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凡人に生まれたけどこの先生き残ると誓う~器用貧乏なものまねスキルを駆使して冒険者学校で教鞭を取ります~  作者: 釈 余白
第二章:冒険者養成学校(前期)編

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10.最初の最初は基礎の基礎

 授業初日、まずは座学だったことでまず最初の不満が現れた。とは言っても全員ではなく冒険者の一人からだけだ。これは想定よりも少なく入学式の件が役に立ったのだろう。


「ええっと、ハルマン先生? 俺には魔法の素養がねえからこんな授業されても役に立たねんだよ。もっと実践的なのにしてもらえねえか?」


「ふむ、言い分はわかる。だがな? どれほど素養がなくてもゼロってのは珍しいんだ。もし基礎中の基礎である夜目(ナイトサイト)が使えたらどうなる?」


「そりゃくらいダンジョンでも良く見えるってもんだ」


「それじゃ三十点だな。模範解答は―― だれかわかるやついるか?」


「はい! 松明やランタンが無くても困りません」


「ええっとクマンだったな。七十点ってとこか。灯りを持たなくていいということは両手が自由に使えるということだ。すなわち両手剣や盾も使えるだろう?」


「そんなの当たり前のことじゃねえか。だからパーティーを組んでかけてもらうんだろ?」


「でははぐれたら? もしくは理由があって一人になるしかなかったら? いきなり身の危険が跳ね上がるってもんだろ? だから知っていて損はないしできる限り練習して身に着ける価値があるんだ」


 なるほど、と感心したような声が上がる。最初に不満をあげたキョウセンの言う名の戦士職もどうやら納得したようだ。


「こんな風にここでは基礎の基礎の重要性を元に座学を行っていく。もちろん同時に魔法の授業をすることもあるぞ? たとえば今日ならナイトサイトを練習してみようじゃないか」


「俺みたいにまったく魔法が使えないやつはどうするんだ?」


「全然使えないと自覚しているのはキョウセンだけか? ほかにいれば恥かしいなんてことは無いから遠慮なく教えてくれ ――ふむ、クマンも使えないんだな」


 二人の生徒を隣同士の席にして、すでに使えるものを一緒にする。魔法は使えるがナイトサイトを試したことの無いものはその間に座らせた。


「ここでの注意点だが、詠唱だけ行って解放、すなわち実際にかけないこと。日中だとまぶしくて目があけられなくなるからな」


 生徒たちは笑いながら席を移動していく。どうやら素直に聞いてくれるようになって何よりだ。


「カミー、ユウ、リットの三名はすでに使用できるんだな? 家庭教師でもついてるのか?」


「はい、一応貴族なのですでに王立学園入学対策が始まってるのです。ですが僕は魔法が得意ではありません」


「リット以外の二人はどうだ? 夜目くらいならなんてことないと言ってもらえたら頼もしいがな」


「私は自信あります。ユウは同じ家庭教師に教わっていますが、ナイトサイトなら問題ないくらいには扱えるかと」


「上出来だ。ではカミーとユウは詠唱から発動可能までを極力短くすることと、マナのコントロールができるよう、持続時間を極端に短くすることを意識して練習してみよう」


「は、はい、それはこの教材に載っているようにマナ出力を絞ると言うことでしょうか。正直初めて聞いたことなので良くわかりません」


「そうか、家庭教師は教えてくれていないんだな。すべて把握できるまではそう言うこともあると思うが勘弁だ。すぐには覚えられないかもしれないからな」


 魔法は使えるがナイトサイトを使ったことのないナーミャとリュノが、中央の席で不安そうにしている。おそらくはすでに使える二人でも練習があるのだから自分たちはどうなるのかといったところか。


「よし、ではいったん全員で聞いてくれ。魔法は大きく三段階にわけられることはわかるか? 知らなかったならここで覚えてくれ。その三つとは発動、詠唱、解放だ」


「発動と解放の違いは?」


「発動は文字通り使うための最初の段階でマナを魔法へ変換するための段階だ。簡単に言うと体内のマナを指先や手のひらへ集めるなどのことさ」


「そうなんですね。私の知っている方法だと詠唱をしながら意識を集めるようにと教わってきました」


「いきなりできるならそれでもいいがな。物事と言うのはなんでも同時にこなすことは難しい。だが細かくわければ一つ一つは簡単になる。だからまずはマナを指先へ集める練習をしてみよう」


 全員が教えたとおりに指先を見つめはじめる。心配していたよりもずっと素直に聞いてくれてうれしい限りだ。


「大切なのは集中力だからな。指先に鼓動を感じてきたら十分だが、人によっては光って見たり熱を感じたりと様々な状態となる。決して大きな力はいらないから最小限を知れるようにな」


「「「はい!」」」


「では詠唱だ。基本的なのは『我が周辺に光を』かな。すでに教わったものがあればそれでも構わない」


 呪文の詠唱を行うと指先に魔法陣が現れる。もちろん最初に聞いた通り、キョウセンとクマンはできていない。


「できていない二人は気にしなくていい。練習すればできるようになるもんだが、適正によって一年かかったり一日でできたりと様々だからな。この時の魔方陣が小さければ持続時間は短くなる。夜目は解除がないから現在いる場所によって細かく変更できると便利だぞ」


「なるほど、すごい。初めて聞く理論ばかりだ」

「家庭教師はなんで教えてくれないんだろう」


 カミーとユウは何度か調整しながら極小の魔方陣構築に余念がない。リットは数度に一度しかできないが、こんなものは慣れでいくらでも伸びる範疇である。


 ナーミャにリュノはリットよりもさらに成功率が低いがそれでも十に一度位は成功できていた。


 さて問題はキョウセンとクマンだが、確かに素養はかなり低い様子だった。しかしマナがゼロと言う人間はそう相違ないので使える可能性は十分にある。


 この基礎練習をひたすら繰り返し、午前中をもって最初の授業が終わりを告げた。



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