野営時々コロン
「今日はどこで寝る?」
聞かれて考える。
どうしようか。俺一人なら眠くなるまで歩くという選択肢になるが、仲間がいるとそうもいかない。
一人ならアーティファクト ハンモック を使って適当に寝ることもできるが、戦えない人がいるなかでそれはできない。
となると、アレだ! 見張りを交代でやるという夢が叶う!
仲間が寝ているうちは自分が焚き火の番。うわ! すごいファンタジーじゃないか! これぞ冒険だろう、そうだろう。
夜中まで歩くという選択肢はない。夜が更ける前に寝床を準備して今日食べるものを準備して寝る。これだな。
もう日はだいぶ傾いている。コロンもそろそろと思って声をかけてきたに違いない。
「よし、じゃああの森の近くにしよう」
街道沿いを歩いていたので近くの森を指した。
水場があればいいが、川や湖が近くにない。
「んで、あだし見ての通りなんにもねぇけど寝床の準備はどうする?」
「ああ、アイテムを使うから心配しなくていい」
「アカ様、さすがだなぁ」
このアカ様というのはどうにかならないだろうか。
一応、聞いてみよう。
「様というのはやめないか? アカで構わないが」
「よ、呼び捨てにすんのか? ア、アカ……」
恥ずかしそうに言わないでほしい。俺も恥ずかしくなってくる。
呼び方がどうなるかわからないが、とりあえずいいだろう。
アーティファクト テント
今回はこれを使おう。本当は野営もこの世界式でやりたい思いがあるが、方法も知らなければ道具もない。
「わ!」
コロンが驚く。俺も声に出さなかっただけで驚いてしまった。
アイテムを取り出すと布が丸まったような物だったが、地面に設置した瞬間ボンッと音を立てて三角テントが現れた。
4人ぐらいなら寝られそうだ。一応中を確認すると、4つの寝袋が入ってある。
……これ、仕舞うときどうするんだろうか。あ、インベントリに直接入れればいいか。
「これは、なんだ?」
「寝袋だな。これを開けて、入って、中から閉める。顔だけ出すような感じで寝るものだな」
チャックを開けて閉めて説明する。
多分わかってくれたと思うが、珍しいのか何度も開けて閉めて繰り返している。
「不思議な物を持ってんだなぁ」
「珍しいアイテムを集めるのが趣味なんだ」
アイテムコレクターなんだと説明する。色々な場所を巡ってアイテムを集めているんだと。
森から枝を手に抱えるだけ取ってくる。
石を円状に並べて中央に枝を並べた。
普通に火の魔法を使おうとして思いとどまる。今日は火打ち石にしよう。そのほうが野営してる感が強い。
使ったことはなかったが、火打ち石を取り出してカンカン叩くと火花が飛び散る。
少しだけ削って粉状の柔らかい木くずを置いてそれに火を付ける。
後は火を大きくするだけだ。
ほら! 俺にもできた!
地面に腰を降ろして、少しのあいだ火の加減を調整しながら枝を投入していく。
「本当に、なんでもできるんだなぁ」
いつの間にか兜を外して顔をあらわにしたコロンが隣に座って寄りかかってきた。
これは……どうすればいいのだろうか。そのままでいいのか、肩を抱き寄せてやればいいのか。
間がもたない!
「そうだ、お腹が空いただろう料理にしようそうしよう」
早口になってしまった。
いつもまな板代わりに使っている平らな石を取り出して具材を取り出して料理を始める。
コロンは相変わらず寄りかかってきて作りづらい。
村人からもらった野菜を鍋に投入して火にかけた。
「こんな料理もパパッと作ってしまう。本当にすげぇよ」
「……そうか?」
「そうだよ。それにくらべてあだしはなんもできねぇ。なぁ……本当にこんなあだしを好きか? 好きになれるか?」
腕にピッタリくっついた状態で上目遣いに聞いてくる。
本当に心配なのだろう。耳がペタンと折れて髪に引っ付いている。
ああ、かわいいと思う自分が間違いなくいるのだ。これが好きではなくてなんだというのか。
「好き、だと思う。少なくとも嫌われたくはないよ」
なんてあいまいで遠回りで消極的な言い方なのだろうと我ながら情けない。
全力で好きだと言ってやればいいのだ。
でも、ストレートに気持ちをぶつけるのに慣れてはいない。これで勘弁してくれないだろうか。俺も兜を外して目で勘弁してくれと訴える。
「そっか……なら良かった。本当にあだしを嫌でねぇんだな?」
「嫌ではない。本当にかわいいと思ってるよ」
少しだけスラスラとカタコトではない言葉が出てきた。
勇者とヒロインなんてかっこいい物じゃないけど、こういうのも良いなと、焚き火を見ながら思った。




