納品
「複数回使える液体型の回復薬ですね」
鑑定も終わってユーリは悩ましい顔でそう言った。
「軽い怪我なら治るようですが、どれだけ回復できるのかは使ってみないとわからないですね」
どれだけも何も回復量は1か2だ。前から少し考えていたが、鑑定で確認できる物がアナライズとは違うのか?
前回作った回復薬には回復量にムラができたが、もしかしたらそれもわからないのかもしれない。
「鑑定では、どれだけの事がわかっているんだ?」
「そうですね。種類と作成者、後はどういう効果があるか、ですよ。だからこの回復薬ですと種類は低級回復薬、作成者はアカ様、付着することで効果が発揮されて軽い切り傷程度なら一度で回復、複数回の使用が可能であることですね」
なるほど。見えているものが全然違う。重さが見えてないから何回使えるかもわからないことになる。
これは説明が必要だな。
「なら、それの使い方も説明が必要だな」
「これはフタを開けて使用するものでは?」
ユーリはトリガーのついた特殊なフタを開けようと力を入れ始めた。フタはネジ式になっているが、引っ張ろうとしている。
「違う。それはフタが壊れるからやめてくれ」
壊そうとしているユーリを止めて使い方の説明を行う。
普通の液体型回復薬にすれば良かった。今さら後悔してきた。面倒だしユーリが使うならいいが使う人は別の街の人だろう。違う使い方でもされて使い物にならないとか言われたらいやだな。
「なるほど。これを押すと中の液体が細かくなって出てくる仕掛けですか。およそ20回使用できて、広い範囲に効果を及ぼすと」
ユーリが手に持っている紙に何かをすごい速さで書いている。
きっとアレを一緒に依頼人に送ってくれるのだろう。
「ありがとうございました。いつも大変早い納品で我々も助かります」
「おや? これはお久しぶりですね」
「ヤトサラルさん、納品ですか?」
あ、例のエルフまできた。
面倒な時に来たものだ。また興味が湧いてきて人の物を勝手に見始めるだろうな。
早速、俺の作った回復薬を手に持っている。




