カム村
1日の旅程を経て村へと到着。
俺を降ろした御者は飛び立って行った。やっぱり飛べるのかあれ。
ひどい揺れで眠ることも食べることも許されず、かなりグロッキーな状態だ。
村は意味があるのか分からないスカスカの木の柵が周りに備えてあり、土地はとても小さく見える。
貴族はいないとか言ってたし、納税の義務はなさそうだが、結構ひどい。
家も蹴れば崩れそうな木の建物で街とは比べ物にならないひ弱なものだった。
門も無いので、柵の隙間から体を村の中へと入れる。
小さな畑の世話をしている大きな体の獣人へと後ろから声をかけた。
「村長はどこだろう」
「おお? 村長ならあの家にいるぞぉ」
振り向くと、巨大なネズミの獣人だ。村人を見ると苦しんでいるようにはみえない。食べるには困ってなさそうだな。
教えてもらった家の扉をノックして入る。村長の家も他の家と大差はない。
中もボロボロで床を踏み抜かないかヒヤヒヤしていた。
長く白い毛の獣人が椅子にゆったりと座っている。目や口も白い毛に覆われていてみえない。
あれは前が見えるのだろうか。
半割りの石板を取り出して、テーブルが無いので床に置く。
「グレストルから依頼で来たアカというハンターだ」
「……そうか」
それっきり沈黙が流れた。
いやいや、何をしろと? 依頼は受けた事になったのか?
どうすればいいのかわからず突っ立っていると、後ろの扉が勢いよく開いた。
力まかせに開いたのか扉が壊れて外に倒れる。
「すみませんハンターさん! 村長は最近少し体調が悪くあだしが伺います」
木製の鎧を全身に装備した小柄な女の人だ。
俺以外で始めて全身鎧をみた。しかも木だ。ちゃんと兜も顔が見えない作りになっていて、俺と同じで太っている。
これはなんだ? 俺のコピーかなんかか。
「えええ!?」
頭を下げていた彼女が顔をあげると驚きの声を上げた。多分俺と同じ驚きだろう。
鎧は違えどコピーがそこにいるのだから。
「あ、いえ。失礼しました。依頼を受けてくださったんですよね」
「……そうだな。これが石板だ」
手渡すと向こうも石板を取り出して確認している。
「はい、確かに。あだしは村長代理のコロンっていいます」
「ああ、さっき村長には済ませたが、グレストルから依頼で来たハンターのアカだ。早速で悪いが、状況を教えてもらえるか」
「ええ、もちろん、と言っても見たわけでもなく、話せることは少ないのですが」
そういって話してくれた内容は依頼書と変わりない。
「足あとを見ますか?」という問いには断っておいた。見てもわからんし。
「ちなみに、寝る場所はこっちで用意したほうがいいのだろうか」
「そんなことはありません! どうぞ」
村の中を案内される。
どの家もボロボロだな。防御力0だ。
「ここは人が居なくなってしまった家だで……なので、使ってください」
「……わかった」
だいぶ訛りの強い人だ。時々言い直しながら喋っている。
案内された家も当然ボロボロだ。床を踏み抜かなければいいんだが。
「何かあればあだしまで言ってくれれば何でもしますので。大抵はあそこの家におりますです」
そういって近くの家を指した。
「とりあえず一度眠らせてもらう。昨日1日移動していて眠れていないからな」
「はぁ、そうですか。それは本当にご苦労様でした」
ペコペコ頭を下げている。しかし、なんで鎧を着てるんだろうか。
いや、俺も人のことは言えないな。むしろ俺だけは聞いたらダメなやつだ。
彼女と別れて家の中で寝転ぶと疑問も空腹も忘れてすぐに眠りについた。




