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九話

 「カーラお嬢様ー!ご無事ですか!」


 あ!

 アルミにお花摘みに行ってくるって言っていたんだった!

 

 でも……今はアルミに会うことが少し怖い。アルミのことを疑ってしまいそうで。

 この男の前で弱みなど見せられないのに。

 

 「あなたの使用人……アルミでしたっけ?あなたのことが心配になったんじゃないですか?私はそろそろお暇することにします。いつでも見てますよ。頑張ってください。」


 不愉快な男の笑顔も、口調も、少し慣れてきた。

 引き留めるために、咄嗟に男のほうへ手を伸ばす。


 「あ……私は……。」


 ———どうすればいいのか、なんて聞けない。

 聞いても、信じることなんてできないのだから。


 何も言えない。この男を殺すことすらできないのに。


 だらりと腕を下げた私に、男は意外にも優しい笑みを浮かべて見せた。

 

 「ふふっ、そんなにしょげないでください。……あの使用人は裏切っていませんよ。それだけ言っておきます……普段はこんなに干渉しないのですがね、今回は特別です。主役が臥せっていてはつまらないので、仕方なしです。」


 「……本当に?」


 「えぇ。これは本当ですよ。」


 「そっか……。」


 噓でも本当だと言ってもらえて、皮肉にも私は安心してしまった。


 アルミに会ったら、どんな反応をすればいいのだろう。

 わからないけど———早くアルミに会いたいな。


 「もう大丈夫そうですね。あなたには私を殺すほどの勢いがないと困ります。」

 

 それだけ言い残して、男は暗い森の奥へ去っていった。



♦♦♦♦♦♦


 「カーラお嬢様!ご無事ですか!?」


 「えぇ……。ちょっと、えーと……お腹を壊していたのよ。」


 本当はアルミに噓なんてつきたくないけれど、これ以上は伝えてはいけない。伝えたくない。

 もう、自分だけの問題にはできないけれど。せめて、これ以上は———

 

 「カーラお嬢様……私に隠し事しておりませんか?」

 

 「……なんで?」

 

 「カーラお嬢様の様子を見ていればわかります。目が泳いでいますよ。」


 アルミの残念なものを見るような眼差しが、クリティカルヒット……。


 「カーラお嬢様。前も言いましたが、私はカーラお嬢様のためならなんだってやります。もしもあなたが……鈍器をその手に持ち、血に染めるとしても、私はその血を拭って差し上げます。だから、困ったことがあったら相談してください。あなたが話してもいいと思えるまで、待ちますから。」


 血———アルミの言葉で、あの日が勝手に思い浮かぶ。

 耳をつんざくような悲鳴。血にまみれたテーブルクロス。その上にきれいに並べられた四つの———


 あぁ……。そうだ、私はこんなことを迷ってはいられない。


 あの日から———あの、両親を殺された日から。私は生きているのか死んでいるのかよく分からなかった。心が定まらなくて、どこまで巻き込むか決められなかった。


 でも、もういいのでは?

 すべてを巻き込んででも復讐へと進んでも。

 

 アルミとカロル、使用人たち。そしてお世話になった人たちだけでもこれ以上巻き込まないようにしていたけれど。


 決めた。

 

 「あのね———」


 すべてを話して、使えるものをすべて使ってでも、私は復讐を果たしてみせよう。

 あの男を次こそ苦しめて殺そう。





 そう決めたのに、アルミに話している間、男の浮かべた優し気な笑みが頭から離れなかった。


 

 



読んでくださった方、ありがとうございます!

ようやく、カーラがアルミに話す決心をしました。 ここからどうなるのかな……?

もし少しでも「続きが気になる!」と思っていただけましたら、ブックマークやリアクションをいただけると、とっても励みになります!

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