
「賛成じゃ!!」
「ちょっとーー!!!」
あくまで自分達に都合悪い事にはダンマリを決め込むらしい。強引に話を進めてうやむやにしようと、二人は街の方へと歩き出して行く。ソフィアも先程手放した剣を拾い上げ、クスリと笑いながら後に続く。
するとそこで今まで黙り込んでいたクレイグが口を開いた。
「おい! お前ら!!」
「ん? どうしたクレイグ」
血相を変えて叫ぶクレイグに雄介は尋ねた。アリッサも不思議そうにクレイグを見ている。他の二人にはクレイグの声は届いていないため、キョトンとしていた。
「まだ終わってない!」
「あ?」
ズザっという音がして、雄介達は音の出所、黒焦げのギャビンの方を向いた。
「な……!?」
真っ先に反応したのはソフィアだった。他の者は皆、絶句している。なんと黒焦げのギャビンが立ち上がり、ふらふらと雄介達の方へ向かって歩き出していた。
しかもギャビンの黒く煤けていた目が突如輝きを取り戻す。
「赤い瞳、じゃな」
「ああ、こっからが本番か?」
雄介とゴンザレスがその瞳を見るのは三回目だった。それは間違いなく『ノア』の魔法によるものだ。全員警戒心を強め、構えた。
「……あ、ア、ア、ガアアアアアアアア!!!」
ギャビンが雄叫びを上げ、その体を変質させていく。元々盛り上がっていた筋肉はさらに膨れ上がり、下半身からは獣のように毛が生え揃っていく。
口の部分が突き出る様に顔の骨格が変わり、耳が長く伸びる。角と毛が生えた頭、黒く変色したその体はまるで……。
「俺らの世界で言う、ミノタウロスってとこか?」
雄介の世界の伝説上の怪物に近い姿をしていた。放たれる威圧感は先程とは比べ物にならない。
「さすがに全員でかかるか!」
「じゃな!」
「まあアタシ一人でも余裕だけどね!」
「今度こそ……倒す!」
クレイグを除く全員がギャビンに掛かっていく。
「『虚空大爆殺』!」
「「「あ! ちょ!!」」」
しかし一足先に雄介が忍法を発動させた。ミサイルがギャビンを襲うが……。
(やべ、近すぎた)
いかんせん近距離過ぎて爆風で全員吹っ飛ばされてしまった。雄介はゴロゴロと地面を転がった後、顎をはめてから爆心地を見やる。
「いやー相変わらず惚れ惚れする威力だ。どこかの偉い芸術家は言いました。芸術は爆発だ、と」
「やかましいわ! 何してくれとんじゃ!!」
隣を見るとゴンザレスが砂まみれでツッコミを入れてきていた。周りを見るとアリッサとソフィアも転がっており、なんとか無事そうだ。
「おい……」
「おおクレイグ、どうよ俺の忍法!」
ゴンザレスとは逆の方からクレイグが雄介に声をかけた。その表情は依然険しいままだ。
「まだだ……あいつ、傷一つ負ってねえぞ」
「……まじで?」
今のは雄介の忍法の中でもかなりの火力を持つ技だ。これが通用しないとなるとかなりまずい。雄介は焦り、だんだんと晴れていく爆心地を見つめた。
「おいおい……」
「これはまずいのう……」
見ると何事も無かったかの様にギャビンはそこに立っていた。そしてこちらを威嚇するように再び雄叫びを上げる。
「ガアアアアアアア!!!」
そして力を溜め、雄介目がけて突進してきた。その巨体とは裏腹にかなりのスピードだ。
「アタシに任せて!」
すると横からアリッサが飛び出してきて、そのままギャビンに跳び蹴りを繰り出す。爆発的な加速でギャビンに迫り、そのまま顔面に右足を叩き込む。
「ウソ、でしょ!?」
しかしギャビンはよろけもしなかった。そのままアリッサの脚を掴み、乱暴に地面に叩きつける。
「あう……!」
パワーは見た目通りだった。体に走る激痛にアリッサの顔は歪む。それを見てソフィアとゴンザレスはすかさず魔法でギャビンに仕掛ける。
「『カマイタチ』!」
「『ファイアーボール』!」
火球と風の刃がギャビンに襲い掛かるも、ギャビンはそれを避けもしない。まともに二発の魔法を喰らったが、やはり傷一つ無いようだ。
「くそっ!」
それを見てソフィアは切りかかっていく。ゴンザレスもそれを援護するため、魔法を何発も放ち続けた。
「ガアア!!」
「う、ああ!」
ゴンザレスの魔法を全く気にかけず、ギャビンはもう一度アリッサを地面に叩きつけた。アリッサは脚力以外は普通の女の子だ。既に意識は飛んでしまっており、これ以上は危険だ。
「やめろおお!!!」
ソフィアは下段から胴を目がけて剣を振るう。しかしその体に刃が通る事はない。うっとうしそうにギャビンは腕でソフィアを一薙ぎし、吹き飛ばした。
「ぐ、ふ……」
先程のダメージも残っているというのに、さらに重い一撃を加えられたソフィアはその場で動かなくなってしまった。
ギャビンの近くに二人がいて巻き込む恐れがあるので、ゴンザレスも強力な魔法を放つ事を躊躇う。
「く、ユースケ!! 二人を回収……」
ゴンザレスがそう言いかけたところで、ギャビンはアリッサをゴンザレス目がけて投げつけた。
「うがっ!?」
凄まじい速度で飛んできたアリッサにぶつかり、あえなく気を失ってしまう。近接戦は専門外で、ゴンザレスは打たれ弱かった。
そしてこれでこの場で戦えるのは雄介だけになってしまった。先程から何のアクションも無いが、仲間の一大事に一体何をしているというのか。
「よし!! できたぜ!!」
そこには既に雄介の姿は無く、代わりにいたのは……
「超装甲!! アルティメット・ユースケリオン!!」
まるで某機動戦士の様に全身を派手な装甲で覆う変態だった。




