第11話
事前に注文を済ませていたのか、間もなくして、次々と料理が運ばれてきた。
テーブルいっぱいに並ぶのは、すべて魔物肉を主役にした豪華な肉料理の数々だった。
香ばしく焼き上げられたグリフォンのステーキ、オークのスペアリブ、濃厚なソースで煮込んだワイバーン肉の赤ワイン煮。
肉の焼ける良い匂いが広がり、胃袋を刺激する。
ルクスはフォークを手に取った。
「サーラたちは、魔物肉は食べられるのか?」
魔族の中には、魔物を食べることを忌避する種族も少なくない。
ルクスは一応確認するつもりで聞いた。
「問題ない。俺は出されたものは拒まない。ラヴャーナもそれでいいな?」
「はい。問題ありません。こいつらの食文化など恐るるに足りません」
ラヴャーナが胸を張って言い切ると、サーラが即座に釘を刺した。
「言い方に気をつけろ。余計ないさかいを生むなと父上は言っているのだ」
「……はい。……しかしですね」
ラヴャーナがまだ何か言いたげに口を尖らせたところで、ディローダが口を挟んだ。
「二人はどこで出会ったんだ? 昔から愛し愛されの仲っつってたけどよ。戦争戦争でデートに行く暇すらなかっただろ?」
サーラの顔がルクスへ向けられた。
「これはお前の仲間だ。お前がなんとかしろ」という無言の圧力だ。
ルクスは察した。
「……出会ったのは、戦場だったな? サーラ」
「ああ、そうだ。戦場だ。戦いの中で、分かり合ったんだ。あの時のお前ときたらなぁ……うん。」
当然出会っていないため、サーラの目が若干、泳いだ。
しかしディローダは信じたのか、拳を叩いた。
「おほー! そりゃいい! 言葉よりも拳を交え、剣を交え、命を賭けるからこそ盛り上がるってもんだよなぁ!」
ラヴャーナが怪訝そうに眉を寄せた。
「……お嬢様、戦場に出たことありましたっけ?」
なぜこの兎はこういう時に空気が読めないのか。
ルクスがサーラに向くと、彼女は再び彼に無言の合図を投げていた。
今度は「助けろ」という必死の色が濃い。
ルクスは「また俺?」と思ったが、フォローすることにした。
「確か……父上に黙って……だよな? 『俺が魔王城を出たのがバレると、そっちに人員を割くことになる。だから黙って出てきたのだ』って言ってた気が?」
「そっ、そうだ! おい、勇者よ! ばらされると照れるではないか! 本当はダメなんだからな! 護衛もなく出歩くのは! まったく! そういうことだラヴャーナ!」
「そうだったのですね、お嬢様。……そこまで気を遣っていただけていたとは」
「もう質問はいいだろう? 食事を楽しもうじゃないか! なあ、ラヴャーナ!」
サーラが強引に話題を切り上げたそのタイミングで、給仕が赤ワインと果実水のボトルを運んできた。




