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敵国男装王子に転生したので、虎視眈々と国家転覆企てます  作者: ジュレヌク


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第二十五話 美しいお名前ですね

「最悪だ」


「似合ってると思うけど」



 女装、いや、本来の姿に戻ったというべきか。


 ドレスを着こんだレオが、ソレイユ達の状況を確認する為に王宮の陰に潜んでいる。


 その横に居るのは、こちらは正真正銘女装のプラタだ。


 二人とも、目立たない茶髪のカツラを被っているが、重くて頭がフラフラしている。



「女の人って、コレだけでも大変だな」


「うん、レオ、君も女だからね」


「煩い、黙ってろ」



 この緊張感溢れる状況でも呑気なプラタは、美しく着飾ったレオを見て、愛おしそうに目を細めた。



「断然その姿の方が好きだな」


「お前に好かれたいと思っていない」


「きっと、他の男も、そう言うよ」


「は?寝言も大概にしろ」



 レオは、着慣れないドレスの裾を持ち、足を露にしながら身を屈めて明かりのある方向へと歩いていく。



「もっと上品にできないかな」



 まるで貴婦人のように優雅に歩くプラタは、レオの綺麗な足をチラチラ見ながら顔を赤らめている。


 普通の貴族令嬢なら、破廉恥極まりない行いだからだ。



「それを俺に求めるのか?無理だろ」



 前世でも、女性らしさからは程遠い存在だったレオは、結婚するまでにかなりの時間がかかった。


 夫となった人物は、彼女と真逆の優男だったが、頭が良くて我慢強い真の男だった。


 だからレオは、自分を男好みに変えようなどという考えが全くない。


 自然のまま行動し、それを愛してくれた男が過去に居たからだ。



「いや、いつもの君も好きだけど、今は潜入中だからね。その恰好じゃ、直ぐにバレるよ」


「その時は、ちゃんとやるさ」


「本当かなぁ」



 心配が消えないプラタだが、そろそろソレイユ達がいる迎賓館が近づいてきた。


 ホールでは、貴族たちを集めた舞踏会も行われているらしい。


 優雅なオーケストラの音楽が聞こえてきた。



「夜のお楽しみ要員として呼ばれたなら、心配は要らないんだがな」



 貴賓と雖も、カウケマール王も、自国のご令嬢を差し出す馬鹿はない。


 そんなことをすれば、国内から不満が溢れ出るからだ。


 かといって、自分が戦利品として持ち帰った美女も与えたくはない。


 そうなると、プロを呼ぶのが一番だ。


 なにせ、フローラの名持ち娼婦など、幾ら金を積んでも惜しくないと言われている存在だからだ。


 レオは、警備兵の目を盗み、スルリと舞踏会場の中へと身を滑り込ませた。


 一瞬遅れて、プラタも後に続く。


 迎賓館へと続く道は、このホールを通り越した所にある。


 ここまで来ると、流石のレオも、手に扇を持って顔を半分隠しながら上品に歩く。


 これでも一応、前世で女王様まで上り詰めた女だ。


 人前で取り繕う術は持っている。


 そして、気配を完全に消してスルスルと人込みを抜けていくのは、流石生粋の盗賊というところだろうか。


 あっという間に目的のドアまで来ると後ろを振り返った。



――アイツ、完全にお荷物だろ?



 レオに置いてけぼりを食らったプラタは、立ち止まってキョロキョロと目を動かしている。


 どうやら、レオの事を見失ったようだ。



「ったく……」



 仕方なく戻ろうとしたレオの手を、突然掴んだ者がいた。



「お嬢さん、ここは、関係者以外立ち入り禁止となっている所です」



 声を掛けてきたのは、なんと第三王子のルーゲンだった。


 活躍著しい彼は、今回の警備を担当する名誉に預かっているらしい。



「も、申し訳ございません。その……少々お腹が……」



 いかにもか弱げな声で答えると、ルーゲンは困ったように眉を下げた。


 流石に腹を下しそうな子女を、このまま放って置くことも出来ないのだろう。



「化粧室でしたら、あちらのドアの向こう側となっています」



 ルーゲンが指さしたのは、少し離れた所にある別のドアだった。



「あ、ありがとうございます」



 レオは、扇で顔を隠したまま頭を下げた。


 その姿を見下ろしていたルーゲンが、いきなり、



「貴女のお名前は?」



と聞いてきた。後で、参加者名簿と照合するのかもしれない。


 レオは、口がカラカラに乾くのを感じた。



「パ……パールと申します」



 咄嗟に、前世の名前レオパールから取った偽名だったが、相手は、



「美しいお名前ですね」



と世辞を言った。


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