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アンテイムド・モンキーズ  作者: jonathan
北の国『カイド』
17/59

真夜中のテンション

 

「とりあえずお疲れ!」

「アンタ……恨むからね……」


 雄介達は野営の支度をしている最中、猛スピードで追ってきたアリッサと合流した。そして今は焚き火を囲いながら雑談をしているところだ。


「アリッサってそういや何歳?」

「アタシは今年で16歳だけど?」


 年下だったのか、と思いつつ雄介はアリッサの胸の方をチラっと見る。そして優しく微笑んだ。


「まあ若者には、未来があるから……」

「どこ見て言ってんのよ!?」

「仲が良いのぉ、お二人さん」

「良くない!」


 ゴンザレスのその言葉にアリッサは噛み付く。すっかりこのキャラが定着しつつあり、雄介はニヤニヤとしていた。そしてこの一連のやり取りを見ていたソフィアの胸に、モヤモヤとした感情がわき上がる。


(まただ……なんなんだろ、この感じ)


 その後もこの様な軽いやり取りが続き、ソフィアの胸からはモヤモヤが消える事はなかった。そして夜は更けていく。明日に備え就寝する一同だったが、ソフィアはなかなか寝付けずにいた。上半身を起こし、眠っている他の三人を見やる。


(眠れない……どうしちゃったんだろ、僕)


 すると雄介がパチリと目を開けた。どうやらこの男も眠れなかったらしい。


「お? ソフィアも寝てなかったのか」

「うん。ユースケも起きてたんだね」


 そんな言葉を交わした後、二人の間に沈黙が訪れる。ソフィアはなんだか雄介の事を意識してしまい、上手く会話ができない。

 雄介も何か考え事をしているのか、真剣な表情で黙りこくっている。


「ソフィア」

「え!? な、なに?」


 いきなり雄介から声をかけられ、思わず声が裏返ってしまったソフィア。しかし雄介はそんな事は気にせず、言葉を続けた。


「どっか行こう!」

「……ん?」

「今の俺は元気が有り余っている。このままじゃ眠れない! ソフィアも眠れないんだろ?」

「え? いや、そうだけど……」


 突拍子のない雄介の発言にソフィアは戸惑う。しかしそれでも雄介は気にしない。


「朝までに戻ってくればいいんだ! 燃え上がる俺のコスモは誰にも止められない!」

「いや、ちょ!」


 雄介はソフィアの腕を引っ張り、立ち上がらせる。そしてコダッテの街で購入した長細いタイプの風船を膨らませ始めた。


「よし! これでどこまでも行けるぜ!」

「いやユースケ、ちょっと待っ……!」


 雄介はソフィアの制止を振り切って風船の口を結び、『めるへにっく・ばるーん』を展開した。巨大化した風船の上に跨り、片腕でソフィアを無理やり抱き寄せそのまま浮上する。


「まだ見ぬ世界が俺を待っている! 俺達の旅はこれからだ!」


 そしてそんな打ち切られた漫画の様なセリフを高らかに叫び、雄介は飛び出していく。


「ヒャッハー!! あの村の米(ヨネ)を奪えー!!」

「ヨネ!?」


 終始ハイテンションな雄介に、最初は戸惑っていたソフィアだったが……。


「ユースケ! あっちに湖があるよ!」

「なぜ突っ込むのかって? そこに湖があるからさ!!」

「行っちゃえ行っちゃえー!」


 だんだんとソフィアもおかしくなってきている。先程までのモヤモヤは嘘の様に消えてしまっていた。元々活発でノリの良いソフィアはこういう事が嫌いではなかったのだ。

 雄介があまりに暴走するからツッコミに回っていたに過ぎない。


「ソフィアー!」

「なにー?」


 雄介はソフィアの方を向き、ニッと笑いかける。


「スッキリしたか?」

「……え?」


 雄介の言葉にソフィアはキョトンとしている。雄介は返答を待たずにそのまま話し続けた。


「今日ずっと渋い顔してたからさ! これは盛り上げ隊長の出番かと思って!」


 ソフィアは雄介の言葉を聞き驚いた。なんと今回の奇行は自分を元気付けるためだったのだ。普段はおかしな事ばかりしているが、意外とこういうところは敏感な男だった。


(顔には出してないつもりだったのに……気づいてくれてたんだ……)


 モヤモヤは消えたものの、ソフィアはなぜか途端に胸が締め付けられるような感覚に陥った。しかし先程までのものとは何か違い、とても心地が良い。


「おいおい何ニヤついてんだよ?」

「えっ!? そんな事ないよ!」

「ワクワクか? ワクワクだな? よし! 行ける所まで行ってしまおう!」

「おー!!」


 その後もさんざんはしゃぎ回った二人。山、森、湖と様々な所を巡り、そのテンションは衰える事はない。

 

 そして夜が明けた。


「明けない夜は無いってね! いやーソフィアも元気出たみたいだし! 大成功!」

「ねえユースケ」

「いやあ朝日が眩しい! 清々しい朝だ。ここから一日が始まるんだ」

「ユースケ!」

「……」


 案の定というか何というか、この男は本当に懲りない男である。


「ここどこ……?」

「だだっ広い平原だな……空虚だ……まるで……」

「まるで?」

「あの子俺に気があるんじゃない? と思ってた女の子に実は彼氏がいると知った、あの夏の様に……」


 迷っていた。いろんな意味で。

 


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