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アンテイムド・モンキーズ  作者: jonathan
北の国『カイド』
16/59

ツンデレーション

 アリッサはジャックに完全勝利した後、後ろを振り返り雄介達に胸を張って声をかけた。


「どう? これがアタシの実力……っていない!?」


 しかし雄介達はどこかに消えてしまっていた。意味がわからずにあたふたしていると、こちらに向かって大勢の人間が走ってくる。


「げっ! あれは……」


 アリッサはそれを見て逃げようとするも、時既に遅し。その連中はアリッサを取り囲み、厳しい言い方でアリッサに言った。


「すごい物音がすると思って来てみれば……またお前か! アリッサ!」

「ちょ……ちょっと待って! これには事情が!」

「事情は詰め所で聞く! 来い!」

「そ、そんなー!!」


 この男達はこの街の警備隊の人間であった。この物言いからしてアリッサはよくお世話になっているようである。

 それもそのはず、赤い閃光という二つ名は街のチンピラをぶちのめしているうちにチンピラ達から恐れられ、付けられたものだ。

 一見良い事をしている様にも思えるが、アリッサはいきなり襲い掛かって行くので問答無用で捕まっていた。

 

 まあ一般人には決して手は上げないので警備隊の人間からすると手の掛かる娘、という認識になっている。

 ちなみに雄介達はこうなる事が予測できたので、一足先に宿屋の方まで戻っていた。


 そして次の日の朝、雄介達は荷物を持ち、再び孤児院を訪れていた。


「あら、これはこれは。ユースケさん達ではありませんか。アリッサに何か御用ですか?」

「あ、はい実はそうなんです」


 テレサが入り口まで出迎えてくれた後、三人はアリッサの部屋まで案内された。昨日は意識してなかったが、この孤児院の建物はかなり古い。

 しかし木造で趣があり、雄介は嫌いではなかった。


「アリッサ。ユースケさん達がいらしてるわよ」


 コンコン、とテレサが部屋のドアをノックすると、中から険しい表情のアリッサが出てきた。


「……よっ!」

「よっ! じゃないわよ!!」


 やっぱり昨晩置いて逃げた事を怒っているらしい。聞けば一晩中こってり絞られて開放されたのは明け方だったそうな。しかし雄介は気にしない。


「まあ気にすんな! そういう事もあるさ! それより昨日の事をちょっと話したいんだが」

「アンタ……! ……まあいいわ。場所を移しましょう」


 そう言ってアリッサは昨日話をしていた部屋へと雄介達を案内した。雄介は本日の進行役をゴンザレスに任せ、話を始める。


「それじゃ早速じゃが……まずお主の加護について聞きたい。力の内容、それから自分に力があると気づいた時期は?」

「内容ってほどのものじゃないけど、アタシは脚力が異常に突出してるの。蹴りしか使わないのはそのせい。自分が他の人と違うって気づいたのは……」


 そこまで言ってアリッサは少し言い淀んだが、そのまま言葉を続けた。


「五歳の時。ただ、気づいたって感じじゃないの。その時急に力が目覚めたって感じかな。それまでは瞳の色も紅くなかったし」

「ふむ。ワシもあまり詳しくないが、加護とはそういうものなのか。それは何かきっかけが?」

「……」


 ゴンザレスがそう聞くと、アリッサは少し俯き黙ってしまった。


「まあ言いたくない事を無理に聞くつもりは無い。少し話を変えよう。恐らく昨日のあそこはスクランの本拠地ではない」

「どういう事?」


 ゴンザレスの発言にソフィアが疑問をぶつけた。ゴンザレスは説明を始める。


「スクランは最初ワシらが思っていたよりも大きな組織のようじゃ。森での蜘蛛の魔物も恐らくスクランが絡んでおるじゃろうし、やる事のスケールが大きい」

「まあそんな組織の本拠地にしては質素すぎたよなぁあれは。アリッサはジャックと前々から接触してたんだろ? 何か知ってるか?」

「いつも突っぱねてばかりだったから何も。……それに一応裏の組織だし、この街を調べても大した情報は残ってないと思う」


 雄介達は考え込む。アリッサが何かスクランについて情報を持っているかもと思い聞きに来たのだが、これで手がかりが何も無くなってしまった。

 加護の件だってもしかしたらジャックが独断で求めていただけで、組織全体で動いているわけではないかも知れない。

 本拠地がここでない以上、この街での情報収集も大した結果は望めない。


「クソッ、あの金髪野郎。あちこちにフェイク織り交ぜやがって。確かな情報がほとんどねえ」

「人間の理想郷を創るって辺りすら怪しいのお」

「じゃあ……これからどうしようか」


 振り出しに戻ってしまった三人。しばし悩んだが雄介の切り替えは早い。


「俺、美味い肉が食いたいんだ。肉料理が有名な街に行こう」

「お主は欲望に忠実じゃのお」

「スクランの事はどうするの?」

「旅してるうちになんか手がかりも手に入るだろ。それになにより旅は楽しまなきゃならん!」


 そう言って雄介は立ち上がった。アリッサから情報を聞き出せなかった以上、ここに留まっていても仕方がない。


「んじゃあありがとなアリッサ。俺達もう行くわ」

「……ねえ」

「ん?」


 立ち去ろうとする雄介達に、アリッサは声をかけた。


「……多分スクランの連中はこれからもアタシを狙い続けるわよね?」

「んー……組織ぐるみでお前の加護を狙ってるとしたら、もう居場所もバレてるだろうし、多分な」


 アリッサは雄介のその言葉を聞き、神妙な面持ちで考え込んだ。雄介達はそれを見つめる。


「……決めた! アタシも旅に出る! それでスクランを壊滅させてやるんだから!」

「そっか! んじゃな!」


 雄介はあっさり立ち去ろうとするが……。


「ちょっと!? 待ちなさいよ!」


 アリッサに引き止められる。雄介は面倒くさそうに振り返り口を開いた。


「……なにか御用で?」

「なんかいろいろあるでしょうが! 理由を聞くとか、孤児院はどうするんだとか!」

「だって関係ないし」


 その雄介の言葉にアリッサも立ち上がり、ツカツカと雄介に歩み寄る。ソフィアが「ちょ、近い!」と言っていたが二人の耳には入らない。

 そして聞いてもいないのにアリッサが勝手に喋りだした。


「アタシ、今年で孤児院を出ていく事になってたの! いつまでも自分を狙っている組織がいるなんて気持ちの良いものじゃないし、ちょうどいい機会じゃない?」

「は、はぁ」


 至近距離でそんな一人語りされても、雄介は困惑した。しかしアリッサは気にせずに話を続ける。


「それに敵がアタシの力を狙ってるなら、アタシがここにいる事によって孤児院の皆を危険な目に合わせちゃうかもしれないし」

「んーまあそれ以外は至って普通の孤児院だしな」

「そう。だ……だから、ね……」


 何やらアリッサがもじもじし出した。うわぁ、これはあれだ。あれが来る、と雄介は顔を嫌そうに歪める。


「も、目的も同じみたいだし? ア、アタシが、アンタ達の旅に同行してあげてもいいわよ?」


 出たよ。わかりやすいツンデレだ。というかそもそもツンデレって本来こういうものじゃないんじゃなかったか? と雄介は予想通りの展開に嫌気が差した。しかも別に壊滅させる事が目的ではない。

 アリッサはそっぽを向きながらもチラチラとこっちを見ている。その時、ソフィアが声を上げた。


「待って。僕達は別に三人でも十分やっていけるから大丈夫」


 その言葉にアリッサが噛み付いた。キッとソフィアを睨みつけている。


「はあ? アンタには聞いてないし。引っ込んでなさい。おめおめと捕まってたくせに」

「な!? あれは不意を突かれただけだ!」


 女同士の争いが始まってしまった。胃が痛くなるからやめてくれよと思い、雄介はゴンザレスに目を合わせる。ゴンザレスも同じ様な事を考えていたようで、二人とも大きく溜め息を吐く。


「ユースケとか言ったかしら? アンタはどう思うのよ! アタシの力が必要よね!」

「そんな事ないよね! ユースケ!」


 二人が話題を雄介に振ってきた。雄介はその問いを受け、アリッサの胸をちらっと見る。


「ツンデレと貧乳はお断りです」

「ひ、ひん!? な、な……そ、それならコイツだって!」

「僕はサラシを巻いているだけだよ」


 アリッサはわなわなと震え出した。ソフィアは勝ち誇った表情で胸を張っている。さすが隠れ巨乳だ、余裕がある。


「……支度してくるから待ってなさいよバカー!!」


 泣きそうになりながら走り去ってしまったアリッサ。雄介はそれを見てゴンザレスとソフィアに言う。


「さ、早く行こうぜ。食料たっぷり買い込んで行かないとな!」

「ブレないのぉお主は」

「行こう行こう!」


 アリッサを待つ事なく孤児院を出る三人。街で買い物をしながら旅の支度を整えていると、アリッサがものすごい勢いでこちらに走って来た。


「……もっと早く嗅ぎつけて来ると思ったけど意外と遅かったな」

「孤児院の皆とお別れとか、仕事辞めてきたりとかいろいろしてたのよ! なんで先に行っちゃうの!?」

「待つなんて一言も言ってないし」


 さすが脚力特化だ。スタミナ消費も少ないのかアリッサは息一つ切らしてなかった。

 ソフィアは雄介の袖を引き、コソコソと話しかける。


「ねえ、本当に連れてくの?」

「多分断っても勝手に付いて来るしな。そんなに嫌か?」


 そう言われてソフィアは気づいた。出会いこそあれだったものの、別にそこまで拒む理由は無い。なのになぜかモヤモヤして受け入れられなかった。


「まあ、別にいいけど……」


 理由もわからないのに拒み続けるなどというワガママはソフィアにはできない。結局そんな事を言ってしまった。


「ちょっと! 何コソコソ話してんのよ!」

「とりあえず次どの街向かおうかゴンちゃん」


 そう話しかけるとゴンザレスはポケットからひょいと頭を出す。


「ここから東に二日ほど行った所に『ロクシ』という街があるぞい。まずはそこに向かおうかの」

「よし! それじゃ出発だ!」

「話を聞きなさいよ!!」


 ギャーギャーと騒ぎ続けるアリッサを完全に無視する雄介。というのも一つ雄介の中で考えがあった。


「ゴンちゃん」

「ん?」


 アリッサから少し離れ、何やらボソボソと打ち合わせを始めた二人。今度はソフィアも蚊帳の外だ。


「……本当にやるのか?」

「ああ、このままじゃ締まらねえからな」


 次の瞬間、雄介とゴンザレスの姿が消える。雄介の絶影だ。そしてゴンザレスの風の魔法でソフィアが空を飛ぶ。

 街の人の視線を集めてしまっているが、もう出て行く街なので二人とも気にしていなかった。


「な!? 本当に撒くつもり!? 待ちなさい!」


 空を飛び、街の外に出て行くソフィアを追いかけるアリッサ。しかし少し行った所でソフィアはUターンを始め、再び街へ戻って行った。

 それからは街の外に出てまた入っての繰り返し。街の人の騒ぎがだんだん大きくなってきた。やがて警備隊の男がやってくる。


「何してるんだ! またお前か!」

「え!? いや今回のこれは!」

「騒ぎばっかり起こしやがって! 来い!」

「いや! ちょっと! 待って!」


 引っ張られて行くアリッサ。男が来た瞬間ソフィアの高度を下げたので、男はアリッサが街の中で走り回って騒ぎを起こしているのだと勘違いしていた。

 そしてソフィアをもう一度街の外へ出してから、絶影を解き姿を現す雄介。


「ね、ねえユースケ? あの子、連れて行かれちゃったけど……」

「ああ、そうだな」

「……これに何か意味が?」

「無いな」

「無いの!?」

 

 雄介はソフィアの問いにあっさりとそう返した。ソフィアはここ一番の雄介の意味不明な行動に困惑する。そこにさらに雄介が言葉を続ける。


「ラブコメに突入してしまいそうな空気だったからギャグを挟んでみました」

「何言ってんの!?」


 翌日、しっかりアリッサは追いついて来た。



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