第十八話 君がこの国を亡ぼす片棒くらいは担いであげれると思うけど
「何故、知っている?」
十三年間隠し続けていた秘密を、囲われの身であるプラタがどのように知ったのか、レオには想像もつかなかった。
しかし彼は、不思議そうに首を傾げて、
「そう?意外と察しが悪いんだね。ただ、君と同じ手を使っただけだよ」
と、ほほ笑んだ。
「最初の切っ掛けは、君のお友達を、私のお友達が連れてきてしまったことかな」
プラタは、自分の膝の上に乗る黒猫の頭を撫でた。
どうやら、レオが放ったネズミを、猫が獲物として捕まえてしまったらしい。
「今の時代に、私と同じように動物を操れる者が居るとは思ってなかったから、本当に驚いたよ」
「お前も、魔法が使えるのか?」
「まぁね……」
プラタは、長い髪を耳に掛けた。
その形状に、レオは見覚えがあった。
「……エルフ?」
「あ、やっぱり知っているんだね」
尖った耳は、妖精の中でも特に美しく、神聖の象徴のような存在だ。
長命種としても有名であり、ありとあらゆる魔法を使いこなすと言われている。
だが、それほどの存在なら、こんなところで監禁などされるはずがない。
いぶかしげな視線を向けると、プラタは、スカートの裾を引き上げて足首に付けられた鎖を見せた。
「これ、厄介な代物でね。魔法が効かないんだ」
「魔断鋼か」
レオがレオポールとして生きていた時代、獣人が人間に使役されていた過去がある。
その一番の原因が、この魔法が効かない鎖だった。
物理でも魔法でも断ち切ることが出来ず、一度繋がれれば、鍵がなければ解き放たれることは不可能。
「私も、流石に参ってしまってね。ここに、二十年以上縛られている」
「なるほど。しかし、エルフの血に若返り効果があるなんて、知らなかった」
「そう?結構有名な話名だけどな。本当に、君の知識は、偏っているね」
素直な感想なのだろうが、レオは、馬鹿にされたような気がして眉間にしわを寄せた。
「助けて欲しくて呼んだんだろう?俺は、このまま帰ってもいいんだぞ」
「そう言わないで。ほら、その男の腰にある鍵をこちらに投げてくれるだけでいいんだ」
泡を吹いて倒れている男の腰には、ジャラジャラと沢山の鍵が付いていた。その中に、魔弾鋼で作られた真っ黒な鍵が紛れている。
レオは、渋々鍵を手に取ると、
「ほらよ」
とプラタに投げつけた。
「おっと」
突然投げてよこされた鍵をプラタはキャッチすると、自分の足に付けられた鎖の穴に差し込んだ。
カチャ
回すと、長きにわたり彼を拘束していた鎖を、いとも簡単に取り外すことが出来た。
ここまでお膳立てしてやれば、エルフならばいとも簡単に逃げおおせるだろう。
厄介ごとから早く離れたいレオは、
「じゃぁな。もう、二度と会いたくない」
と言って天井へと飛び上がった。
それを見上げながらプラタは、部屋のドアを閉めて鍵をかけている。
他の監視員達が入ってこれないようにしているのだろう。
そして、長い髪を器用に結い上げると、
「そう言わないで。ここから出るにしても、構造が良く分からないから困っててね。道案内してくれると、嬉しい」
と、身勝手な提案をしてきた。
「俺に、何のメリットもないだろう」
「そう?私は、結構役に立つ人間だよ。そうだね、君がこの国を亡ぼす片棒くらいは担いであげれると思うけど」
レオは、なんでもお見通しといった表情を浮かべるプラタに対して、中指を立てた。
「お前なかの助けなんて、要らない」
「ごめんごめん。そう怒らないで」
そうこう話していると、遠くから鐘がなる音が聞こえた。
どうやら、離宮に何者かが侵入したことに気付かれたようだ。
「ちっ、タイミングが悪過ぎだ」
舌打ちをしたレオは、来た道を戻ろうと姿勢を低くして移動を始める。
「あ、待って!」
プラタは、なんとドレス姿のまま天井へと飛び上がって来た。
無論魔法で身体強化をしているのだろうが、とんでもない身体能力だ。
そして、レオの後ろを、さも当然と言ったように追い駆けてきた。
「付いてくんな」
「言っても無駄って分かっているでしょ?」
「くそっ」
こうして、レオは、得体のしれないプラタと言うエルフを連れて、城外へと逃げるしかなくなっていた。
連休中、一日三話、楽しんでいただけたでしょうか?
明日からは、夜八時に一話投稿予定です。
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