第二十四話 一応弱みは握っとる。嫌とは言わせん
「え?ソレイユ達が、王宮に連れていかれた?」
町で情報収集していた子供達の知らせを、ノームが慌ててレオに伝えに来た。
「表向きは海外から来た貴賓の相手らしいが、前回お前を匿ったこともある。もしもの事があってはと思い、知らせに来たのじゃ」
ノームは、正直娼館の女達とは接触がない為、放って置いてもいいと感じていた。
下手に関わると、彼が大切にしている子供達やシャルティに被害が及ぶかもしれない。
しかし、あの一見以来、ソレイユは裏口に菓子が沢山入った袋を置いてくれるようになったらしい。
レオを助けるために奔走した孤児達への礼らしいが、なんとも情に厚い女だった。
そうなると、子供達の方が騒ぎ出す。
「ソレイユ姉さんを助けないと!」
「そうだ!俺達で、守らないと!」
ノースやサウスといった年長者までが勢い込み自分達で動き出しそうになった為、ノームは渋々レオに知らせに来たのだ。
「お前がどうにかするから、大人しくしろと言ってある」
「丸投げかよ」
「元は、お前のせいだろう」
「それなら、アイツも一緒だろ!」
前回の一件以来、子供達の隠れ家に居候している銀髪のエルフは、モリモリご飯を食べて完全回復している。
それなら、さっさと出て行って欲しい所だが、居心地が良すぎて去る気配がない。
「まぁ、それは一理ある。アレは、勝手に使っていい」
「お前、プラタの飼い主かよ」
「一応弱みは握っとる。嫌とは言わせん」
前世でも、ノームは仲間の弱みを握っては、良いように働かせていた。
その代わり、自分も窮地には駆け付けるのだからギブアンドテイクとも言える。
だが、有無を言わせず働かされる側からすると、鬱憤も溜まるだろう。
時々闇討ちに会いそうになっては、精霊界に逃げていた。
「ノーム、そういうやり口から、そろそろ卒業したらどうだ?」
「何を言っている。弱みを作る方が悪い」
平然と言ってのけるエロ妖精に、レオはため息をついた。
「はぁ……まぁ、お前の弱みが子供と俺の母親だってことは分かった」
「煩い。早く働け!」
「はいはい」
レオとて、ソレイユは大事な人だ。
ただ甘味を与えてくれる都合の良い人間ではなく、相当の危険を負っても助けたいと思っている。
「先ずは、本当に危険な状態なのかを探らないとな」
娼婦の仕事として請け負っただけならば、レオが口出しすることではない。
「その中に、女将は入っているのか?」
「いいや。売れっ子の名あり娼婦ばかり集められたらしい」
「ん~~、それなら、本当に仕事って感じかもしれないな」
何せ、レオを匿ったとして一番に疑われるのは女将だ。
あの辺では有名な頑固者で、時々場所代を取ろうとやってくる破落戸にも一歩も引かずに戦うタフな女だ。
あの時も、ドアの前に立ちはだかり、追手に立ち向かったのは実質彼女だ。
「兎に角、お前は、様子をうかがって来い」
「はぁ?そんなの、お前が行けばいいだろう?」
「ワシは、子供とシャルティさんを守るので手一杯だ。もしお前の素性がバレたら、全員連れて逃げねばならんでな」
「……俺はどうでもいいのかよ」
ノームは、レオに対しては、いつも塩対応だ。
互いに望んで結んだ契約とはいえ、それを後悔するくらいにはレオに巻き込まれて苦労することが多いからだ。
それに、レオが興味本位で猫の後を追わなければ、プラタと関わることもなかったのだから。
「とりあえず、ネズミにでも探らせてみる」
レオは、使役しているネズミ達に指令を出した。
しかし、どうも反応が良くない。
何故なら、最近活動を活発化させていたネズミに対し、食品を扱う倉庫や厨房に努める面々から苦情が出て、大規模な駆除が行われてしまったからだ。
「マジかよ」
しかも、賓客が滞在する貴賓室など、ありとあらゆる手段を使って害獣駆除が行われている。
絶望したレオに、ノームが差し出したのは、娼婦が良く着る華やかなドレスだった。




