これはブラコンでは?
私は暗闇が嫌いだ。考え方がネガティブになって、悲しいことばかり考えてしまうから。特に最近は不安で不安で仕方がない。お兄ちゃんの前では強がっているけど、いざ明かりを消して眠りにつけと言われると、どうしても寝れない。
私はゆっくりと体勢を変えて、お兄ちゃんに密着した。
「お兄ちゃん……」
お兄ちゃんは起きない。
お兄ちゃんは変わってしまった。最近は明らかに様子がおかしい。
だってお兄ちゃんならこんな時、すぐに起きて無言で私を優しく撫でてくれる。お兄ちゃんなら家に泊まるかと言われたら、危険の危の字も知らない様子で飛びつく。
いや、私はお兄ちゃんと一緒にいる時、不安になったことがない。だから、分からない。でも、それでも私はお兄ちゃんと話したい。
私はお兄ちゃんの体を揺さぶってみたり、猫のように顔を擦り付けてみたりしたけど、全く起きる様子はなかった。結局、諦めて抱きついたまま目を閉じた。
別に悲しくはなかった。
なのに、不思議と涙が流れた。
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「ふわぁ」
私はあくびをして起きあがろうとする。そしてすぐに違和感を感じた。
「こ、これは……妹さんっ!?」
なんと、妹さんに抱きつかれていたみたいだ。妹さんは安心したようにすやすやと寝ている。私は無理やり退かすことはできず、寝顔を眺めることにした。こ、これが普通の妹!
私の妹たちは皆、優しく穏やか。でも、こんな無防備な顔は絶対見せない上、みんな敬語だ。私は起こさない程度に優しく頭を撫でた。
「……えへへ」
すると妹さんはうっすらと口を開き、笑顔を見せた。
か、可愛いですわぁ!
私は思わず、もう一度頭を撫でる。
さらさら。
……もう一度。
さらさらさら。
なんでしょう、この髪。ずっと触っていたくなりますわ。
私はそっと頬を指でつついてみた。
「……んぅ」
妹さんが小さく声を漏らす。
か、可愛い……!
私は周りをちらちらと確認する。どうやらかなり早く起きてしまったようで、みんな寝ている。
そして、もう一度。
「……んぅ」
もう一度。
「……むぅ」
さらにもう一度。
「……むぅぅ」
私は止まらなかった。
頬をつつき、髪を撫で、前髪を整え、さらには可愛らしいほっぺをむにむにと軽く揉んでみる。
な、なんて触り心地……。
「……ふふ」
楽しい。
こんなに無防備な妹さんを見られる機会なんて、そうそうありませんわ。
普段の妹さんなら、こんなことをした瞬間に拳を飛ばしてきますからね。さらには、あのゴミを見るような冷たい目を向けられてしまう……。
ですが、この妹さんは違う。何をしても起きない。
つまり――やりたい放題ですわ!
「ふふふ……」
私は悪い笑みを浮かべた。
そして妹さんの髪を少しだけ弄って、変な形にしてみる。
「…………」
まだ起きない。
ならば、もう少し。
私は髪を弄り、頬をつつき、鼻先を指で軽く押した。
「あ」
妹さんは、鼻を押したタイミングでぱちっと目を開けた。
何も言わない妹さん。ただ私の目をまっすぐ見つめていた。
私の体から汗がダラダラと流れた。
「…………」
妹さんは何も言わない。
ただ、じっと私を見つめている。
「…………」
怖い。
先ほどまでの可愛らしい寝顔はどこへ行ったのでしょう。
私はゆっくりと手を引っ込めた。
「…………おはようございます」
「……お兄ちゃん」
「はい」
「何してたの?」
「……」
妹さんは眉をひそめて、疑うような視線を向けてくる。
ダメですわ。ここは正直に言うしかないですわね。
「……その、寝顔があまりにも可愛らしかったので、つい……」
「つい?」
「……はい」
「ほっぺ、触ってたよね」
「……はい」
「髪も変にしてたよね」
「……はい」
「鼻も押した」
「……はい」
「…………」
妹さんは無言で私を見る。それは言わなくてもわかるよね? というメッセージがこもった目だった。
私は耐えきれず、そっと目を逸らした。
「……ごめんなさい」
「……もう」
妹さんは小さくため息を吐いた。
な、殴られる。
そう思って身構えた、その時。
「眠いんだから、邪魔しないで」
「はい……」
妹さんはそう言って、再び私に抱きついた。
「え?」
そして、そのまま目を閉じる。
「…………」
私は固まった。
怒られなかった?
それどころか、また抱きついてきた?
こ、これは、脈ありでは?
「…………」
私は恐る恐る妹さんの頭に手を伸ばす。
そして、そっと撫でる。
「……」
反応はない。
どうやら本当に寝てしまったらしい。
「…………ふふ」
私は口元を緩める。
やはり、この妹さんは最高ですわ。
そう思った瞬間――
「……次やったら怒るから」
「ひっ」
寝ているはずの妹さんから、低い声が聞こえた。
「……はい」
私は震えながら手を引っ込めた。
その代わりに妹さんに抱きついた腕に、少しだけ力を加えた。
これは許された。




