七話
「も~!すっごくひやひやしたんですからね!カーラお嬢様!こういう無茶は控えてください!」
「ごめんなさい……。」
アルミがむす~っと頬を膨らませた。
そう、私はあの謎めいた男が出て行ったあと、しばらく呆然としていたが、こっそり入ってきたアルミによって回収されたのだ。
むんずと私をつかんで肩に担ぎ、ホールから離れた人気のないところへ連れてきてもらった。
……のはありがたいのだけど。
「でも……一つだけいいかしら?アルミの私の運び方がなんかこう……。俵を持つような感じだったというか……。」
手をわきわきさせた。
「わ・ざ・とです!少しは反省してください!……私だって屈辱的なことをやらされたんですから……。」
「うっ……反省してるわ。」
アルミは悟りを開いたかのように、遠い目をした。
やっぱり根に持っている。猫耳はやりすぎたわね。今度はこっそりとしよう……じゃなくて、今はそれよりも確認すべきことがある。
「アルミ。少しお花を摘んでくるわ。」
「わかりました。ここには危険な動物の気配もありませんし。でも、あまり遠くには行かれないでくださいね。」
「えぇ。」
微笑んで、少し離れた木の陰へ隠れる。
アルミは気配に敏感だから、少し離れないと見つかっちゃうのよね。
服の内側に隠していたものをそっと取り出す。封筒には入っていない、ただの真っ白な便箋。半分に折りたたまれている便箋を震える手でそっと開く。
それは、カーラ・アリッサー様へという宛名から始まっていた。
♦♦♦♦♦♦
カーラ・アリッサー様へ
いかがお過ごしでしょうか。
あなたのご両親がはるか高みに向かいましたこと、ご愁傷さまでした。あなたの悲しみに寄り添えたらいいのですが、私は何もできないのです。
ただ一つだけ……あなたにヒントを示しましょう。
床へのトリックのことです。
床を見て、あなたはさぞ絶望したことでしょう。何もない、と。
そんなあなたが目線を落としたところに、この便箋を置かせていただきました。
あなたの行動は少し単純なところがありますから。
それは置いておいて、話を戻しますね。
あの床は、私が仕込みました。
あなたのご両親を殺した男の逃げ道を作るために。
どうやって?とあなたは疑問に思うでしょう。
実は、最近あなたの屋敷に入った使用人の中に裏切者がいました。
いた、というよりも私が売却した、の方が正しいですね。
少し駄賃を払えば、あっさりと寝返ってくれましたよ。
あなたの誕生日パーティーの準備の時に、こっそりとタイルを外してもらい、ひっくり返る仕掛けに変えてもらいました。
驚いていますね?きっと。
それとも、あなたは賢いから、うすうすわかっていたのでしょうか。
この手紙から何か得ることがあるといいですね。
それでは、あなたの復讐劇を楽しみにしています。
♦♦♦♦♦♦
無意識に息を止めていたらしい。読み終えて、ゆっくりと息を吐き出した。
便箋は手書きではなく無機質な文字で書かれていた。何度も何度も読み返す。
やはり署名はかかれていなかった。
「どうでした?何か手掛かりが?」
「っ……!?」
木の上から声が聞こえ、反射的に上を向いた。
音もなく優雅に着地したのは、警備服を着た私の両親を殺した男だった。
「お前……!よくまた出てこられたわね……!」
近くにあった石を鷲掴みにして、思い切り投げる。
「おっと。よく手が出るお嬢さんだ。」
男は相変わらず薄気味悪い笑みを浮かべ、ひょうひょうとしている。
「まあまぁ、落ち着いて。私は今日は何もしません。ただの聞き役に徹しますから、頭を整理するために話してみては?」
「それよりも、あなたから話を聞いたほうが早いわ!」
「おやおや……。熱烈ですねぇ。迷える子羊に教えてあげたいところですが、私は守秘義務があるのでしゃべりませんよ。あなたは頭のねじが抜けていないでしょう?」
ねっとりとした喋り方に、身の毛がよだつ。
よく考えろ、と言われているようだ。
「……これはあなたが書いた手紙なの?」
「いいえ?今、生まれて初めて存在を知りました。真実か、はたまた虚像かは、あなたのご判断にお任せしますがね。」
「そう……」
黙り込んだ私に、獣のように目を細めた男が促す。
「さぁ、あなたは何に気づきました?さぁ、言ってごらん?」




