11.楽しい実技
午前が座学となれば当然午後は実技である。ここでもまずは実力別にわけていく。
「初日から元気いっぱいだったキョウセンは一番右の列へ。他に武術体術に自信のある者はいるか?」
「はい、それなりには練習しております。ユウは非力なのでまだまだかと」
「おや? もしかしてカミーとユウは兄妹なのか? 家庭教師が一緒と言っていたよな?」
「えっと申し遅れました。カミーリス=ウルグセンです。あの…… 十四歳なのですが…… 妹はユウリー=ウルグセンで十一歳…… 父上には内緒にしておくよう言われましたがさすがに無理があるかと……」
まったく、トラレンファ伯爵にも困ったものだ。来年王立学園受験のものを生徒にするといっていたのに予定と違うじゃないか。
でもこれで時間的猶予が得られるということなのだから悪くはない。それに正直に申し出る性格だということが知れたのは大収穫である。
「そうか、十五にしては小さいと思っていたんだ。だが問題ない。別にもともと年齢制限をつけるつもりはなかったんだ。きっと思ったよりも貴族の生徒が集まらなかったんだろうな」
「あ、あの僕は十五ですけど大丈夫ですか?」
「リットは来年受験なのか。じゃあ厳しくいかないといけないな。武術はどうなんだ? 剣や槍、体術などなんでもいいはずだ」
「僕は普段剣を練習しています。キョウセンにはかなわなそうですが……」
「そうだろうそうだろう、俺様は冒険者として何度かクエストこなしているからな! ダンジョンでゴブリンを倒したことだってあるんだぜ?」
みなからおおーっと声が上がる。俺にとっては予想の範囲内なので驚きはしなかったが、自分で自慢するくらいにはまだ自信を持っているようだ。
「ではキョウセンにカミー、リットが右列だ。武器を練習しているものは中央列で何もしたことが無いか魔法職希望なら左にしよう」
こうして中央にユウ、クマン、ナーミャが並び、まったくの未経験としてリュノが左となった。
「それでリュノはいくつなんだ? 冒険者登録もまだの歳だろう?」
「あ、えっと…… 本当は十二歳です。ごめんなさい」
「いやいや構わんよ。悪いのはギルマスだからな」
「ですから―― あの…… お父さんがごめんなさい」
「ん? ええっ!? ギルマスのお嬢さんなのか!? あんなクマみたいなオッサンの娘がこんなにかわいらしいとはなあ。おっと失礼。つい、な」
「いいえ、お母さん似なので! 絶対に!」
「そうか、そりゃよかったなあ。じゃあ英才教育ってわけか。なら時間はある、のんびりやって行こうじゃないか」
「はい、ありがとうございます。できれば魔法戦士を目指したいのでいっぱい学びたいです」
器用貧乏の代表でもある魔法戦士は俺のスタイルとも合致する。おかげでピュアレーリアは裁縫スキル持ちなのになかなかハイレベルな魔法剣士になってくれた。
同じように頑張ってくれたなら、ギルマスの娘であるリュノも同じように成長してくれるかもしれない。しかもスキルは剣技と言う準レアなのだから期待してしまう。
もちろんリュノだけでなく初年度の入学生七名は、それぞれ特徴もあってスキルもきちんとしている。一体どんな生徒に育っていくのだろうか。
「よし! それじゃ午後も基礎の基礎から行こう。まず大切なのは体力作りだ。これは走ったり筋力運動をすることで身に着けていくものだ。ただ学校でやるには時間が足りない。だから早く上達したいなら早起きして毎朝一時間走るように」
「えーホントかよ。今でも寝坊して遅刻寸前なのになあ……」
「キョウセンの他に朝苦手な奴はいるか? もし起きられないなら学校終わったら帰りながらそのまま一時間走ってもいいぞ。もちろん朝晩走れば効果は倍だがな」
「そっか、お兄ちゃん、これからは帰りも走ろうね」
「うん、頑張ったらきっと結果が出るだろう。ユウはきっと私より強くなれるさ」
「かもしれないな。こういうのは始めるのが早いほうがいい。特に魔法はな。剣術は基礎体力次第だから何とも言えないし、どうしても男のほうが有利だ。でも武器の選び方次第でひっくり返すことだって可能だぞ?」
「リューも強くなれますか? まだ剣が重くて上手に振れないんです」
「リュノは基礎体力がまったく足りてないからな。だからまずは足運びの練習をしよう。退屈だけど頑張れるかな?」
「はい! リューは頑張ることには自信があるのです」
「よしよし、期待しているよ。みんなもまずは足運びの練習をしよう。基本ができれば戦い方がぐっと楽になるぞ」
「「「はーい」」」
こうして足運びの練習に入ったが、ピュアレーリアの時と違ってダンス練習はやらなかった。さすがに自分から言い出すのは照れ臭かったのだ。
まだ初級授業が必要なリュノ、ユウ、クマン、ナーミャは延々と足運びの訓練だったが、文句も言わず頑張っている。
対してカミー、リット、そしてキョウセンはさすがに飽きてしまうだろう。だから剣を持たせて振りながら足運びの特訓を行った。
「ひい、キツイ。もう腕がパンパンだよ」
「私はまだまだいけますよ。再来年には受験ですから頑張らないと」
「僕は来年だから実質一年に満たないんですよね…… お父様は落ちてもまた受ければいいって言ってるけど、気持ち的にはさすがに何度も受けられませんから」
「その意気だ。丁寧に学んでいけばきっと受かるさ。勉強のほうはどうなんだ? そこそこならいいとは聞いているが、教えられることは限られるからなあ」
「僕は下の学校でも成績優秀でしたし勉強は得意です!」
「私も問題ありません。家庭教師もいますしね」
「俺はさすがに勉強いらないよな?」
「一般教養は身に着けて損無しだけどな。せめて飯をきれいに食えるくらいにはしておかないと、貴族に招かれてもマナーが悪いと追い出されてしまうぞ?」
「そうなのか…… カミー、リット、俺にいろいろ教えてくれよな!」
すでに冒険者としての第一歩を踏み出しているとはいえ、そこはまだ子供と大人の境にいる程度の年齢だ。
ちゃんと子供らしく仲良くできるならそれに越したことは無い。それにまだこのくらいだと剣を振っているだけで十分楽しいだろう。
俺は自分のことを思い出しながら、これからの授業についてアレコレと考えを巡らせるのだった。




