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アンテイムド・モンキーズ  作者: jonathan
北の国『カイド』
25/59

その場のノリって不思議

「ぬ?」


 街をうろついていると突如ゴンザレスがポケットから顔を出した。雄介は難しい顔をしているゴンザレスに理由を尋ねる。


「どうしたゴンちゃん?」

「敵探知に何か引っかかっておる。いきなり現れた事を考えるとテレポートでやって来た可能性が高い」

「っつう事はスクランか?」

「スクランってのはなんだ?」

「……」


 事情を知らないクレイグが雄介に尋ねてくる。雄介は顔をクレイグの方へ向け、一瞬考え込む。


「スクランってのはあれだ。世界中を旅してる美少女マジシャンでな、その手品を見たら幸せになれるんだ」

「そうなのか!! 見に行こうぜ!!」

「なんでそんな突拍子も無い嘘吐いたんじゃ!! どういう反応してるかわからんが精霊をおちょくるな!!」

「そうだったらいいなっていう願望を織り交ぜてみたんだが」


 どうやら雄介はどこまでも真面目に事を進める気がないらしい。他にも軽い冗談でゴンザレスとクレイグを戸惑わせながらも現場に向かう。


「ゴンちゃん! この海坊主みたいなヤツか?」

「多分そうじゃな」

「なんだよいきなりテメェらは!! あぁ? ……テメェ、リストの中にいたな?」


 そこには身長2メートルにも及ぶスキンヘッドの大男がいた。目つきが悪く、いかにも悪役という顔をしている。

 青いズボンに黒いブーツで、上半身は裸だ。

 この男は通信魔法で会話しているのか、何かをブツブツと呟いた後、雄介に声をかけた。


「テメェがサルトビ・ユースケか」

「いかにも! お前はなんだ? 露出狂の変態か? そんなに筋肉見せつけたいのか海坊主よ」


 もう雄介の中であだ名は決まってしまったらしい。いきなり挑発されたスキンヘッドの男はビキビキと血管を浮かび上がらせながらも名乗る。


「なんだそのウミボウズってのは! 俺はスクランの幹部、ギャビン・フィッシャーだ!!」

「あーっと……あんまり大声出さないでくれるか? すげえ注目されてるし」


 今までのケースと違い、今はまだ昼前、しかも道のど真ん中だ。当然周囲の人間はこちらを一様に眺めていた。


「なーに見てんだゴラァァァ!!」


 そう叫んでギャビンは魔法を発動させた。衝撃波が周囲の人間を襲い、次々と吹き飛ばしていく。店のショーウインドウや商品もグチャグチャになり、人々は逃げ惑う。


「おい、てめぇ何してんだよ……」


 雄介はそれを見てドスの効いた声でギャビンに詰め寄る。


「あ? 目障りなザコ共を追い払っただけだが?」


 ギャビンはゲスな笑みを浮かべながら雄介に言葉を返す。


「そんだけ武闘派キャラしてんのに何しょっぱな魔法使ってんだよ!? セオリー違反だろうが!! 拳で地面叩き割れや!!」

「お、おう」

「そうじゃ!! 衝撃波を出すにしても足でドンってやらんかい!!」

「ちくしょう! オレもボケたい! 見えてないのがツライぜ!」


 珍しくゴンザレスまでボケてきた。クレイグも加わりたかったようだが、雄介以外には姿も見えないし声も聞こえないので断念した。

 そしてこれは大変な事になってしまった。ゴンザレスは今日はボケの気分らしい。ツッコミが誰もいない。間違いなくカオスな戦闘になる。


「な、なんだよお前ら!! とにかく! 赤髪の女はどこだ!!」

「赤髪の女が欲しいのか?」

「そうだ!! おとなしく居場所を吐きやがれ!!」


 ギャビンは雄介とゴンザレスに凄んできたが二人は微塵も動揺せず、話し始めた。


「困ったのぉ、さっき別れてしまったぞい」

「よし! 一緒に探すか海坊主!」

「え? あぁ、おう」


 こうしてなぜか雄介達はスクランの幹部と共に行動する事になった。


「おっと忘れてた、コイツを着けないとな」

「お? なんだそれ? ペンダント?」


 ギャビンはポケットからペンダントを取り出した。そして雄介の疑問に答える。


「おお、なんでもこれを着けてると精霊が見えるようになるんだと、テレポートする直前に魔道士に貰ったんだよ」

「まじで!? じゃあそれ着ければクレイグ見えるようになんじゃねえか?」

「おお! さっきから会話に混ざれなくて寂しかったんだ! 早速着けてみてくれ!」


 ギャビンはペンダントを首にかけた。するとクレイグが見えるようになったのか、驚きの声を上げる。


「おお! こんなとこにオヤジがいるじゃねえか!! お前が精霊か?」

「その通り! クレイグってんだ! 男前だろ?」

「ええのぉ! ワシにも貸しとくれ!」


 ワイワイと賑やかに街を練り歩く一行。とても危険な人物には見えないが、先程ギャビンが店などをめちゃくちゃにしていたところを見た人間がいるのか、チラホラとこちらを見て逃げている者もいた。

 

 それにしても警備の人間が来ない。実は何度も通り過ぎているのだが、街の人間の通報の仕方が悪かったため上手く犯人の情報が伝わっていなかった。

 しかも雄介達があまりにもにこやかに話しているのでこの連中は違うと勝手に判断されていた。ちなみにもう充分騒ぎになってしまったのでゴンザレスもポケットから出ている。


「お! アリッサー! ソフィアー!」

「あ、ユース……ん?」

「アンタ達、首尾はど……う……?」


 ついにアリッサを見つけた雄介は二人に駆け寄って行く。二人も雄介を見て声をかけるが、スキンヘッドの大男が一緒にいるのを見て固まった。


「ユースケ、その人、誰?」

「おお、ギャビンだ! アリッサを探してたらしい!」


 恐る恐る声をかけてきたソフィアに雄介は勢い良く返す。


「アタシを……? なんで? ってかアンタ誰?」

「俺か? 俺はスクランの幹部、ギャビン・フィッシャーってんだ!」

「「え!?」」


 スクランの幹部、と聞いてアリッサとソフィアは距離を取った。ギャビンを含めた雄介達四人はそれを見て不思議そうな表情を浮かべる。


「どうした?」

「どうした? じゃないわよ!! なんでアンタら敵と一緒にいるのよ!!」


 アリッサの言葉を聞いて雄介とゴンザレスは顔を見合わせる。そして慌てたようにアリッサとソフィアの側に立ち位置を変えた。クレイグもなんとなく移動していた。


「そうじゃん!! なんで俺達一緒にアリッサ探してたんだ?」

「くそ! まんまとはめられたわい! ああ見えてなかなか頭がキレるようじゃな!」

「なんか知らんがオレが成敗してくれるわ!」


 変なテンションに囚われていた三人はようやく正気に戻った。女性陣が白い目で見ているが三人は気にしない。するとそこでギャビンが声を上げた。


「俺もなんだか流されちまったな、目的なんだっけか? ああ、そうだ! 赤髪の女とついでに精霊を捕まえて来いって言われてたんだ!」

「仲間はそう簡単には渡さないぜ!」

「まあさっき探すの手伝ってしまったがのぉ」


 アリッサとソフィアはその光景を見て揃って「何なんだろうこの茶番は」と思っていた。


「行くぜ! サルトビ・ユースケ!」

「きやがれ! 海坊主!」

「待って!」


 割って入って来たのはソフィアだった。二人は動きを止め、ソフィアの方を見る。


「どうしたよソフィア?」

「ユースケ、僕にやらせて」


 ソフィアは自分に戦わせてほしいと言う。こういう時やたら察しの良い雄介はその意図に気づいた。


「ああ……ソフィア戦闘であんまり活躍した事ないもんね……」

「「確かに」」

「人の気にしてる事をズバっと言わないでくれ!! 二人も納得しない!!」


 ゴンザレスとアリッサも雄介の言葉には同感だったようで深く頷いた。ソフィアは若干涙目だ。


「いいよ! 今日で汚名挽回してやる!!」

「なんか知らないがオメエからか? いいぜ! 来いよ!」

「なあソフィア……」


 雄介は躊躇いがちに口を開いた。


「なに? 止めても無駄だよ!」

「いや、そのな……」


 雄介はゴンザレスとアリッサの方を見る。二人ともこちらを見て頷いていた。雄介はソフィアの今後のためにも指摘する事にした。


「汚名挽回じゃとんでもない事になっちまうぜ? 汚名返上にしとけ、あと周りに人いっぱいいるから移動しない?」


 周りにはいつの間にか人だかりができていた。ソフィアの発言にくすくすと笑っている者もいる。

 

「うう……うわああぁぁぁ!!!」

「ああっ!! ソフィア!?」


 ソフィアは顔を真っ赤にして走り去ってしまった。


「おい、結局誰が戦うんだ……?」


 ギャビンの言葉は誰の耳にも届かなかった。


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