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凡人に生まれたけどこの先生き残ると誓う~器用貧乏なものまねスキルを駆使して冒険者学校で教鞭を取ります~  作者: 釈 余白
第二章:冒険者養成学校(前期)編

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16.擬似クエスト

「よし今日は薬草採取クエストを行う!」


 教室での第一声に全員が驚いていた。それはそうだろう。まだ冒険者登録ができない生徒までいるのにクエストなんて言われたのだから。


「先生? クエストってギルドで受けるんじゃないのか? 確かにオレとクマンならやったことあるけど全員は無理じゃね?」


「でもあたしやってみたーい」

「リューもー」


 経験者のキョウセンは当然の反応だろうしパーティーを組んでいたというクマンも同じことだ。低年齢組は座学で教わった知識しかないため現実感はないようだけど、勝手に盛り上がって楽しそうである。


「まあ今行ったクエストはあくまで授業の一環だし、実際にギルドへ行って受託するわけじゃない。でも同じことはできるんだぞ?」


「どんなクエストでしょうか。今まで教わった中だと探し物とかに駆り出されるのでしょうか。薬草採取は難しいですよね?」


「確かに疑問だろうが、実はこの学校の敷地内で薬草が採れるんだ。数は少ないが間違いなく自生しているんだぞ? 今日は全員で薬草を探してもらおうと思うが、対象は回復か解毒ポーションの材料になるものの二種類だからな?」


「なるほど。それを判別して採取してくるのが授業と言うわけですね。私たちがちゃんと習ってきたことを身に着けているかすぐわかりますね!」


「カミーはさすがに物わかりが早いな。それでグループわけだが、学校の敷地に生えている数は少ないから探すのは大変だろう。でも一人一枚は見つけること。まずはキョウセン、クマン、カミー、リットの四人、こちらにはセシロ先生がついてくれる」


「皆さんよろしくお願いしますね。もし判断に迷ったら聞いてください。わたくしはこう見えても薬草の判別には自信があります」


「セシロ先生は長年ギルドで受付をしていたからクエストには詳しいぞ。頼りになるからなんでも質問するように。でもイタズラして困らせたらだめだからな?」


「そんなことしないよ。ハルマン先生じゃあるまいしー」


「こらクマン、俺はそんなことしないぞ?」


「「あはははー」」


「残りのユウ、リュノ、ナーミャは俺が担当するが別の場所へ行くのでついてきてくれ。学校の敷地じゃ全員分採れるか怪しいからな」


 こうして二つの班へとわかれ薬草採取を始めた。低年齢組の行先はすぐそばだが薬草が豊富に生えている場所だ。もちろん事前に採取許可は取ってあるし、先方も快諾してくれている。


「それじゃこのお屋敷で薬草採取といこう。事前に許可は貰っているので始めて構わない。だが一応挨拶をしてくるから先に始めててくれ。間違ってもいきなり食ったりするなよ? 間違えてて毒草だったら困るからな」


「「「はーい」」」


 相変わらずこの三人は素直でいい。ナーミャは十五歳ですでに冒険者登録をしているが、自分に自信が無いこともあって年下の二人ともうまくやっていけている。


 こういう場所での出会いがもしかしたら一生続いたり仲良くなれたりするかもしれないし、俺がその助力になれるならうれしいことだ。



 生徒たちを放った後、俺は屋敷へとあいさつに向かった。


「トラレンファ伯爵、本日はお世話になります。こちらの庭には薬草が豊富に生えていていい教材になります」


「あまり手入れが行き届いてないのがばれてしまうな。庭師を入れるほど興味が無くてな。妻は何とかしろとうるさいのだが、何もしないことで役立つなら言い訳がたつというものだ」


「できれば今後も使わせていただきたいので、手入れはほどほどにしてくださると助かります。もし素人でも良ければ庭木の手入れをさせていただきますが?」


「おお、さすが模倣の使い手だ。庭師のスキルも扱えるのか?」


「最低限にはなりますが、何もしていないよりはマシだと思われます。まあその程度と言うことでご容赦くださいますでしょうか」


「よいよい、必要な道具を教えておいてくれたら執事に銘じて揃えておこう」


「はっ、では次回の実地練習の際にでも整えましょう」


 薬草採取クエスト練習の授業としてトラレンファ家の庭を借りたわけだし、対価として庭の手入れをするくらいなんてことないことだ。


 いつか役に立つ時が来ると信じて、庭師の仕事について行っておいて良かった。十年くらいは経っているが何とかなるだろう。


 その後は楽しそうにはしゃぎながら野草を取ってきては辞典とにらめっこする生徒たち。とくにナーミャにとっては薬草採取で稼げるかどうかが一家の生命線なところがある。


「先生、回復の薬草だとどれくらい集めると一家で生活できるでしょうか。ギルドのクエストだと十枚単位なのですよね?」


「そうだ、十枚で一単位だからクエストを受注してない時も道すがら採取しておくといいんだぞ? 最期は乾燥させてから粉にするから時間が経っていても腐っていなければ問題ないからな。一家で生活するなら一日五十枚を週六日で十分だろう」


「じゃあそれに加えて解毒や虫下しも取っておいたらいいのですね。こちらのお庭にも虫下しの薬草が生えていました」


「おお、良く見つけたな。ここには回復、解毒、虫下し、それに滅多にないが気付けの野草も生えている。一つ持っておくと仲間が気絶したときに役立つぞ」


「なるほど、えっと―― あった! この根っこが気付けになるわけですか。探してみますね、ありがとうございます!」


 ナーミャは本当に勉強熱心で頭が下がる。できれば安全に生活できるよう、薬草採取の専門家にでもなってもらいたい。


 さてほかの二人はどうだろうか。ユウもリュノも基本的にはまじめだが、まだまだ子供と言うこともあって、自由時間を与えると遊びに走ってしまう傾向がある。


 それでも初めての薬草採取、しかもクエスト形式と言うこともあって懸命に探している様子だ。


「おーい、ユウにリュノはなにか見つけられたか? 今のところナーミャしか戻ってきてないぞ?」


「ねえねえ先生、これって回復の薬草に似てるけど違うような気もしますね。ここのギザギザの形が違うというか?」


「ほう、ユウはよく気が付いたな。これは似ているがなんの効用もない野草で役立たずだな。たまに混入してしまって受付で怒られるやつだ」


「先生も怒られたことあるのですか?」


「最初のころはいっぱい怒られたよ。だから一生懸命勉強して覚えたんだ。受付で恥かくのは悔しいからな。でもその失敗が成功につながっている。今はいっぱい失敗していいし、それをちゃんと覚えておけばいい」


「はーい、わたしもナーミャみたいにいっぱい集める!」

「リューも集めるー!」


「よし、それじゃまた行っておいで。解毒の薬草もそこそこ生えてるから注意深く見るんだぞ?」


 そんな風に走り回っている様子を眺めているうちに日が暮れてきた。そろそろ今日は終わりにしよう。


 学校へ戻ると、さすが経験者とギルド受付の組み合わせ、随分な量が集まっていて驚いた。学校の敷地内にはそんなにたくさん生えていないと思っていたがそうでもなかったようだ。


「随分頑張ったな。全部で―― 五十五枚か。これだけあるとちょっとした小遣いになるからみんなでわけるとしようか。ギルドへ持っていくのを三人に任せて実績にしてもいいな」


「正直に言うと私は一番少なかったです。キョウセンとクマンはやはり経験者、藪の奥からでも簡単に見つけてしまうんです」


「何言ってんだよ。リットとカミーだって一人で十枚近く取ったんだぜ? 学校の敷地内なんてそんな生えてないんだ。それなのに初めてでこれはびっくりだぜ」


「そうだな、俺も驚いたよ。まさかこんなに取れるなんてなあ。いいとこ一人五枚も取れたら十分位に思ってたんだ。伯爵さまのお宅で獲ってきた分と合わせたら百枚はあるぞ? それに解毒と気付けが少々ってとこか」


「これ、お金になるんですか? あたしの分もありますか?」


「そうだな、みんなで頑張ったからみんなで均等にわけようか。まずは換金してくるから数日待ってくれ。リットとクマン、それにキョウセンは週末の休みにギルドへ行かれるか? それにナーミャもだな」


「はい! 僕は大丈夫です。でも冒険者じゃありません……」


「そうしたら冒険者登録するからと両親に言っておいてくれ。ダメと言われたら仕方ないが、今後はギルドでクエストを受注する授業もやるから登録くらいは許してほしいところだな」


「そこは問題ないと思います。入学前の説明で聞いていましたから。カミーには申し訳ありませんが一足先に実地体験をしたいですね」


 まだ十四歳で登録できないカミーは悔しがっている。年明けまではまだまだ長い。それでもはるかに遠い低年齢組よりはマシだと励ましておく。


「いやあ今日の授業は充実しました。これもセシロ先生が来てくれたからですね。ありがとうございます」


「そんな―― ハルマン先生の方針が素晴らしいからですよ。ギルドにも貢献できそうだし、この学校がもっと広まるといいですね」


「まあそうなると教える側を増やすのが大変ですけどね。誰でもいいってわけじゃないですから。おっと、でも来月から生徒が増えるんだった。カミーは聞いているかもしれないが親類の男爵家からやってくるらしいな」


「はい、ビクトールは私の一つ上で何度かあったことがあります。物静かで勉強が好きなタイプなので学校にはすぐなじめると思います」


「それじゃみんなも新しい友達が来ることに期待して負けないよう頑張ってくれ。今日はここまで!」


「先生サヨナラー」

「また明日ね」

「本日もありがとうございました!」


 子供たちが引き上げていくのを眺めるのはとてもいい。一日の疲れが吹き飛ぶような気がする。しかもこの後、書類仕事が待っていないと来ているのだ。


「それではわたくしも帰りますね。祖母の家に子供を迎えに行かないといけませんし、夕飯の支度もありますから」


「今日もお疲れ様でした。課外授業で疲れたかもしれませんが、週に一、二度はやる予定なので覚悟しておいてください」


「うふふ、先生ってやりがいはあるけど大変な仕事ですね。でも本当に楽しいです。これからもよろしくお願いしますね」


 とある日の薬草採取擬似クエストはこうして無事成功した。



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