八話
この男はまるで獣のようだ。
機会をうかがって、いつ牙をむこうか待っているようで……いつだって私はこの男に何もできない。
何か、懐かしく感じてしまって。
両親の仇をとるために、私は殺したい……殺さなきゃいけないのに。
♦♦♦♦♦♦
これだとらちが明かない。
しばらくだんまりを決め込んだが、男も何も反応せずこちらの反応を見るだけだ。
口元をニヤニヤしている男の表情を崩したくて、私は重い口を開いた。
「……気になったことはいくつかあるけれど、まずは一つ目から。」
「はい。どうぞ?」
男の顔全体に笑みが広がった。
「……この手紙を書いた人を、仮に『A』とするわ。最初に、誰が便箋を置いたかについて。ホールに入るには、警備員が常に見張っていたし、結構なリスクが必要よ。見つかったら一瞬で牢屋行き。だから、堂々と入れるような人じゃないと不可能ね。現場保存した後、裏切った警備員がタイルの回収とともに置いたのでしょう。」
……まぁ、私は堂々と入るというよりはアルミに協力してもらって強行突破したんだけどね。
今は、はったりでも口を回さなきゃ。この男が口を滑らせれば万々歳だ。
一気に言い終え、ひとつ息をつく。
「この便箋の文章はあなたの口調とは全く違った。あなたはこんな風に回りくどいやり方はしないでしょう?だから、この手紙はあなたが書いたものではないといえると予想する。」
「ほうほう。なるほど。」
男が軽く頷いた。
「次に二つ目。 あなたがAではないと仮定して進めるわ。便箋には『あなたの復讐劇を楽しみにしています』と書いてあった。Aは、あなたと同じように私の行動を見張っているんじゃない?」
男が少しだけ、目を見開いた。
「……くくっ、はははっ!」
「……何がおかしいの。」
ひとしきり笑った男は、「これは失敬」と言い咳払いをした。
「そうです!すごいですねぇ。」
男は大げさに拍手をした。
「で?私の考えはどうだったの?」
「うーん、八割程度あたっている、といったところですかねぇ。あなたは私のことをよくわかっているようだ!私も、その便箋を木の上から読みましたが、何とも面白い!」
え、どこが?
そんな爆笑するような要素あったかしら。
「ふふっ、頑張ったあなたに敬意を払いましょう。便箋を書いた人は私ではないですが、便箋を置いたのは私です。警備員に扮して、タイルを回収するとともに置かせていただきました。」
「あぁ。あなたも堂々と入れるものね。……でも、あなた便箋のことを生まれて初めて知ったとか言っていなかった?」
「便箋の中身は、という意味ですよ。ただ一つだけですが、ヒントを。あなたにquestion!」
男が気障に言う。
うわぁ……。もったいぶっているわね……。
「うげ……」
「そんなにいやそうにされると私も少々傷つきますが……。Aは、あなたの行動をよくわかっているような書き方をしていましたね。書いた人は、あなたのことをよーく知っている人物と・か♡……でしょうか?」
「私のことを……?」
肯定も否定もせず、男は薄く笑みを浮かべて見せた。
「あなたも本能的にわかっているのでしょうが……理解したくないだけでしょう。見極めるべきヒントは、すぐそばにあるのでは?」
よく知っているような人物……。アルミやカロル、うちの使用人たちのことが頭に浮かび、慌てて消した。
この男のウソかもしれないもの。全てをうのみにしてはいけない。
でも……でも。もし本当だったとしたら?
———私は、だれを信じればいいのだろうか。
読んでくださった方、ありがとうございます!
今回は、カーラがちょっぴり頭を使ってますね。えらい!
Aが誰だか気づいた方、いるかな……?




