ハル
ご覧いただきありがとうございます。
ハル視点のお話になります。
それからも庭園での関係は続いた。
鍛練の時間が長くなって会える時間は30分ほどになってしまったが、かえってよかった。
二人ともあの日のことは口に出さない。
しかし、あの日からなんとも言えない気まずさがあって、溝ができてしまった気がする。
だが、会うことを辞めることはできなかった。
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私が本当に欲しいのは・・・
欲しいって言ったわけじゃないのに。子供の頃から目を引かれる物があると、
「ハルはあれが好き?」
とお母さんに聞かれてなんでも手に入れることができた。
私に優しいお母さん。
だけど、学年が上がりこの国の実状を勉強するようになると、違和感を感じるようになった。
お食事会の日、デザートに苦手な酸っぱい果物が入っていたから残すと、お母さんが怒る。
料理人を。
「クビ」
お母さんは料理人に対して冷たい眼差しで呟いた。
そしてお母さんは私の方を振り返ると
「ハル、ごめんね。すぐに新しいデザート持ってこさせるからね。」
と優しい眼差しと笑顔で言う。
違和感がある。
だけど、気付かないフリをした。
優しいお母さんのままでいて欲しかった。
そんな時、カイに会った。それからは違和感はどんどん大きくなっていった。
騎士団で怒られた話を聞いた時。私は産まれてから一度も怒られたことはない。
初めてカイと手を繋いだ時。
カイの手は固くて、傷と豆でいっぱいだった。努力してきた手だ。
私の手は傷1つない。
何もしてこなかった手。
手を繋ぐと不釣り合いで、そのことを咎められている気持ちになる。
魔法、剣術、音楽。習うことはあったけど、傷や豆ができるほど練習に励んだことは無い。
第一、傷1つでもつけたことがお母さんに知られたら、先生はクビになるだろう。
だから、当然のように披露宴に出て剣術を披露した時も、明らかに周りの方が芯が通っていて美しかった。しかし、誰よりも劣っている私に向けて拍手喝采。
恥ずかしくて剣術を習うことを辞めた。
わがまま。世間知らず。
お母さんの前でそんなことを言ったら打首だ。
しかし、周りはそう思っているのだろう。
実際その通りだ。
義弟は先生に厳しくていいから教えてくれと剣術に励んでいる。
婚約相手だと紹介された子も笑顔で取り繕ってはいるが悲しそうな瞳をしている。
その子が義弟に
「私、恵まれているのに気づかないで、当然のように生きている人を見たくないのよ。」
と話しているところを聞いてしまった。
義弟はその子を大切そうに慰めていた。
聡明と噂される二人は愛し合っている。
そんな嫌な気分も庭園でカイと話している間は和らいだ。
カイから貰ったブレスレットは今まで貰ったどんな装飾品よりも美しかった。
ずっと一緒にいたい。
そんな時、カイに口付けされた。
本当に夢のようだった。
__________だけど、駄目だろう?
これ以上のわがままは許されない。
私には、美味しい食事も煌びやかな服も宝石も与えられる。
しかし、自由は与えられない。
王族には義務がある。
婚約相手だと紹介されたあの子が頭に浮かぶ。あの子と結婚するんだ。
駄目だ。ましてや男なんて。
世継ぎができない。駄目だ。駄目。駄目___気が付くとカイの頬を叩いていた。
「___ごめん、私は、無理だ。」
読んでいただけて嬉しいです。
ありがとうございます。




