第四話 違う!母上、そうじゃない!
急に呼び出されて不満げなノームを前に、レオはしてやったりと満更でもない笑みを浮かべる。
自分だけが厳しい人生に放り出されるなど、なんとも不公平ではないか。
それならば、楽園で悠々自適を楽しんでいた彼を引きずり込んで、前世での恨みを晴らしてやるのも一興だ。
――折角こっちに来たんだから、せいぜい楽しめばいいだろ。
「まぁ、新しいおなご探しも悪くない。しかし、お前、今度は長生きせんでえぇぞ。はよ、死ね」
生まれたばかりの相手に早死にを推奨する精霊は、それでも、レオに加護を与えてくれた。
「病に負けず、怪我を物ともせぬ、不屈の魂が宿りし体、その身に降りかかる災いよ、消えてなくなり成長の糧となれ」
前世でも、この加護のおかげで、レオは病にかかることも怪我で動けなくなることもなかった。
しかし、この加護の難点は、降りかかる災いを糧とするため、ひっきりなしに災いを引き寄せてしまうことだ。
体は丈夫でも、精神的疲労はいかんともしがたい。
――また、それか?もっといい加護は、ないのか?
「今直ぐにでも死にそうなくらい弱いくせに、贅沢を言うな」
確かに、今の状態では、生きる可能性より死ぬ可能性の方が遥かに高い。
それを防ぐには、肉体的強靭さは、あって無駄なことではない。
それに、中身は百八十歳まで生きた強者だ。
多少の精神的ストレスなど、屁でもない。
――とりあえず、母と侍女の安全を一番に考えて欲しい。
「ほぉ、どうした、えらく丸くなったな」
――馬鹿か、あの二人が死んだら、私も死ぬ。今一番の味方だぞ。
乳を与え、オムツを換え、女とバレぬよう必死に知恵を絞ってくれる二人は、既にレオの中では掛け替えのない家族だ。
ただ、布を丸めて作った棒のようなものを股間に忍ばせてくるのは、やり過ぎだと思う。
モコモコしていて、非常に寝にくい。
「しかたあるまい、ソレは、男の象徴だからな」
――赤子のソレなんて、小指レベルだろ!これ、すりこぎ棒くらいあるぞ。
「長くて羨ましいのぉ」
下品な会話は、どこまで続くのか?こんな話を母シャルティが聞いたら、泣いて嘆くことだろう。
「レオ、起きたの?」
何か気配を感じたシャルティが、隣の部屋から声を掛けた。
椅子が動く音がする為、寝室に入ってくるのも時間の問題だ。
――分かっているな、気取られるなよ。
「ワシを誰だと思っている。大精霊ノームは、そんなヘマはせんわ!」
自信満々に言い放ち、姿を消したノームだが、契約を結んでいるレオだけにはその姿ははっきりと見える。
そして、レオの目は捉えていた。
入ってきたシャルティの美しさに目の色を変えるノームを。
そして、相手に見えないことを良いことに、背後から抱き着き匂いを嗅ぎ始めた馬鹿精霊を止める術は、今のレオにはない。
――お前!母上に、なんてことを!
ジタバタと手を動かして怒るレオを見て、お腹が空いたのだと判断した彼女は、豊満な乳を惜しみもなく出そうとする。
――違う!母上、そうじゃない!
服を掴み必死に訴えるレオの思いは伝わることなく、パクリと乳房を含まされてお食事タイムへと突入してしまった。
――お前、覚えていろよ!
神々しいまでの母乳タイムの横で悶絶するエロ精霊を睨みつけてみたものの、当の本人は、レオに向かって親指を立てていた。




