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メルトリゥとゴザー

メルトリゥとゴザーの目の前にキレイに作られた新品の盾が出された。


一つは銀色で前回ゴザーの使っていた盾に似ている形状。


研磨された盾は光を反射して芸術品としての価値もありそうな存在感だ。


盾の中央には半球体の飾りがあしらわれていた。製作者の遊び心だろう。


もう一つは盾としては珍しい形状の盾だ。大きさ自体は同じだが極端にいえば丸みを帯びた逆三角形のような形状でバランスは悪い。


キレイな銀色ではなく、少し暗い銀色で深みが出ている。


特殊効果のある盾で、隣の縦よりも通常時の防御力はおとるが地面に刺すことによりいちじるしく防御力が上昇し、上昇後の防御力は隣の盾をはるかに上回る。


ゴザーは何度も持ち替えて、握りを確認したり実際の戦闘を想定した動きを繰り返している。



「そうね、こっちにしようかしら。敵を刺すことができそうだし、何よりこれでもう一度あいつに挑戦してみたいわ」



最後まで確認していた特殊効果のある盾を背にしたゴザーが鎧の男に告げた。



「それで依頼料はいくらになるだろうか」



メルトリゥがリラックスした顔で話しかける。


金額がいくらでも払える自信が伺えた。


特殊効果の付いた盾だ。ダンジョンから出てきた物を店売りに出したとしても金貨50枚はする。


今回は緊急依頼に近い。何もないところから突然依頼して直ぐに作ってくれというかなり無茶苦茶なものだった。


相場で金貨100枚以上が相当だとメルトリゥは考えていた。



「金貨で7枚だ」


「そんなバカな金額があるか!! 指名して作ってもらったのにいくらなんでも安すぎる! 僕達が緑のクチバシだからって特別扱いしないでくれ!!」



そのあたりの店で適当な鉄の盾を買おうとしても金貨3枚だ。


それはあまりにもひどい金額設定だった。


鎧の男が何を考えているのか読めずにメルトリゥは怒鳴っていた。


以前薬を売っていた時もそうだ。この街では珍しいダンジョン産のような液体式の回復薬を銀貨2枚という低価格で購入していた。


買取屋で売っても元が2倍になって返ってくる異常な安値。



「そうねぇ……あたしの前の盾が金貨25枚で特別に作ってもらったものだから、それ以上かしら」



言い間違えか聞き間違えなのかとゴザーが何も聞こえなかったかのようにそう言った。


以前の盾より安いというのはありえない。鎧の男が口を開くのを2人は待った。



「金貨7枚だ。それ以上は受け取らないしそれ以下もない。嫌ならこの話は無しだ。盾は返してもらう」



有無を言わせない断固とした態度で鎧の男は整理を始めた。


別に緑のクチバシを優遇ゆうぐうしているわけではないのだと。その盾には金貨7枚以上の価値は無いのだと。


あまりにうまい話に何かの詐欺さぎにでもあっているのかとメルトリゥとゴザーが顔を見合わせた。



「本当に、いいんだな」


「構わない」



念を押すようなメルトリゥの声にも間を空けずにしっかりした声でそう話した。


金貨を渡して店を出た2人は盾を見た。



「一応鑑定士にみせるか」


「そうねぇ。鎧さんの事を疑うわけではないけど……」



呪いがあるかもしれないし、壊れかけのハリボテを外装だけととのえたのかもしれない。


それを購入してしまったのだとしたら見る目がなかったと思うしかないのだが、命を預ける装備なので最悪でもどういうものかの確認はしておかなくてはいけないのだ。


キツネにつままれたような不思議な表情をして知り合いの鑑定士がいる場所へと歩き始めた。

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