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アンテイムド・モンキーズ  作者: jonathan
北の国『カイド』
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虚空大爆殺

 存在をギャグに変える。雄介の言い放った言葉の意味はもちろん魔物には通じていなかったが、それでも何か伝わるものがあったのだろう。

 魔物は突如現れた雄介を警戒するように、フシュー、フシューと荒く息を吐く。そしてそれを見てゴンザレスは雄介へと問いかける。


「かなり殺気立っているようじゃな……それにあれはかなり強いぞ? 勝算はあるんじゃろうな?」


 雄介は魔物を睨みつけ、黙りこんだ。


「おい? なんで何も言わんのじゃ?」

「……なあゴンちゃん……」


 少し間を置いた後、雄介はゴンザレスに向け、答えた。


「男には決めなきゃならない時がある。 女の子のピンチに颯爽と現れ、敵に向かって一言。決めなきゃ……いけなかったんだ」

「つまり……大見得切ったはいいけど策は無い……と?」


 雄介は静かに頷き、それを見たゴンザレスは深く溜め息を吐いた。


「……いざとなったら、また透明になって、ソフィアを連れて逃げるぞい。他の者には悪いがの」

「そうだな! とりあえずやってみようか!」


 そう言って雄介は魔物へと走り出した。


「な!? おい! 少しは作戦を……ったく!」


 そう言ってゴンザレスも後に続く。魔物は自分の射程圏内に雄介が入ったのを確認すると、再びその脚で薙いできた。

 雄介はそれを前へ滑り込んで回避する。そのまま転回の要領ですかさず立ち上がり、魔物の懐へ入り、胴体へ右拳を叩き込む。


「かたっ!?」


 魔物の皮膚は硬く、特にダメージを受けている様子は無い。ひるんでいるとすぐ他の脚が雄介を襲う。次々に繰り出される攻撃に、雄介は避けるので精一杯だった。


「『ファイアーボール』!」


 そんな声と共に火球が魔物へ向かって飛ぶ。ゴンザレスの放った火の魔法だ。魔物は攻撃の手を止め、脚でその火球を掻き消した。

 その隙に、雄介はもう一発拳を胴体へとお見舞いするも、やはり効いている様子は無い。雄介はすかさず距離を取り、近くの騎士へと駆け寄る。

 魔物がそれを見て雄介に攻撃を仕掛けようとするも、ゴンザレスがそれを阻止する。


「『ファイアーボール』! 『ファイアーボール』!」


 絶え間無く火球を放つ。魔物は鬱陶しそうに、それを次々と防いでいく。雄介は倒れている騎士から剣を借り、構えた。


「おおう……初めての剣だ。結構重いな……感慨深いものが……」

「そんなこと言っとる場合か! はよせい!」

「っと。そうだった!」


 初めて持つ剣に感動していたが、ゴンザレスの声でハッと我に返り、魔物へと切り掛かって行く。魔物は左の脚二本で火球を防ぎ、右の脚で雄介へと襲い掛かる。

 先程の威力を見る限り、これを剣で受け止めることはできない。雄介はなんとそのまま垂直に跳躍し、薙いできた脚に飛び乗った。

 すかさず雄介はゴンザレスにアイコンタクトと共に叫ぶ。


「ゴンちゃん!」

「わかった!」


 雄介はその脚を踏み台に、さらに跳ぶ。ゴンザレスは火球を中断、すかさず雄介を風の魔法で魔物の顔の前まで運んだ。


「おらぁ!!」


 雄介は剣を魔物の右上の眼へと突き刺す。


「グ……ギィィアアアアアアア!!!」


 魔物は初めてダメージを受け、けたたましい叫びを上げた。そして魔物の牙が黒く染まる。それを見たゴンザレスは雄介に呼びかけた。


「ユースケ! 何かくるぞ! 逃げるんじゃ!」


 雄介はそれを聞き、魔物の顔を蹴り飛ばし、その勢いで剣を引き抜く。ゴンザレスは風の魔法で雄介を急いで魔物から離す。

 そこへ魔物の口から黒い液体が飛んで来る。


「くっ……!」


 雄介は体を捻り、間一髪でその液体を避ける。液体は地面に落下すると、ジュワァと音を立て、雑草や土をも溶かした。


「げっ!? なんだよあれ! ってかなんでこんな本格戦闘になってんの!?」

「良かったのお、技抜きでもそこそこ戦えることが証明できて」


 いつの間にか隣にいたゴンザレスが話しかけてくる。すると魔物が雄叫びを上げた。


「ガアァアアアアアアアアア!!!」


 思わず耳を塞ぐ二人。そこへ魔物が突進してくる。


「くそっ!!」

「このまま避けたら他の者に被害が出る! 食い止めるぞ!」


 ゴンザレスは魔物の突進を食い止めるために、ありったけの魔力を込め、魔法を発動させる。


「『トルネード』!!」


 朝ソフィアを起こす時に使用した魔法だが、ゴンザレスの全力のそれは特大の竜巻を発生させた。竜巻は魔物を巻き込み、その巨体を遥か上空へと舞い上げる。


(……! 今ならいける!)


 このチャンスを雄介は見逃さない。先程までは周りを巻き込む恐れがあり使用できなかった、雄介の大技。


「忍法!」


 敵が空にいる今なら使える。


「『虚空大爆殺』!!」


 次の瞬間、雄介の口からミサイルが……そう、ここからはぶち壊しタイムである。


 雄介の口からミサイルが飛び出し、魔物を襲う。そしてそのまま空中で大爆発を起こした。爆風が雄介とゴンザレスを吹き飛ばす。

 二転三転と地面を転がり、空を見上げると、魔物は消し飛んでいた。叫ぶ間も無かったようで、塵がパラパラと降り注いでいるだけだ。


「おお……相変わらずとんでもない技を……ユースケ、ユースケ?」


 雄介は口をアングリと開け、何も喋らない。正確には喋れない。


「あ……ぁ……あが……」


 どうも様子がおかしい。というか口開きすぎじゃね? と、ゴンザレスがあることに気づいた。


「……顎、外れとるんじゃな……」


 忍法『虚空大爆殺』


 十の忍法のうちの一つ。ネーミングの痛々しさ通り、中学二年生の時に考案された。


 口からミサイルが飛び出し、相手を爆殺するという忍法。この男、とうとう忍法に現代兵器を持ち出してきた。もはやなんでもありだが、相変わらず欠点は存在する。

 

 なにせミサイルの爆発だ、近距離で使ったら自分も消し飛んでしまう。それと口からそんな物出したら顎が外れるに決まっている。

 出てきたミサイルはだいぶ小型だったのが幸いだったが、それでも顎は外れ、口の端は裂けて血が出ていた。



 ゴンザレスは雄介の顎を掴み、力任せにガコっとはめた。


「痛った!?」

「最後はやっぱりこうなるんじゃな……宣言通りじゃないか、やったな」


 雄介は顎をさすりながら、不敵に笑う。


「フッフッフ……まあな!」


 そして一拍置き、胸を張る。


「現代兵器tueeeee!!!」






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