鎧、理由
「確かにそれはあるけど大変でねぇか?」
「トラブルが起きないならそれに越したことはない」
俺が鎧を装備している理由を話した。最初はなんとなく顔を見られたくない程度だったが、岩みたいな大男に店で殴りかかられた時に種族による仲の悪さを思い知ったのだ。
トラブルに巻き込まれたくない。ただその思いだけで装備することにしたのだ。
「それで、そっちの鎧は? わざわざ大変だろう?」
聞かれたのなら聞くしかない。
もしかしたら聞いてほしいのかもしれないからこの話になったのかもしれないし。
「これは、村長にもらったものだ」
「村長に? なにかの褒美か?」
「ちがう。あの村にたどり着く前の、あだしの生まれた村であだしは捨てられた。この、顔が原因でよ」
「なに?」
捨てられたとはどういうことだろうか。ちょっと……意味がわからない。この世界の常識がまだ全然身についていない。
「んで、あの村に助けられたときにあだしが顔に傷をつけようとするもんだから、村長が兜をあだしの顔にかぶせたのがきっかけでかぶるようになったんだ」
「それで、顔を隠してるのか」
「アカ様と似たような理由になるかな……ほら、あだしのは、この汚ねぇ顔を人様に見せてトラブルにならねぇためだ。タハハ」
俺は立ち止まって自分の兜を外して地面に落とした。
「ど、どした?」
突然の行動に驚いている。なぜそうしたかったのか、俺にもわからない。
「俺の顔は、汚いし見れたものじゃない」
「んなことねぇ! アカ様の顔は今初めて見たけどかっこいい!」
それはない。ないのだ。太っていて運動してもない贅肉だらけのものだ。ずっと歩いているので汗だってベチャベチャだ。髪も兜で潰れてペシャンコだろう。
俺はそのまま近づいていき、コロンの兜を外した。
「あ! ちょっ」
「俺も、コロンは、かわいい、と、思う」
キマらないな。カタコトは健在だ。
仕方がないだろう。こんなことしたこともなければ言ったこともないのだから。噛まなかっただけマシだと思おう。
「そっか……」
獣のピンクの耳が動いている。かわいい。
それだけ下を向いて言うと兜を奪われてさっさとかぶってしまった。
「でも、そう言ってくれるのはアカ様だけだ。兜はやめねぇ」
「そうか。俺もやめないから不思議なペアの出来上がりだな」
「確かに! アハハ!」
フルプレートアーマー自体見かけないのにそれが2人になって歩いているのだ。2人とも太っているしまさにコピーだ。
目立つだろうなぁ。




