とりあえずオチが作りたい
「おい、近づいてくるなアホ」
「そこに石鹸があるんだよ」
あれから俺たちは殿下の家に行った。とても汚れていたのでそのまま風呂に入ることになり、しかもこいつと一緒に入ることになったのだ。風呂はかなりでかいから、それだけが救いだ。
この泥棒変態ゴミ野郎と同じお湯なんて、体が腐っちまうぜ。
「石鹸は先にあたしが使う」
「は? 冗談よせよ。俺に決まってるし」
「なに、またやるのか?」
「おう、もちろーー」
いや待て。これ以上殿下からのイメージを下げてはもうお終いだ。むかつくが仕方ない。ここは俺が大人な対応をしてやろう。
「いや、わかった」
「最初からそうしとけ」
「はいはい……」
俺は渋々と石鹸を差し出すと、女はそれを奪うように取り、身体を洗い始める。
たく、こいつは……あれ? 俺今、女と一緒に風呂入ってね?
俺は慎重に目線を少しずつ横にずらしていく。あと少し、あと少しで見える!
と、思ったら夏の大三角形は泡で綺麗に隠れ、胸が割とでかいくらいしかわからなかった。
「おい、お前なんか視線がキモイ」
「は、は? 別にみてねーし」
俺は慌てて視線を反対側にずらした。
「ふん」
それから俺たちは特に話すこともなく、湯に浸かりバラバラのタイミングで外に出た。
いや、異世界にも風呂の文化があるとは衝撃的だなぁ。
「ふー」
「お、おお……エレノア」
なんか前よりすごく距離を感じるんだけど?
いや、明らかにやばい奴判定されてるなこれ。
「で、殿下……」
「まあ、もうさっきの女は部屋にいるから、事情を聞かせてもらうぞ」
そんなこんなで、俺は殿下の部屋に行くことになった。
部屋は高級感はあるものの、ゴージャスな感じではなく、比較的落ち着いていた感じだ。
そんな部屋にある大きなベッドで、女は自分のものかのようにゴロゴロとくつろいでいた。
「ま、まあもういいや……」
殿下は全てを諦めた顔をしていた。
そして椅子に座ると、私に視線を向けてきた。
「何があったんだ?」
「えっとぉ、なんかこの女の方が突然服を脱がそうと襲ってきてぇ、私怖くてぇ、思わず叫んだり正当防衛したりしてしまったんですぅ」
俺は、俺が思うぶりっ子像を完璧に再現した口調と表情で、殿下の同情を買う作戦に出る。なんだかんだで、男はぶりっ子に優しいもんだ。
「なんだと……それは本当なのか?」
殿下は気にせずベッドで寝転がる女に視線を向けると、少し真面目な声で問いかけた。そのまま、そのままだ。こいつが全部悪いんだ。
「うっせぇ。こいつも蹴ってきたりしてきたし」
「まあ、先に手を出したのが君なら、それはいけないことだ」
「先に暴力を振るったのはあっち!」
女は体を起こすと、俺を指差してそんなふうに言ってきた。
「いや、あれは正当防衛だろーー」
「わかったわかった。今回の件、お前らはどうしたいんだ?」
殿下は喧嘩が起きそうになるたび、諌めるように割って入ってくる。まあ、俺は許してやってもいいが、あいつはどうせガミガミ言ってくるんだろう。
「俺は別にどうでもいい。こいつも別にいいなら、それでいいだろ」
「……あたしも別にいいぞ」
あれ? めっちゃあっさりと終わった?
俺は驚いて思わず、女に聞いてしまう。
「待て待て、終わりか?」
「ああ、代わりに良いものも手に入ったし」
女はウヘヘと気持ちの悪い笑顔を浮かべた。こいつ、絶対なんか盗んだな。
まあ、王族なんていくら盗まれても金なんて有り余ったるだろうし、いいか。
ほんと、あっさり終わったな。
「じゃあ、これで終わりだな」
「終わり」
女はやけに上機嫌で、食い気味で答えてくる。こいつ、相当なもの盗んだな。
「そうか」
俺が怪しむように女を睨んでいると、それを見た殿下は安心したように少し笑った。
に、にしても、殿下はかなり良いやつだな。このゴミ女とは段違いだ。
「ほんと、お前は変わったな。いや、もはや別人のようにしか思えないぞ」
「そ、そうですか?」
勘のいいやつだ。エレノアがどんな人間かもよく知らないからな。真似なんてできやしない。
でも、中身が別人になるなんて考えは、普通の生活をしていれば浮かびもしないはずだ。だから、変わったとバレたりは絶対しないはず。
「前のお前なら、平民と喧嘩なんて絶対しなかっただろうからな。したとしても、人を何人も引き連れてボコボコにするくらいだろう」
殿下は冗談ぽく言うが、まるで冗談には聞こえない。
エレノア、聞けば聞くほどクズである。でも、優しい面もあるっぽいんだよなぁ。
つまり、ツンツンしたりデレデレしたりする女ということだな。
俺はそれを……「ツンデレ」と名付けたッ!!(名言)。




