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アンテイムド・モンキーズ  作者: jonathan
北の国『カイド』
23/59

鉱の街

 鉱の街『ロクシ』


 東にわずかばかり進んだ所に巨大な鉱山があり、市場には鉱石の類が多く流通している。

 その性質上、建造物なども木造の物は見当たらず、ほとんどが鉄筋で成されており、他の街と比べるとどこか機械的な印象を受ける。

 

 雄介達はケイラを彼方まで吹き飛ばした後、ゴンザレスとアリッサが泊まっていた宿屋に向かい、部屋を新たに取った。

 

「さて、それじゃ行こうかソフィア」

「ん? どこに?」

「いや、部屋に」

「え? え?」

「今夜は寝かさないぜ!」


 雄介は親指をグッと立て、いつもの軽いノリで言った。本人としてはジョークのつもりだったのだが、ソフィアは顔を真っ赤にして黙り込んでしまう。


「あれ? ツッコミが来ない……」

「い、行こう! アリッサ!」

「え? あ、うん」


 ソフィアはアリッサの手を引き、行ってしまった。雄介が小首を傾げていると、不審に思ったゴンザレスが話しかけてくる。


「なんかあったのか? お主ら」

「とうとうデレが始まったのかな? しかしきっかけがよくわかんねえな……」


 よく考えてみるもやはり思い当たる節が無い。勘違いだろうかと思いつつ、とりあえず二人は部屋へと向かう事にした。

 結局部屋割りはソフィアとアリッサ、雄介とゴンザレスで二部屋に分かれる形だ。


「ねえアンタさ」

「な、なに?」


 不審に思ったのはゴンザレスだけではなかった。アリッサは部屋に到着した後、ソフィアにゴンザレスと全く同じ疑問を投げかける。


「アイツとなんかあったわけ?」

「え!? なんでもないよ! いやだなぁもう!」


 そう言ってソフィアはごまかす様にアハハと笑う。アリッサはしばらく疑わしげな視線を送っていたが、口を割る事は無いだろうと判断したのかシャワーを浴びるとソフィアに言い残し、浴室へと向かった。

 そしてソフィアは聞こえてくるシャワーの音の中、ある事を思い出していた。


 ――こいつは……俺の女だ!!


 ケイラとの闘いの時に雄介が言い放った一言である。雄介はもうすっかり忘れていたが、ソフィアの脳裏にはこのセリフがこびり付いていた。思い返すたびに、胸が高鳴り体が熱くなる。しかし彼女にはこの感情が何なのかいまいちわからない。


(僕は……)


 ソフィアはベッドの上でゴロゴロと悶える。

 

 そんな事は露知らず、雄介は部屋に着いた後、ベッドの上に体を投げ出し、ゴンザレスに話しかけた。


「はあ……なんかずっとツッコミ入れてた気がする。疲れた……」

「ワシのありがたみがわかったか?」

「ゴンちゃんもたまにボケるじゃん……それにしても受付が二十四時間でよかったな」

「まあ比較的大きい宿屋じゃからの」


 ポツポツと他愛もない話をし、二人は眠りに落ちていく。何の手がかりも無い中、雄介達はこの街で何を得るのか。しかし彼らの中にそんな不安を抱えている者は一人もいなかった。

 

 そして朝が来る。目覚めた雄介は昨日疲れていたため風呂に入っていない事を思い出し、シャワーを浴びに浴室へと向かった。


「さぁて、それではまず湯船にお湯を張りまして……あらあらおじいちゃん、まだお風呂は沸いてませんよ、ってバカ!! 誰だお前!!」

「やたらハイテンションだな……それにオレが見えるのか?」


 そこには白髪の老人がいた。その顔には深くシワが刻み込まれている。服は麻でできた物だろうか、全体的にだぼっとした灰色の上下で、靴は履いていない。口髭は剃られているが、白く長い顎髭が特徴的で、ゴンザレスとは違い頭髪はフサフサである。

 

 そしてその見た目の割に目に力があり、一人称もオレであるところからどこか若々しさを感じさせる。只者ではなさそうだ、と雄介は警戒していた。それとなぜ湯も張っていないのに浴槽に寝そべっているのか疑問にも思っていた。


「見えるのかって……あれか? 幽霊とでも言うのか?」

「幽霊じゃない。オレは……精霊だよ」

「だとしたらとことん俺の期待を裏切ってくれるなこの世界」


 朝、目が覚めて浴室に行くと知らない老人がいて、さらに自分の事を精霊だと言うのだ、にわかには信じがたい。

 雄介はとりあえずその老人をその場に待たせ、ゴンザレスを起こしに戻った。


「んん? 不審者じゃと……?」

「ああ、こっちだ。ほれ」

「……誰もおらんぞ?」


 なんとゴンザレスには見えないらしい。まさかと思い雄介は老人に話しかける。


「おいおい、本当に精霊だってのか? っつうか精霊ってそこら辺にいるもんなのか?」

「少なくともこの街にはオレ一人しかいないぞ。ってかかなり珍しい。どうだ! 参ったか!」


 ガッハッハと笑う老人を見て雄介は溜め息を吐く。そして隣で不思議そうな顔をしているゴンザレスに今の状況を説明した。


「とりあえず今ここに精霊だって言う爺さんがいてだな……っていうか妖精なのになんで見えないんだよゴンちゃん」

「妖精と精霊は基本的に全く別物じゃからな……というか本当にいるのか? 今となっては伝説上の存在じゃぞ? お主の頭がおかしくなったという可能性は?」

「最近疲れてるからな……もう一回寝てこようかな……」


 そんなすごい存在がこんな所にいるはずがない。しかもこんな爺さんのはずがない、と雄介は二度寝をしにベッドの方まで戻ろうとした。しかしそれを見て慌てて老人が雄介を引き止める。


「待て待て!! オレはちゃんとここにいるぞ!! お前の見間違いじゃないから話を聞け!!」

「……何だよ話って」

「いやー、誰かと話すの久しぶりでよ。まず自己紹介だな! 俺は鉱(あらがね)の精霊、クレイグだ!」


 元気なジジイだ、と雄介は思いながらも話を聞く事にした。実はこういうタイプは嫌いではなかった。


「お前も気になってるだろうから、まずなんでオレがここにいるか教えてやろう」

「やたら上から目線だな……まあいいや、なんでだ?」

「どうもこの辺からオレと同じ匂いを感じてな。気になったんでふらっと来てみた」

「精霊と同じ……? アリッサの加護と関係があんじゃねえかな」

「心当たりあんのか?」

「多分それ俺の仲間だ」


 雄介がそう言うとクレイグは浴槽から立ち上がり、勢い良く雄介に詰め寄った。


「本当か!? どこにいる!!」

「隣の部屋だ」

「よし!!」


 それを聞いたクレイグはなんと壁をすり抜け、その場からいなくなってしまった。雄介が驚いていると、隣の部屋からキャー、という悲鳴と、何かが壁に叩きつけられた様な大きい物音が聞こえてきた。


「なんじゃ?」

「嫌な予感が……行ってみよう」


 雄介とゴンザレスは隣のソフィアとアリッサの部屋へと向かった。そしてそこでとある光景を目にする。


「あ! アンタ達! ちょうど良いわ! 不審者よ! いきなりそこの壁から出てきたの!」

「二人とも……アリッサがさっきから変なんだ。何もない所を蹴り出したり、いきなり一人で喋りだしたり……」


 部屋の壁にクレイグが張り付いていた。おそらくアリッサに蹴り飛ばされたのだろう。


「……あんた壁とかすり抜けられるんじゃないのか?」 

「……咄嗟の事だったから間に合わなかった……」


 無念……と言いながらクレイグは崩れ落ちていった。


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