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敵国男装王子に転生したので、虎視眈々と国家転覆企てます  作者: ジュレヌク
第一部仲間編

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第八話 やりすぎには、気を付けろ

 その日は風がなく、中庭は水を打っても直ぐに干上がるほど暑かった。


一口すら水を飲ませてもらえないまま重い荷物を運ばされる幼児組は、既に動けなくなっているものも多数いた。



「お前ら、夕方までに終わらなければ、全員殴るからな!」



 第五王子であるカルネは、丸々と太った体を揺らせながら、これ見よがしに水を飲んでみせる。


 流石のレオも喉が渇き、ゴクリと唾をのんだ。


それを目ざとく見つけたカルネが、空き瓶を投げつける。



ゴン



 眉間に当たり痛みに蹲ったレオに、カルネは更にたっぷりと水の入った瓶を投げようとした。


 しかし、その前にレオを庇おうと一つの影が走り出た。


それは、一番体が小さい末っ子ラットだった。


本当は別の名前があるのだが、ネズミの様に前歯が出ていることで皆にそう呼ばれていた。


彼は、あまりに体力がなくてしょっちゅう気絶する為、良く他の王子からも足蹴にされていた。


 そして、それを時々助けていたのがレオだった。


 だからなのか、今度は自分が助けようとラットは決死の覚悟で飛び出してきたのだ。



「や、止めて下さい」



 勇気を振り絞って出した声は、耳を澄まさないと聞こえない程小さかった。


 それでも、少年は必死に恐怖に耐えて手を広げている。



「なんだ、お前。俺に楯突くのか?」



 カルネは、標的を変えて瓶を投げた。


 この時幼児組の全員が、ラットは死んでしまうと覚悟したはずだ。


 そして、レオは、この小さな少年を助けるために、今まで隠し続けていた魔法を発動しようとしていた。


 バレてしまえば逃げるしかないが、目の前で自分の為に人が死ぬのは見たくなかった。


 しかし、空中をクルクルと舞う瓶を


 ガシャン!


 誰かが剣で叩き落した。



「カルネ、あまり死亡者が多いとお前の指導力も問題視されるぞ。やりすぎには、気を付けろ」



 それは、第三王子のルーゲンだった。


 カウケマール王に似ていない為、不義の子と疑われている彼は、常に出しゃばらないことをモットーとしていたはずだ。


 それがいきなり矢面に出てきたことで、周りの皆も驚いている。

 


「なんだ、お前。偉そうに。どうした?俺がやったとでも告げ口するのか?」


「いや。わざわざ知らせなくても、父上は、今、上から見られている」



 カルネは顔を真っ青にして上を振り返った。


 二階の窓から、カウケマールの顔がチラリと見えた。



「月に一度、父上が見回りに来られるのを忘れていたのはお前だろう。俺は、親切で止めてやったんだぞ」



 今までなら、カウケマールも王子の一人や二人消えても何も言わなかっただろう。


 しかし、つい先日、方針を変えざるを得なくなった。


 現在、戦況が良くなく戦場へ投入する兵が足りていない。


 それは、今まで兵士を使い捨てにしていたツケなのだが、現在は、一人でも多くの王子を戦えるまで育てるよう通達が出ている。


 それを忘れ、今までのように腹立ち紛れに殺そうとしたカルネは、王に逆らったことになる。


 例え名門出身の母が後ろ盾になっているとしても、ただでは済まない。


 彼は、一体どんな罰を受けるのだろうか?



「ち、父上、誤解です。これは、たまたま……」



 カルネは、慌てて立ち上がると、カウケマールがいる二階に向かう為建物の中へと駆け込んでいった。


 許しを請う者を許すような心の広さは持ち合わせていない王が、どんな判断を下すのか見ものであった。


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